玉座の檻

萌於カク

文字の大きさ
81 / 81

幸せな二人

しおりを挟む
 辺り一面に骸骨が転がっている。
 そこは罪人の居場所、刑場裏の崖の下である。
 陰鬱な光景にアミーユも足を竦ませた。
 ダンは目を細めて岩の上を見ると、アミーユと側近を置き去りに、一人でそこに向かった。
 そして、マントで一つの遺体を包んで戻ってきた。
 ダンの父、そして、アミーユの叔父ともなるリチャード国王に違いなかった。
 こんな場所とあって墓荒らしも手を付けず、国王は立派な衣服に身を包んでいた。
 リチャード国王の遺体は、王家の霊廟に埋葬されることになった。
 そこには、ダンの母親であるディアナ妃の棺も、そして、ジョージ王子の棺もあった。
 ダンはリチャード国王を葬った後、「愚かなのは罪だ」と吐き捨てるように言った。

♰♰♰

 その夜、ダンは、アミーユにディアナ妃の白いナイトドレスを着せた。そして、アミーユをじっと見つめてきた。

「ダンはディアナ妃のことを覚えているの?」
「いや、まったく。母にも幸せなときがあったのかな」

 ダンは無表情だが、その言葉には、慕情がうかがえた。アミーユはダンの赤毛を撫でながら言った。

「俺の母は幸せだったはずだ。そして今も幸せそうにしている。そんな母にクッキーを焼いてくれるような女性だったんだから、お前の母も幸せだったはずだ」
「ああ、アミーユが言うならそうだろう」

 ダンはアミーユからドレスを脱がせながら言った。やはり丁寧にディアナ妃のドレスをたたんだ。

「マリア妃にディアナ妃のことを訊いてみようか?」

 アミーユはときおりお忍びで母と姉とを訪ねるが、マリア妃はいつも穏やかで、アミーユが何かを訊けば、短い言葉で返してくれる。ディアナ妃のことも覚えていれば何か答えてくれるはずだ。

「いや、いい。終わったことだ」

 ダンはアミーユの体をベッドに倒した。そして、唇を重ねる。
 やはりダンには癒えない傷がまだ残っているのか、どこか荒々しい手つきだった。唇を重ねるのもどこか強引だ。

「ちょっと待て」

 アミーユは身を引くも、ダンはお構いなしに襲い来る。平然とうそぶく。

「アミーユは、俺を拒めないんだよ? アミーユは俺のものだし、俺はアミーユのものだ!」

 そう言いながら無邪気な顔で襲い来る。

「あっ、だめ、だめだ、やめろ!」

 アミーユは声を荒げるも、ダンはやはり襲い来る。

「アミーユ、好き。アミーユは、俺のものだ」
「あんっ、あっ、ダン、だめだ、だめだってば!」

 アミーユが珍しく怒ったせいか、ダンは、キョトンとした。眉尻のさがった間抜け顔が憎めない。

「アミーユ、何かあった?」

 アミーユは起き上がった。そして、お腹に手を当てた。

「ややができた。だからいたわってくれ」

 アミーユは半ば怒って言った。照れ隠しもあった。
 ダンは間の抜けた顔で固まっていた。そのうち、ずびっと鼻をすすった。

「アミーユ!」

 ダンはガバッと抱きしめようとしてきて、手を引っ込めた。そろりそろりとアミーユを抱きしめる。
 
「アミーユ、俺、アミーユにはもう何も持たせない。俺が食べさせる。着替えだって俺がさせる。風呂にだって俺が入らせる。だから、今度は無事に……」

 アミーユは、ダンの背中を抱きしめ返した。

「自分のことは自分でできる」

 ダンのずびっと鼻をすする音に、アミーユが呆れたようにくすくすと笑う声が重なる。
 次第にダンも笑い出した。

「アミーユ、俺、嬉しい!」
「うん、俺もだ」

 幸せが二人を包んでいた。




(おわり)
しおりを挟む
感想 4

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(4件)

トーン
2025.12.02 トーン

久々に読もうとしたら、番外編があってびっくりしました!めちゃくちゃ嬉しかったです!
主人公とにかく大変な目にあったのであとは幸せに暮らしてくれるといいな!応援してます!

2025.12.03 萌於カク

トーンさま

ありがとうございます!大変、励みになります!これからも頑張ります!

解除
ひつじさん
2023.03.30 ひつじさん

ダンが普通にクソ野郎でびっくりしました。
お前なんかスパダリの風上にも置けねぇ。
あんだけ利用して、それで本当にアミーユの事好きだったとか言われても全く信用できません。
結局、最初から最後まで転がされて翻弄されてボロボロになってるアミーユ可哀想すぎます!!!

ストーリーはすごく面白かったです(#´ᗜ`#)

2023.03.31 萌於カク

ストーリーは面白かったようでよかったです(^^♪

ダンは、そう言えばスパダリではないですね💦クズが好きすぎて、そこらへん、おかしくなっています💦

アミーユは好きになってもらえたようでホッとしました。

クズ×不憫が性癖なんだとつくづく思いました💦

解除
ぽりりん
2023.03.29 ぽりりん

ダンがダニエル王子だったとは!∑(゚Д゚)
これからは穏やかに2人過ごせることを祈るばかり、、、
また子供もできるといいなぁ。゚(゚´ω`゚)゚。
今度こそは。

2023.03.30 萌於カク

ラストまでお読みいただきありがとうございます。ラストのシーンが描きたいためだけに長い物語を作ってしまいました。この二人は今後はめちゃくちゃ幸せに生きていきます。子どももたぶんめちゃくちゃたくさん……♡

解除

あなたにおすすめの小説

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新

運命よりも先に、愛してしまった

AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。 しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、 2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。 その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について

いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。 実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。 ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。 誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。 「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」 彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。 現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。 それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

あなたの隣で初めての恋を知る

彩矢
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。