悪役令嬢の私が聖女だなんて聞いてませんわ!

みや

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エリーシカが聖女となってから、国内の食料問題も解決の兆しが見え始めていた。

婚約者であるライアン殿下と共に精力的に地方を視察し祈りを捧げる。
問題がある土地には国王へと報告し、専門家を派遣する。

聖女の警護としてら軍の精鋭達も街に滞在するため治安も良くなっていく。

荒れていた国内が少しづつ平穏を取り戻し始めていた。


「エリーシカ!!!」

聖女の祈りが終わり、王都の神殿内を歩いていると突然声を掛けられた。
エリーシカが振り返ると、元婚約者の第3王子ソラが息を切らした様子でこちらに向かって歩いてくる。

護衛がエリーシカの前にサッと出ようとするのをエリーシカは手を挙げて止めた。

「ソラ殿下、いかがなさいましたか?」

エリーシカは手元の扇を広げ口元を隠す。
エリーシカは少し不愉快だった。
元婚約者とはいえ、婚約破棄された第3王子に名前を呼び捨てにされ、国王と同じ権力を持っている聖女に対しての無礼。
エリーシカには第3王子が声を掛けてきた理由も目当てもわかっていた。
表情にはでないように繕うが、顔を見るとため息をつきそうだった。

「エリーシカ、国王がリーナの元へと婿入りするように言うのだ。取りやめるよう説得してくれ」

「殿下はその方に愛を囁いていたではありませんか」

「あれは勉強から逃げるためであって……」

気まずそうにぶつぶつと呟く第3王子にエリーシカはさっさとこの場から離れることに決めた。

「愛する方と添い遂げられて幸せではありませんか。では、私は失礼いたします」

さっと身を翻すと第3王子がおい縋ってくる。

「ま、待ってくれエリーシカ」

エリーシカはうんざりとしながら第3王子に振り向いた。
「殿下、私は既に殿下の婚約者ではありません。そのような呼び方をなさらないでください。不愉快です」

驚いた表情をする第3王子を無視してエリーシカは予定通り王宮へと向う。
去り際に第3王子が何かを叫んでいたが、衛兵が止めたのか角を曲がる頃にはその声が聞こえなくなっていた。

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