3 / 8
3
しおりを挟む
「伯爵令嬢エリーシカ!貴様との婚約を破棄する!!」
余裕の笑みを浮かべ高らかに宣言する第3王子ソラの隣には男爵令嬢リーナが悲しい表情をして寄り添っていた。
この度の聖女選定儀式が終わり、発表と社交を合わせた夜会でこのような騒ぎを起こす第3王子に人々は呆れ返った。
第3王子のわがままな性格は上位貴族であれば耳にしていたが、放置していたのはそれもこれも頭が弱く傀儡にしやすいからである。
第3王子の立場からは王位は狙えないが、爵位と領地を得られるのは確実であり、婚約者になれば王家との繋がりができる。
そんな思惑もあり、婚約者であるエリーシカの座を狙う家や令嬢は多かった。
エリーシカは婚約破棄の言葉に心踊ったが、それとこれとは別である。
殿下の行動に頭が痛くなりながらも、事を収めにかかるしかなかった。
「ソラ殿下、そのようなお話は別室で承ります」
「いや、私はここでこの女の悪事を明らかにするのだ」
悪事の言葉に周囲がざわつく
エリーシカにはひそひそと噂を交わす令嬢の声が耳についた
「この女はここにいるリーナに対して、陰湿ないじめをおこなっていたのだ!
そのような女が私の妃になろうなど許さぬ。何か申し開きがあるのならば今ここで聞いてやろう」
リーナは今にも泣き出しそうな表情で俯いたが、口元が笑っているのが見えていた。
エリーシカは眉をひそめ、ソラをみると、その姿にソラは少し怯んだ。
「殿下、私はそのような事はしておりません。それゆえ申し開きもございません」
エリーシカがピシャリと言い放つと、リーナがわっと泣き出した。
「ソラ様、エリーシカ様はいつもあのように私を詰るのです。インクをドレスに掛けられた時も、階段から突き落とされた時も」
「もういい、リーナ。大丈夫だ私がこの女を裁いてやる。辛いことを思い出させてすまない」
「ソラ様」
背を撫でられ支えられているリーナは恐る恐るといったようにエリーシカを見たが、エリーシカはつまらなさそうな顔をしながら、優雅に扇子をあおいでいた。
エリーシカとしては早く別室に移動し、婚約破棄の書類にサインをしてほしいのだが、王子達は騒いでいるだけで話が進まない事にあくびすらでそうだった。
「貴様!リーナがこのように怯えているというのに、その態度はなんだ!」
怒りに顔を真っ赤にしたソラが叫ぶ
エリーシカはピシャリと扇子を閉じると、扇子の先をソラに向けた。
「殿下、私は先程も申したはすです。このようなお話は別室で行いましょうと。そして、やってもいない事に対する申し開きはごさいません。とも」
「そんな!ひどい!」
思わずといった様子でリーナが叫ぶのを扇子を向けることによって黙らせる。
「私は発言を許可しておりません。お黙りなさい」
「貴様っ!私の妃になるリーナに向かって何を言う」
「妃になるとしても現在の婚約者はこの私であり、公爵令嬢の私に向かって許可もなく話しかけるなど言語道断です」
「この私が許しているのだから良いだろうが!」
あまりにも自己中心的な発言にエリーシカは冷ややかな視線を送る。
「それにだな、ここにいるリーナは聖女となるのだぞ!」
聖女の言葉に周囲が大きくざわついた。
******************
長くなったので区切ります
余裕の笑みを浮かべ高らかに宣言する第3王子ソラの隣には男爵令嬢リーナが悲しい表情をして寄り添っていた。
この度の聖女選定儀式が終わり、発表と社交を合わせた夜会でこのような騒ぎを起こす第3王子に人々は呆れ返った。
第3王子のわがままな性格は上位貴族であれば耳にしていたが、放置していたのはそれもこれも頭が弱く傀儡にしやすいからである。
第3王子の立場からは王位は狙えないが、爵位と領地を得られるのは確実であり、婚約者になれば王家との繋がりができる。
そんな思惑もあり、婚約者であるエリーシカの座を狙う家や令嬢は多かった。
エリーシカは婚約破棄の言葉に心踊ったが、それとこれとは別である。
殿下の行動に頭が痛くなりながらも、事を収めにかかるしかなかった。
「ソラ殿下、そのようなお話は別室で承ります」
「いや、私はここでこの女の悪事を明らかにするのだ」
悪事の言葉に周囲がざわつく
エリーシカにはひそひそと噂を交わす令嬢の声が耳についた
「この女はここにいるリーナに対して、陰湿ないじめをおこなっていたのだ!
そのような女が私の妃になろうなど許さぬ。何か申し開きがあるのならば今ここで聞いてやろう」
リーナは今にも泣き出しそうな表情で俯いたが、口元が笑っているのが見えていた。
エリーシカは眉をひそめ、ソラをみると、その姿にソラは少し怯んだ。
「殿下、私はそのような事はしておりません。それゆえ申し開きもございません」
エリーシカがピシャリと言い放つと、リーナがわっと泣き出した。
「ソラ様、エリーシカ様はいつもあのように私を詰るのです。インクをドレスに掛けられた時も、階段から突き落とされた時も」
「もういい、リーナ。大丈夫だ私がこの女を裁いてやる。辛いことを思い出させてすまない」
「ソラ様」
背を撫でられ支えられているリーナは恐る恐るといったようにエリーシカを見たが、エリーシカはつまらなさそうな顔をしながら、優雅に扇子をあおいでいた。
エリーシカとしては早く別室に移動し、婚約破棄の書類にサインをしてほしいのだが、王子達は騒いでいるだけで話が進まない事にあくびすらでそうだった。
「貴様!リーナがこのように怯えているというのに、その態度はなんだ!」
怒りに顔を真っ赤にしたソラが叫ぶ
エリーシカはピシャリと扇子を閉じると、扇子の先をソラに向けた。
「殿下、私は先程も申したはすです。このようなお話は別室で行いましょうと。そして、やってもいない事に対する申し開きはごさいません。とも」
「そんな!ひどい!」
思わずといった様子でリーナが叫ぶのを扇子を向けることによって黙らせる。
「私は発言を許可しておりません。お黙りなさい」
「貴様っ!私の妃になるリーナに向かって何を言う」
「妃になるとしても現在の婚約者はこの私であり、公爵令嬢の私に向かって許可もなく話しかけるなど言語道断です」
「この私が許しているのだから良いだろうが!」
あまりにも自己中心的な発言にエリーシカは冷ややかな視線を送る。
「それにだな、ここにいるリーナは聖女となるのだぞ!」
聖女の言葉に周囲が大きくざわついた。
******************
長くなったので区切ります
0
あなたにおすすめの小説
あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。
【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します
冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」
結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。
私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。
そうして毎回同じように言われてきた。
逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。
だから今回は。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~
由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。
両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。
そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。
王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。
――彼が愛する女性を連れてくるまでは。
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる