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戦場の星空
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アミーユは軍勢を率いて南下していた。十万を上る兵士が丘を覆いながら移動している。
向かうはサースデン伯領。
サースデン伯は、国境を越えた先の住人、蛮族バーバラルと手を結び、反乱の名乗りを上げた。そのうえで、アクランド王国公領を侵略している。
アミーユは公領侵略軍を無視して、サースデン伯の本拠地に軍を向けている。
サースデン伯は、次もアクランド軍の一個師団が攻めてくると想定しているだろう。
まさか全軍を上げてサースデン本体を攻めるとも思っていまい。
おとりを使ってサースデン本体から本軍を引き出し、大軍で待ち受ける。
二個師団に連勝したサースデン軍は調子に乗っている。本軍はおとりを必ず追いかけるはずだ。
天幕での参謀会議は驚くほどスムーズに進む。
アミーユが切り出す。
「こちらは大軍で備えています。遊軍を作らないために広い平原を決戦場に設定しなければなりません」
早速、ブラッドリー中将が地図を取り出す。
「すでに決戦場の候補地を挙げています。ここなら丘に隠れて布陣できます。この谷川で給水もできる」
ブラッドリー中将はアミーユよりも数手先を考えていた。別の師団長が手を挙げる。
「おとり部隊は我が師団の連隊にお任せください。西から東へと敵を誘い込みます」
「では我が師団は迂回ルートで城を攻めます」
「我が師団は蛮族に備えて、国境側に布陣されたし」
アミーユは目を見張った。
歴戦の軍人たちは阿吽の呼吸で話を進めていく。
ここには、たたき上げの師団長しか来ていない。貴族出身の師団長は、王都にこもったままだ。
王宮での参謀会議と、戦地での参謀会議とでは、まるで異なっている。
これまで無能な貴族将校が足を引っ張っていたのか。
その光景に、アミーユは勝利を確信していた。
♰♰♰
空は白み始めている。
アクランド軍は、平原を囲む丘に潜んでいる。
西方には、空の半分を覆うほどの砂埃が立っている。それはこちらに向かってくる。
地響きが次第に大きくなっていた。友軍とそれを追いかける敵軍だ。おとりの一団は闇に乗じて敵を攻め込んだが、逆に追われる体で逃げ込んでくる。
地響きの大きさが、サースデン本軍がこちらに向かっていることを伝える。
夜明けとともに、敵軍は大軍に取り囲まれていることを知るだろう。
日が高くなる前に決着するはずだ。
今宵は十五夜。満月に照らされて勝利の美酒を交わすことになるだろう。
満月―――
ついぞダンと眺めることは叶わなかった。
討伐軍の空のもと、アミーユは決心していた。
もう二度と王都の土を踏まない。勝利ののちは、凱旋の隊列を去り、どこかに落ちのびよう。
ダンは俺を捨てた、いや、解放したのだ。
もう王都にはいたくない。惨めにダンの影を求めて過ごすのはいやだ。
何より、俺が王都から消えれば物語の筋書きは変わる。
出立式で、鮮やかに微笑したパメラを思い出す。
―――われは愛するもののために、どんなことでもできるのだ。
その言葉はアミーユの胸にストンと落ちた。
わずかな可能性でも、ダンが生き残る道にすがりたい。
ダンが生き残るのならば、アミーユにとって王都を去ることなどたやすいことだ。
♰♰♰
眼前には、砂埃が迫っている。
背中から陽光が差し込んできた。夜が明ける。
おとりを追いかける敵は、まだアクランド軍の包囲網に気づいていない。
アクランド軍は東を背に布陣している。朝陽が敵の目をくらませる。
敵軍が友軍の腹に飲み込まれていく。アミーユは腕を上げた。
「―――今だ、攻撃せよ」
砲撃が雨となって敵にそそがれる。
敵は突然現れた大軍に戦意を失った。戦わずして降伏し、あるいは逃亡する。しかし、逃げかえる先のサースデン伯の居城はすでに別動隊が向かっている。
始まる前に勝敗は決していたのだ。
昼過ぎ、天幕のもとで待つアミーユに、師団長から次々と勝利の報告が入ってきた。
サースデン伯居城は落城した。
公領の侵略軍は全面降伏した。
バーバラル軍はその後背を追撃中であるとのこと。
アミーユはアミーユ直下の第一師団を、バーバラル軍討伐の支援に向けた。第一師団はほぼ無傷である。
アミーユ自ら率いて蛮族を追って出た。
バーバラル軍は草原をでたらめに駆けていた。ときおり方向を変えて反撃を仕掛けてくる。
バーバラル軍は、新たに現れた追撃軍に軍列を乱し始めた。
アクランド兵士らは現れた味方の軍勢に軍神を見た。
金髪の軍神は誰よりも速く敵陣に斬り込んでいった。
♰♰♰
アミーユが違和を覚えたのは、先を走るバーバラルの騎馬団が左右に分かれたときだった。咄嗟に少ない集団を追いかけた。
その直後、馬が前足を折った。アミーユはもんどりうって地面に転がった。
そこは膝丈ほどの草の原っぱだった。草に罠が隠されていた。
アミーユは敵に誘導されたのだ。
「罠だ、引けいっ」
第一師団の先陣は罠にはまった。アミーユの後ろの隊列は崩れた。
バーバラル軍の隊列はでたらめに動いているように見えて、罠に誘い込んだのだ。
蛮族のわりに知性が高いのだ。いや、バーバラル人からすれば、こちらが蛮族。
草原に落ちたアミーユにバーバラルの兵士が襲い掛かった。呆気なく取り押さえられる。
バーバラル兵士は色は浅黒く、目はぎょろりとしている。
兵士らの言葉はわからなかったが、アミーユを捕虜として扱うつもりらしく、立ち上がらせると後ろ手に拘束する。
不意にぞわっと熱を感じる。
ううっ、うあっ………。
アミーユの体内を一気に駆け抜けるものがある。ぞくぞくっと腹の底から頭頂へとしびれが走る。
くそっ、ヒートだ………。こんなときに。
最後の新月に情交を交わせなかった。そのツケがきたのだ。
辺りは薄暗くなっている。薄闇にぽっかりと満月が浮かんでいる。
妊孕可能性の高い時期に発情するのは自然の摂理。ダンと交わって作為的に発情をしてきたおかげで自然発情は途絶えていたが、本来は満月に発情するのではないか………?
今ごろ気づいてももう遅い。
前を行く兵士が急に振り返った。まじまじとアミーユを覗き込んできた。アミーユの首に鼻を寄せるとスンスンと嗅いだ。ブワッとその兵士から匂いが立ちあがった。
こいつは、ア、ルフ………?
その兵士と目が合うとズクンと腹の奥が震えた。
種族を超えて第二性は作用するらしい。
立っているのも難しいほど欲情が押し寄せていた。
αの兵士が他の兵士に説明し、ニヤニヤとアミーユを取り囲んできた。兵士らは顔を見合わせると、アミーユを担ぎ上げた。
連れていかれた先の草むらに、アミーユは降ろされた。
降ろされたところで、アミーユはバーバラル兵士の胸に小刀を突き刺した。後ろに飛びのくと、小刀を構えた。
ヒートを起こしている。荒くれた兵士数人を相手にどうにかできるとも思っていない。
俺を犯すがいい、殺すがいい、だが、死体は俺だとわからぬようにぐちゃぐちゃにしてくれ。無様を晒したくはない。レルシュ少将は戦死。死体は判別せず。こうなるように。
最後まで敵兵の憎しみを買うつもりだった。
頭上で小刀を構えて、もっとも大きい兵士に向かって跳躍する。
しかし、跳ね返されて押さえつけられる。今度は兵士も容赦をしない。アミーユはあっという間に四方八方から押さえつけられていた。乱暴に軍服が破かれる。
アミーユの視界に、星空が広がっていた―――
抵抗をやめる。じきに俺は正気を失う。自分から敵兵の精を欲しがる。
ああ、なんて惨めな。
アミーユの軍服の下をずりさげて、バーバラル兵士が覆いかぶさってくる。荒い息を吹きかけて、ねばつく舌を肌に這わせる。
アミーユはあさましくも敵兵に腕を絡ませながらも、ただ一つを祈った。
ダン、生きろ―――――
突如、星空に影が現れた。
それはアミーユにとってなじみ深い形をしている。求めてやまない形。しかし、こんな場所にいるはずもない。
その影はアミーユに覆いかぶさる兵士をなぎ倒した。
星空の草原を一頭の馬が駆けていた。
アミーユは後ろ向きにぼんやりとしがみついている。
騎手の胸に抱きついていた。騎手の大腿に自分の大腿を乗せて、両腕で騎手の胴体を抱え込んでいる。
温かい。
