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悪は滅びぬ2
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ダンはアミーユからシーツをはがして、抱き上げた。
豪華な作りの浴室で、温かな湯につかる。
「ディアナ妃は、チョコレート色の髪だったんだね」
「そういえば、どうしてお前はドレスを着ていたんだ?」
「パメラが俺にチョコレートをぶっかけて、リチャード国王の服を貸すと言って、俺の服を脱がせて、それから、抱きついてきた」
あれは結局、パメラは、アミーユを懐柔しようとしていたのだろう。
アミーユが訪問したときには、既にそのつもりで、準備のためにアミーユを待たせていた。髪を整え、香油までつけていた。
ダンは心底いやそうな顔をした。
「体ももっと洗っておこう。パメラの匂いが少しでもしたらいやだ」
ダンは洗うと言いながら、アミーユを撫でるその手つきは、いやらしい。
「俺が手に取ったのは、偶然にも、ディアナ妃のドレスだった。俺は、ディアナ妃に導かれたのかな。俺の姿を見て、パメラは錯乱した。ディアナ妃だと勘違いして、罪を告白した。ディアナ妃は罪をかぶって亡くなった。ディアナ妃の無念に導かれたのだとしか思えない」
「おかげであっさり済んでしまった。パメラを白状させるためにいろいろ拷問を用意していたのに」
それを聞いてアミーユは心底ほっとした。ダンに、あれ以上ひどいことをさせたくない。ダンの心はどこかできっと傷ついているはずだ。
「リチャード国王は、ディアナ妃のことをずっと忘れられなかったんだ。だから、ディアナ妃のドレスを自分の衣裳室に仕舞っていたんだ」
「愚かな国王だ」
「でも、愛情深い国王だ」
「愚かな国王は害悪でしかない」
ダンの強い口調にアミーユは黙り込む。
パメラの悪を見抜けなかったゆえに、ダンの母親も死んだ。ダンには国王も同罪なのだ。
「パメラは、リチャード国王の遺体を、刑場の裏に捨てたと言った」
さすがにそれには驚いたのか、アミーユの背後でダンが身じろいだ。やがて、つぶやいた。
「殺した数々の使用人の遺体もそこに投げ捨ててきたんだな」
「うん、多分」
「そのうち弔いに行こう」
「うん、俺も行く」
浴室から出ると、ダンはもう一度、アミーユにディアナ妃のナイトドレスを着せた。
黙ったままアミーユを上から下までじっくりと眺めた。
「これは大切にとっておこう。お前によく似合う」
ダンはアミーユを抱き寄せた。
ダンは復讐を無事果たし、俺は国王を倒して生き残っている。
そのかわりパメラという悪が滅んだ。
すべて済んだのだ。
そのときのアミーユは、ダンの温もりがこれからもずっとそばにあることを信じて疑わなかった。
豪華な作りの浴室で、温かな湯につかる。
「ディアナ妃は、チョコレート色の髪だったんだね」
「そういえば、どうしてお前はドレスを着ていたんだ?」
「パメラが俺にチョコレートをぶっかけて、リチャード国王の服を貸すと言って、俺の服を脱がせて、それから、抱きついてきた」
あれは結局、パメラは、アミーユを懐柔しようとしていたのだろう。
アミーユが訪問したときには、既にそのつもりで、準備のためにアミーユを待たせていた。髪を整え、香油までつけていた。
ダンは心底いやそうな顔をした。
「体ももっと洗っておこう。パメラの匂いが少しでもしたらいやだ」
ダンは洗うと言いながら、アミーユを撫でるその手つきは、いやらしい。
「俺が手に取ったのは、偶然にも、ディアナ妃のドレスだった。俺は、ディアナ妃に導かれたのかな。俺の姿を見て、パメラは錯乱した。ディアナ妃だと勘違いして、罪を告白した。ディアナ妃は罪をかぶって亡くなった。ディアナ妃の無念に導かれたのだとしか思えない」
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それを聞いてアミーユは心底ほっとした。ダンに、あれ以上ひどいことをさせたくない。ダンの心はどこかできっと傷ついているはずだ。
「リチャード国王は、ディアナ妃のことをずっと忘れられなかったんだ。だから、ディアナ妃のドレスを自分の衣裳室に仕舞っていたんだ」
「愚かな国王だ」
「でも、愛情深い国王だ」
「愚かな国王は害悪でしかない」
ダンの強い口調にアミーユは黙り込む。
パメラの悪を見抜けなかったゆえに、ダンの母親も死んだ。ダンには国王も同罪なのだ。
「パメラは、リチャード国王の遺体を、刑場の裏に捨てたと言った」
さすがにそれには驚いたのか、アミーユの背後でダンが身じろいだ。やがて、つぶやいた。
「殺した数々の使用人の遺体もそこに投げ捨ててきたんだな」
「うん、多分」
「そのうち弔いに行こう」
「うん、俺も行く」
浴室から出ると、ダンはもう一度、アミーユにディアナ妃のナイトドレスを着せた。
黙ったままアミーユを上から下までじっくりと眺めた。
「これは大切にとっておこう。お前によく似合う」
ダンはアミーユを抱き寄せた。
ダンは復讐を無事果たし、俺は国王を倒して生き残っている。
そのかわりパメラという悪が滅んだ。
すべて済んだのだ。
そのときのアミーユは、ダンの温もりがこれからもずっとそばにあることを信じて疑わなかった。
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