玉座の檻

萌於カク

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はいだ黒衣※

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 アミーユは王宮の『王の間』でひざまずいていた。
 アミーユの前、王座の位置に、アデレートは優雅に座っている。

 アデレートは黒衣をはいだ。気の遠くなるほどの金がかかった金色のドレスに身を包んでいる。
 ご丁寧に、髪の色も金色に染め直していた。首にも腕にも指にも宝石をぶら下げている。

 アデレートの外貌の変わりように、アミーユは愕然とする。

 アデレートが黒衣の裏に宝石を縫い付けているのは本当だった。そのドレスの内と外をひっくり返しただけのこと。

 長いこと、アデレートは黒衣に本性を隠していた。もうそれを隠す必要もなくなった。

 誰もがアデレートの変貌ぶりに目を見張るが、もちろん口にできない。口にしようものなら更迭だ。

 アミーユは軍務長官続投の指名を受けて、呼び出されていた。
 アデレートは目をらんらんと輝かせて、アミーユに命令を出す。

「これ以上、暴徒は見過ごせません。暴徒には武器を向けなさい。また、王室への批判は一切許しません。王室の権威に関わります」

 嬉々として言うアデレートに、アミーユは口ごもった。

「なかには嫌がる兵士もおります」

 なかには、どころか、ほとんどの兵士が嫌がるに決まっている。

「嫌がる兵士は暴徒と同罪。暴徒とともに、公開処刑します。王宮前の広場に処刑台を準備しているところです。よいですか、片っ端から暴徒を捕まえて、処刑するのです」

 アミーユは息を呑んだ。
 アデレートはこれまでの懐柔策を、一転するつもりなのだ。
 アデレートは平民議会の決議を次々と叶えてきた。それは平民の意思を尊重するのではなく、ただ、媚びるだけのものだった。
 そして、今度は、対応策を大転換し、弾圧せよ、そう言っているのだ。

 アデレートは、まるで平民の代表のような顔で老国王に仕えていたが、その仮面を完全に外した。

 アミーユは、アデレートという女を完全に見失っていた。
 閣下は、閣下は、本当は恐ろしい人だった。
 俺には何もわかっていなかった…………。

 アデレートは傷ついた顔を自分に向けるアミーユに、内心で呆れ果てていた。

 アミーユには愛に飢えたようなところがある。そのために、少しでも優しくされれば簡単にほだされて、ほだされた以上は見捨てられない、そういう性質がある。
 アデレートもその性質に付け込もうと、さんざん気を配って優しくしてやってきた。

 アデレートからすれば、アミーユは憐れなほどに愚かだ。自分の立ち位置もわからず、何も見ず、何も考えず、ただ翻弄される。

 アデレートは唇の端を釣り上げて、アミーユを見下ろした。
 愚かにもこの子は、わたくしに手の内を晒してしまった。いずれ、この子は愚かしさに身を亡ぼすに違いない。
 アデレートはアミーユに告げる。

「私はあなたの秘密を知っています」
「え………?」
「私には簡単に推測できました」

 アミーユはアデレートの意味深な目線にたじろぐ。

「あなたの盗賊団の首魁への入れ込みようは度が過ぎました。兵士らは噂していたのですよ。レルシュ師団長の首魁への熱意は度が過ぎている。生け捕りを望んで私財までばらまくなんて、まるで首魁にようだ、と」

 アミーユは固唾を飲んで聞いていた。アデレートは突きつける。

「あなたのαは盗賊団の首魁ですね?」

 咄嗟にアミーユは、「はははっ」と笑い声をあげた。服の下には冷や汗を垂らしている。

「閣下がそんな突拍子もないことを言い出すとは、おかしくてかないません。私は首魁を憎むがあまり、私財をつぎ込んだまでのこと」

 アデレートは鼻で笑う。

「わざとらしい言い訳だこと! 亡き国王暗殺未遂の件も、自作自演。あなたは出世のために首魁を利用し、首魁は見返りに捕縛を免れている。あまりに卑劣です」

 アミーユは今更ながらに自覚した。
 自ら意図したわけではなかったが、アミーユはダンの流す情報で出世してきたのだ。まさにアデレートの言う通りかもしれなかった。
 黙り込んだままのアミーユに、アデレートは畳みかけた。

「あなたの卑劣さを知れば、兵士はどう思うでしょうか」

 アデレートはアミーユを脅しているのだ。少しでも背けばそれを公表すると。
 守護天使が欺瞞だとわかれば、王都の市民もアミーユに石を投げるようになる。

♰♰♰
 
「アデレートは無視しておけ」

 ダンは何もかもを見通した目で言う。
 ダンはそう言いながら、アミーユのシャツのボタンを外していく。
 目でアミーユの肢体をなぶったあと、薄く笑みを浮かべて、今度は手でアミーユの胸をなぶる。

「アデレートはじきに倒れる」
「えっ? ……あっ、ん………」
「もう一度、王位は変わる」
「えっ………? ……ダン……、ん、あ……」

 ダンは囁きながらアミーユを追い詰めていく。
 いつのまにか裸に剥かれたアミーユは、ダンのなすがままに体を震わせている。
 ダンの指はアミーユの体内奥深くに侵入し、アミーユを思うがままに操る。ダンの指の動きに合わせて、アミーユの体は跳ねる。

「あっ、あっ、ダン、もうっ、ああっ」

 碧がかった目は熱で浮かされたようにうるみ、一心にダンを見つめて、手を伸ばす。もうその視界にはダンしかいない。

「もうすぐことが起きる」
「えっ? あ……、ん……」
「俺は、それを待っている」
「あっ、あっ、ダン……、あっ………」

 アミーユは、しなやかな体を好いようになぶられ、ゆるく巻いた金髪を揺らめかせている。アミーユの焦点はぼやけて、必死にダンの首をかき寄せている。
 ダンはそれを満足げに見つめて、自身の高まりをアミーユに突き立てた。

「アミーユ、いい子だ」
「あっ、あっ、んっ、ダン…………」
「俺はお前を王にする」
「ええっ?!」

 アミーユは目を見開き、快楽から意識を取り戻す。思わずダンを押しのけようとした。しかし、体はもう牛耳られて、ままならない。腰を押さえつけられ、深いところを抉られる。体の奥深くに、熱い塊を突き付けられる。

「お前を王にする」
「あっ、いやっ………あっ、あっ、や、うぅっ………」

 アミーユは首を横に振ってダンを押し返すも、ダンの胸はびくとも動かない。アミーユが抵抗しているのにも気が付いていない。
 ダンはアミーユに何度も突きたて、アミーユを快楽へと連れていく。

「お前がこの国の王だ」
「やああっ、あぅっ、もう、いや、いやぁっ」

 その悲鳴は拒否なのか、恐怖なのか。
 あるいは快楽の喘ぎなのか。
 アミーユは上り詰めて、肉体的にも精神的にもダンにすべてを明け渡す。
 ダンは優しい囁き声でアミーユの脳を刺す。

「お前をこの国の王にする」
「やああっ、あっ、ああああっ…………」

 アミーユは、ただ一人の支配者であるダンにしがみつく。優しく甘く語るただ一人の支配者に。
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