この胸は温かい。
ときおり騎手を見上げると、優しい黒目が見返してくる。
夢だ。これは夢だ。幸せな夢―――
向かうはサースデン伯領。
サースデン伯は、国境を越えた先の住人、蛮族バーバラルと手を結び、反乱の名乗りを上げた。そのうえで、アクランド王国公領を侵略している。
アミーユは公領侵略軍を無視して、サースデン伯の本拠地に軍を向けている。
サースデン伯は、次もアクランド軍の一個師団が攻めてくると想定しているだろう。
まさか全軍を上げてサースデン本体を攻めるとも思っていまい。
おとりを使ってサースデン本体から本軍を引き出し、大軍で待ち受ける。
二個師団に連勝したサースデン軍は調子に乗っている。本軍はおとりを必ず追いかけるはずだ。
天幕での参謀会議は驚くほどスムーズに進む。
アミーユが切り出す。
「こちらは大軍で備えています。遊軍を作らないために広い平原を決戦場に設定しなければなりません」
早速、ブラッドリー中将が地図を取り出す。
「すでに決戦場の候補地を挙げています。ここなら丘に隠れて布陣できます。この谷川で給水もできる」
ブラッドリー中将はアミーユよりも数手先を考えていた。別の師団長が手を挙げる。
「おとり部隊は我が師団の連隊にお任せください。西から東へと敵を誘い込みます」
「では我が師団は迂回ルートで城を攻めます」
「我が師団は蛮族に備えて、国境側に布陣されたし」
アミーユは目を見張った。
歴戦の軍人たちは阿吽の呼吸で話を進めていく。
ここには、たたき上げの師団長しか来ていない。貴族出身の師団長は、王都にこもったままだ。
王宮での参謀会議と、戦地での参謀会議とでは、まるで異なっている。
これまで無能な貴族将校が足を引っ張っていたのか。
その光景に、アミーユは勝利を確信していた。
♰♰♰
空は白み始めている。
アクランド軍は、平原を囲む丘に潜んでいる。
西方には、空の半分を覆うほどの砂埃が立っている。それはこちらに向かってくる。
地響きが次第に大きくなっていた。友軍とそれを追いかける敵軍だ。おとりの一団は闇に乗じて敵を攻め込んだが、逆に追われる体で逃げ込んでくる。
地響きの大きさが、サースデン本軍がこちらに向かっていることを伝える。
夜明けとともに、敵軍は大軍に取り囲まれていることを知るだろう。
日が高くなる前に決着するはずだ。
今宵は十五夜。満月に照らされて勝利の美酒を交わすことになるだろう。
満月―――
ついぞダンと眺めることは叶わなかった。
討伐軍の空のもと、アミーユは決心していた。
もう二度と王都の土を踏まない。勝利ののちは、凱旋の隊列を去り、どこかに落ちのびよう。
ダンは俺を捨てた、いや、解放したのだ。
もう王都にはいたくない。惨めにダンの影を求めて過ごすのはいやだ。
何より、俺が王都から消えれば物語の筋書きは変わる。
出立式で、鮮やかに微笑したパメラを思い出す。
―――われは愛するもののために、どんなことでもできるのだ。
その言葉はアミーユの胸にストンと落ちた。
わずかな可能性でも、ダンが生き残る道にすがりたい。
ダンが生き残るのならば、アミーユにとって王都を去ることなどたやすいことだ。
♰♰♰
眼前には、砂埃が迫っている。
背中から陽光が差し込んできた。夜が明ける。
おとりを追いかける敵は、まだアクランド軍の包囲網に気づいていない。
アクランド軍は東を背に布陣している。朝陽が敵の目をくらませる。
敵軍が友軍の腹に飲み込まれていく。アミーユは腕を上げた。
「―――今だ、攻撃せよ」
砲撃が雨となって敵にそそがれる。
敵は突然現れた大軍に戦意を失った。戦わずして降伏し、あるいは逃亡する。しかし、逃げかえる先のサースデン伯の居城はすでに別動隊が向かっている。
始まる前に勝敗は決していたのだ。
昼過ぎ、天幕のもとで待つアミーユに、師団長から次々と勝利の報告が入ってきた。
サースデン伯居城は落城した。
公領の侵略軍は全面降伏した。
バーバラル軍はその後背を追撃中であるとのこと。
アミーユはアミーユ直下の第一師団を、バーバラル軍討伐の支援に向けた。第一師団はほぼ無傷である。
アミーユ自ら率いて蛮族を追って出た。
