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散歩
しおりを挟む深いところに沈んでいた意識がふっと浮上するのを感じ、ゆっくりと瞼を開く。けれど、すぐに薄目になり、眉間に皺を寄せ、傍から見ると不機嫌そうな表情を浮かべてる。
「まぶし……」
窓から差し込む陽の光が部屋を明るく照らしていた。初めて部屋に来た時よりも、心なしか陽が強い気がした。
二度寝をするほど眠くないので、伸びをしながら、のろのろベッドから降りる。チラッともう一つのベッドで寝ている勇護を見たけど、当分起きそうにない。
うーん、暇だ。部屋にいてもやることないから、外にでも行こうか。よし、そうと決まれば、身支度を整えないと。
必要なのは洗面台、歯ブラシ、歯磨き粉、石鹸、タオルかな。あ、あと洗濯機。大して時間もかからずに創り終わった。
初めてスキルを使った時よりも、圧倒的に早く創り終わったのは慣れもあるだろうけど、細かく想像しなくても出来上がることを知ったからだ。最初に比べるとかなり適当になった。
身支度を終わらせ、使い終わったものは……4泊もするし、このまま出しっぱなしでも問題ないだろう。あとは何かあるかな、と部屋を見渡して、机の上に置きっぱなしのナイフとポーションと、それを身につけるためのベルトを見つけた。
危ない、手ぶらで出かけるところだった。カチャカチャと音を鳴らしつつ、ベルトを身に付けていると「うぅん」とという声が聞こえてきた。黙って外出するより、何か書き置きを置いといたほうがいいだろう。
紙とペンをスキルで出して、机の上に書き置きを置いておく。扉の方に脱いでおいた靴を履いて、部屋から出る。その際に小さな声で「いってきます」と呟く。廊下は部屋と違って日が当たらないからか、部屋よりも涼しかった。
時折ギシッと軋んだ音を出す階段を手すりに触れながら降りていく。朝に来た時とは違って、広い食堂は閑散としていた。
今更だけど、今は何時なんだろう?食堂の中には時計らしきものは置いてなさそうだ。そういえば部屋にもなかったな。この世界に時計が無い可能性も……ん?僕は自分で作ればいいのでは?
まぁ今はいいや。門が通れるうちに外へ出て、薬草採取に行こう。ついでにあのレモンの香りがする果実グリンも見つけ次第採っておきたい。今日はお小遣い稼いで、街をぶらぶらと買い食いするのが目標でいいかな。
昨日頑張ったから、今日くらいだらけていいよね。勇護もいつ起きるかわからないし、あいつは本当に一睡もしてなかったから。
宿に帰る前に屋台で何か買って帰ってもいいかもな。そういえば宿でもご飯出るんだっけ、空間魔法もあるからいっか。そんなことを思いながら、宿から出て、門へ向かった。
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