悪役令嬢の私が聖女だなんて聞いてませんわ!

みや

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「伯爵令嬢エリーシカ!貴様との婚約を破棄する!!」

余裕の笑みを浮かべ高らかに宣言する第3王子ソラの隣には男爵令嬢リーナが悲しい表情をして寄り添っていた。

この度の聖女選定儀式が終わり、発表と社交を合わせた夜会でこのような騒ぎを起こす第3王子に人々は呆れ返った。

第3王子のわがままな性格は上位貴族であれば耳にしていたが、放置していたのはそれもこれも頭が弱く傀儡にしやすいからである。
第3王子の立場からは王位は狙えないが、爵位と領地を得られるのは確実であり、婚約者になれば王家との繋がりができる。

そんな思惑もあり、婚約者であるエリーシカの座を狙う家や令嬢は多かった。

エリーシカは婚約破棄の言葉に心踊ったが、それとこれとは別である。
殿下の行動に頭が痛くなりながらも、事を収めにかかるしかなかった。

「ソラ殿下、そのようなお話は別室で承ります」
「いや、私はここでこの女の悪事を明らかにするのだ」

悪事の言葉に周囲がざわつく
エリーシカにはひそひそと噂を交わす令嬢の声が耳についた

「この女はここにいるリーナに対して、陰湿ないじめをおこなっていたのだ!
そのような女が私の妃になろうなど許さぬ。何か申し開きがあるのならば今ここで聞いてやろう」

リーナは今にも泣き出しそうな表情で俯いたが、口元が笑っているのが見えていた。
エリーシカは眉をひそめ、ソラをみると、その姿にソラは少し怯んだ。

「殿下、私はそのような事はしておりません。それゆえ申し開きもございません」
エリーシカがピシャリと言い放つと、リーナがわっと泣き出した。
「ソラ様、エリーシカ様はいつもあのように私を詰るナジルのです。インクをドレスに掛けられた時も、階段から突き落とされた時も」
「もういい、リーナ。大丈夫だ私がこの女を裁いてやる。辛いことを思い出させてすまない」
「ソラ様」

背を撫でられ支えられているリーナは恐る恐るといったようにエリーシカを見たが、エリーシカはつまらなさそうな顔をしながら、優雅に扇子をあおいでいた。

エリーシカとしては早く別室に移動し、婚約破棄の書類にサインをしてほしいのだが、王子達は騒いでいるだけで話が進まない事にあくびすらでそうだった。

「貴様!リーナがこのように怯えているというのに、その態度はなんだ!」
怒りに顔を真っ赤にしたソラが叫ぶ

エリーシカはピシャリと扇子を閉じると、扇子の先をソラに向けた。
「殿下、私は先程も申したはすです。このようなお話は別室で行いましょうと。そして、やってもいない事に対する申し開きはごさいません。とも」

「そんな!ひどい!」
思わずといった様子でリーナが叫ぶのを扇子を向けることによって黙らせる。
「私は発言を許可しておりません。お黙りなさい」
「貴様っ!私の妃になるリーナに向かって何を言う」
「妃になるとしても現在の婚約者はこの私であり、公爵令嬢の私に向かって許可もなく話しかけるなど言語道断です」
「この私が許しているのだから良いだろうが!」

あまりにも自己中心的な発言にエリーシカは冷ややかな視線を送る。

「それにだな、ここにいるリーナは聖女となるのだぞ!」

聖女の言葉に周囲が大きくざわついた。


******************
長くなったので区切ります

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