バーバラル軍は草原をでたらめに駆けていた。ときおり方向を変えて反撃を仕掛けてくる。
バーバラル軍は、新たに現れた追撃軍に軍列を乱し始めた。
アクランド兵士らは現れた味方の軍勢に軍神を見た。
金髪の軍神は誰よりも速く敵陣に斬り込んでいった。
♰♰♰
アミーユが違和を覚えたのは、先を走るバーバラルの騎馬団が左右に分かれたときだった。咄嗟に少ない集団を追いかけた。
その直後、馬が前足を折った。アミーユはもんどりうって地面に転がった。
そこは膝丈ほどの草の原っぱだった。草に罠が隠されていた。
アミーユは敵に誘導されたのだ。
「罠だ、引けいっ」
第一師団の先陣は罠にはまった。アミーユの後ろの隊列は崩れた。
バーバラル軍の隊列はでたらめに動いているように見えて、罠に誘い込んだのだ。
蛮族のわりに知性が高いのだ。いや、バーバラル人からすれば、こちらが蛮族。
草原に落ちたアミーユにバーバラルの兵士が襲い掛かった。呆気なく取り押さえられる。
バーバラル兵士は色は浅黒く、目はぎょろりとしている。
兵士らの言葉はわからなかったが、アミーユを捕虜として扱うつもりらしく、立ち上がらせると後ろ手に拘束する。
不意にぞわっと熱を感じる。
ううっ、うあっ………。
アミーユの体内を一気に駆け抜けるものがある。ぞくぞくっと腹の底から頭頂へとしびれが走る。
くそっ、ヒートだ………。こんなときに。
最後の新月に情交を交わせなかった。そのツケがきたのだ。
辺りは薄暗くなっている。薄闇にぽっかりと満月が浮かんでいる。
妊孕可能性の高い時期に発情するのは自然の摂理。ダンと交わって作為的に発情をしてきたおかげで自然発情は途絶えていたが、本来は満月に発情するのではないか………?
今ごろ気づいてももう遅い。
前を行く兵士が急に振り返った。まじまじとアミーユを覗き込んできた。アミーユの首に鼻を寄せるとスンスンと嗅いだ。ブワッとその兵士から匂いが立ちあがった。
こいつは、ア、ルフ………?
その兵士と目が合うとズクンと腹の奥が震えた。
種族を超えて第二性は作用するらしい。
立っているのも難しいほど欲情が押し寄せていた。
αの兵士が他の兵士に説明し、ニヤニヤとアミーユを取り囲んできた。兵士らは顔を見合わせると、アミーユを担ぎ上げた。
連れていかれた先の草むらに、アミーユは降ろされた。
降ろされたところで、アミーユはバーバラル兵士の胸に小刀を突き刺した。後ろに飛びのくと、小刀を構えた。
ヒートを起こしている。荒くれた兵士数人を相手にどうにかできるとも思っていない。
俺を犯すがいい、殺すがいい、だが、死体は俺だとわからぬようにぐちゃぐちゃにしてくれ。無様を晒したくはない。レルシュ少将は戦死。死体は判別せず。こうなるように。
最後まで敵兵の憎しみを買うつもりだった。
頭上で小刀を構えて、もっとも大きい兵士に向かって跳躍する。
しかし、跳ね返されて押さえつけられる。今度は兵士も容赦をしない。アミーユはあっという間に四方八方から押さえつけられていた。乱暴に軍服が破かれる。
アミーユの視界に、星空が広がっていた―――
抵抗をやめる。じきに俺は正気を失う。自分から敵兵の精を欲しがる。
ああ、なんて惨めな。
アミーユの軍服の下をずりさげて、バーバラル兵士が覆いかぶさってくる。荒い息を吹きかけて、ねばつく舌を肌に這わせる。
アミーユはあさましくも敵兵に腕を絡ませながらも、ただ一つを祈った。
ダン、生きろ―――――
突如、星空に影が現れた。
それはアミーユにとってなじみ深い形をしている。求めてやまない形。しかし、こんな場所にいるはずもない。
その影はアミーユに覆いかぶさる兵士をなぎ倒した。
星空の草原を一頭の馬が駆けていた。
アミーユは後ろ向きにぼんやりとしがみついている。
騎手の胸に抱きついていた。騎手の大腿に自分の大腿を乗せて、両腕で騎手の胴体を抱え込んでいる。
温かい。
この胸は温かい。
ときおり騎手を見上げると、優しい黒目が見返してくる。
夢だ。これは夢だ。幸せな夢―――
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