玉座の檻

萌於カク

文字の大きさ
60 / 81

悪は滅びぬ2

しおりを挟む
 ダンはアミーユからシーツをはがして、抱き上げた。
 豪華な作りの浴室で、温かな湯につかる。

「ディアナ妃は、チョコレート色の髪だったんだね」
「そういえば、どうしてお前はドレスを着ていたんだ?」
「パメラが俺にチョコレートをぶっかけて、リチャード国王の服を貸すと言って、俺の服を脱がせて、それから、抱きついてきた」

 あれは結局、パメラは、アミーユを懐柔しようとしていたのだろう。
 アミーユが訪問したときには、既にそのつもりで、準備のためにアミーユを待たせていた。髪を整え、香油までつけていた。

 ダンは心底いやそうな顔をした。

「体ももっと洗っておこう。パメラの匂いが少しでもしたらいやだ」

 ダンは洗うと言いながら、アミーユを撫でるその手つきは、いやらしい。

「俺が手に取ったのは、偶然にも、ディアナ妃のドレスだった。俺は、ディアナ妃に導かれたのかな。俺の姿を見て、パメラは錯乱した。ディアナ妃だと勘違いして、罪を告白した。ディアナ妃は罪をかぶって亡くなった。ディアナ妃の無念に導かれたのだとしか思えない」
「おかげであっさり済んでしまった。パメラを白状させるためにいろいろ拷問を用意していたのに」

 それを聞いてアミーユは心底ほっとした。ダンに、あれ以上ひどいことをさせたくない。ダンの心はどこかできっと傷ついているはずだ。

「リチャード国王は、ディアナ妃のことをずっと忘れられなかったんだ。だから、ディアナ妃のドレスを自分の衣裳室に仕舞っていたんだ」
「愚かな国王だ」
「でも、愛情深い国王だ」
「愚かな国王は害悪でしかない」

 ダンの強い口調にアミーユは黙り込む。
 パメラの悪を見抜けなかったゆえに、ダンの母親も死んだ。ダンには国王も同罪なのだ。

「パメラは、リチャード国王の遺体を、刑場の裏に捨てたと言った」
 
 さすがにそれには驚いたのか、アミーユの背後でダンが身じろいだ。やがて、つぶやいた。

「殺した数々の使用人の遺体もそこに投げ捨ててきたんだな」
「うん、多分」
「そのうち弔いに行こう」
「うん、俺も行く」


 浴室から出ると、ダンはもう一度、アミーユにディアナ妃のナイトドレスを着せた。
 黙ったままアミーユを上から下までじっくりと眺めた。

「これは大切にとっておこう。お前によく似合う」

 ダンはアミーユを抱き寄せた。
 ダンは復讐を無事果たし、俺は国王を倒して生き残っている。
 そのかわりパメラという悪が滅んだ。
 すべて済んだのだ。 

 
 そのときのアミーユは、ダンの温もりがこれからもずっとそばにあることを信じて疑わなかった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

淫愛家族

箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。 事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。 二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。 だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

さかなのみるゆめ

ruki
BL
発情期時の事故で子供を産むことが出来なくなったオメガの佐奈はその時のアルファの相手、智明と一緒に暮らすことになった。常に優しくて穏やかな智明のことを好きになってしまった佐奈は、その時初めて智明が自分を好きではないことに気づく。佐奈の身体を傷つけてしまった責任を取るために一緒にいる智明の優しさに佐奈はいつしか苦しみを覚えていく。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

処理中です...