玉座の檻

萌於カク

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幸妃の解放

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 ダニエル国王が再び王位に戻った。王宮には再びアデレート母子が出入りを始めたが、アミーユは一切近寄らない。

 王宮の発表では、パメラとジョージは行幸先で馬車ごと転落したことになった。
 残されたアン王女は、サースデンに向かうことになった。サースデンの息子に爵位と領地を与え直し、アン王女を縁づかせることになった。はためにはサースデン伯に対する寛容な措置に見えるが、アン王女の難しい処遇にも、反乱伯爵の封じ込めにも、有効なのかもしれない。

 アミーユは、パメラの一件後、日を置かずして、幸妃を尋ねた。
 幸妃には真実を知る権利がある。

 幸妃はアミーユに飛びついてきたが、もう突進してくることはない。穏やかに、まるで本当の息子を出迎えるような笑顔でアミーユを抱きしめる。アミーユも抱きしめ返すと、ほっとしたような笑顔を浮かべた。

「まあ、随分とお顔を見せてくださいませんでしたこと。半月ぶりですわ」

 侍女は嫌味ったらしく言ってきたが、アミーユの訪問を歓迎している。
 入り口には、近衛はいても、もう見張りの兵士はいない。
 アミーユは幸妃と侍女の手を取って、外へと連れ出した。

「まあ………! では、もう、出られるのですね?」

 アミーユはうなずいた。 

「母上、姉上、どうぞこちらへ」

 南の庭から居住棟を眺めあげる。
 老国王がいたころは、ベランダのそこかしこにきらびやかな愛妾たちの姿が見られたが、今はがらんとしている。

 どこか奥まった場所にダニエル国王と太皇太后も住んでいるのだろう。それ以外にも忘れられた王族がいるのかもしれないが、ここはこんなに広いのだ。少々住人が増えてもいい。

 バルコニーのある南向きの部屋に二人を連れていく。なかは整えさせてある。

「今日からここにお住みになってください。親衛隊にも侍女らにもあなたがたにお仕えするように伝えています。ほかにご希望があれば、私から宮内府に伝えます」

 侍女は目を輝かせた。

「まあ………!」
「幸妃さまは台所仕事を好まれるので、隣には小さな厨房も用意しております」
「まあ………! 幸妃さま、これからは自由に散歩も行けますわ、城の子どもたちにもいろんなものをつくってあげられます」

 これは、アミーユの権限を越えたことかもしれなかった。
 しかし、かまうものか。
 幸妃は王宮の女主でも良い立場の方だ。幸妃はあまりに奪われすぎている。

 アミーユが侍女に幸妃の悲劇の真相を伝えると、侍女は涙をこぼし始めた。

「そうでしたか。パメラさまはやはり恐ろしい人だったのですね。パメラさまは幸妃さまにいつもそれは冷たい仕打ちをなさいました。この棟に住んでいたときも、北側の地下に部屋をあてがわれておりました」

 王宮では、この居住棟も含め、パメラが長いこと女主として君臨してきた。

 
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