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【完結】玉座の檻
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ダニエル・エレ・アクランドは玉座の傍らに立ち、みなを睥睨する。
「今日よりアーサー国王のもと親政を敷く。統治権は、今後十年をもって、国王から議会へと段階的に移譲する。同じく、今後十年をもって貴族制度を廃止する」
『王の間』、アミーユを玉座に載せたあと、ダニエルは、長いことかけて作り上げていた民主政治への移行のプランを手短に説明していた。
すでにアデレートとその一味の家臣は『王の間』から追い出し、選び抜いた家臣と、そして、議会からの選抜メンバーを新たな長官に指名していた。
そこにいるメンバーは、これからの国作りの土台となる。
玉座には、呆けた顔でじっとダニエルを見あげてくる目がある。もう何があってもダニエルからは目を逸らさないつもりでいるようだ。その腕は、ダニエルの太ももに絡みついて、まるで幼子のようにくっついて離れない。
ダニエルと目が合うと目を潤ませて涙をあふれさせる。
アミーユ、今日は可哀想なことをした。アデレートの悪だくみを見抜けなかったことを許してくれ。
ダニエルは、議会のメンバーとして『王の間』に入ったとき、アミーユの顔を見て、胸がつぶれた。アミーユに何かひどいことが起きたのはひとめでわかった。
家臣に紛れ込んでいる仲間からの報告で、ようやく事情を知った。
盗賊団の首魁の外貌は第一師団で掌握している。アデレートはその外貌に似せた男を用意しただけだった。
アミーユの嘆きから、首魁と通じていることは、誰の目にも明らかになった。アデレートはそれが狙いだった。
アミーユ、お前は国王の名を冠するだけでよかったのに。お前に何もさせるつもりはなかったのに。ただ、俺からアミーユが国王になったって、耳に入れればそれだけでよかったのに。
ダニエルは、山賊ダン、町人ダン、革命家ダン、あるいは他の何者かであるダンと、同一人物だと誰にも知られるつもりはなかったが、赤い絨毯に倒れ込みそうになったアミーユを見て、思わず支えないわけにはいかなかった。
まさか、お前がフィリップ王子の息子だったとは。では、俺たちは従兄弟同士だ。本当かな。お前は誰でも母親にしたがるところがある。
だが、結果はすべてが俺の計画する以上にうまくいった。お前はすんなりと王になった。
これで俺は無血革命への一歩を踏み出すことに成功した。
俺はこの国に生まれた王子としての星を背負っていた。
長かった。随分と苦労したよ。城を抜け出ては、いろんな真似事をやった。そのうち、盗賊になって、英雄を育て、革命の機運を起こし、そして、英雄を国王にした。その過程で、母の仇も討った。
アミーユ、お前は俺の守護天使だ。お前のおかげですべてはうまくいった。
だが、これからは決してお前を表には出すまい。
玉座の檻に閉じ込めておこう。お前を決して何からも傷つけぬように。
「これでアーサー国王からの話は終わりだ」
ダニエルは一人ですべてを話したにもかかわらず、最後の一言で、国王の代弁者を装った。
ダニエルは、アミーユを向いた。アミーユはダニエルと目が合うと、また涙を浮かべて、ダニエルの太ももをギュッと抱いた。
「国王はお疲れだ、臣が奥の間に連れていって差し上げる」
アミーユ、さあ、いこうか。面倒ごとはまだ十年続く。
でも今は、ふたりきりになろうか。
その家臣は国王を軽々と抱え上げた。国王は吸い込まれるようにその家臣の顔を眺めていたが、やがてその首に腕を絡ませて家臣の肩に顔をうずめる。
その姿は居並ぶ家臣らにも何の違和感も与えなかった。ただ、忠実な家臣が国王の体をいたわって抱き上げているだけのこと。
家臣は国王を大切そうに抱いて、王宮の長い廊下を奥へと向かってゆったりと歩いていった。
(おわり)
「今日よりアーサー国王のもと親政を敷く。統治権は、今後十年をもって、国王から議会へと段階的に移譲する。同じく、今後十年をもって貴族制度を廃止する」
『王の間』、アミーユを玉座に載せたあと、ダニエルは、長いことかけて作り上げていた民主政治への移行のプランを手短に説明していた。
すでにアデレートとその一味の家臣は『王の間』から追い出し、選び抜いた家臣と、そして、議会からの選抜メンバーを新たな長官に指名していた。
そこにいるメンバーは、これからの国作りの土台となる。
玉座には、呆けた顔でじっとダニエルを見あげてくる目がある。もう何があってもダニエルからは目を逸らさないつもりでいるようだ。その腕は、ダニエルの太ももに絡みついて、まるで幼子のようにくっついて離れない。
ダニエルと目が合うと目を潤ませて涙をあふれさせる。
アミーユ、今日は可哀想なことをした。アデレートの悪だくみを見抜けなかったことを許してくれ。
ダニエルは、議会のメンバーとして『王の間』に入ったとき、アミーユの顔を見て、胸がつぶれた。アミーユに何かひどいことが起きたのはひとめでわかった。
家臣に紛れ込んでいる仲間からの報告で、ようやく事情を知った。
盗賊団の首魁の外貌は第一師団で掌握している。アデレートはその外貌に似せた男を用意しただけだった。
アミーユの嘆きから、首魁と通じていることは、誰の目にも明らかになった。アデレートはそれが狙いだった。
アミーユ、お前は国王の名を冠するだけでよかったのに。お前に何もさせるつもりはなかったのに。ただ、俺からアミーユが国王になったって、耳に入れればそれだけでよかったのに。
ダニエルは、山賊ダン、町人ダン、革命家ダン、あるいは他の何者かであるダンと、同一人物だと誰にも知られるつもりはなかったが、赤い絨毯に倒れ込みそうになったアミーユを見て、思わず支えないわけにはいかなかった。
まさか、お前がフィリップ王子の息子だったとは。では、俺たちは従兄弟同士だ。本当かな。お前は誰でも母親にしたがるところがある。
だが、結果はすべてが俺の計画する以上にうまくいった。お前はすんなりと王になった。
これで俺は無血革命への一歩を踏み出すことに成功した。
俺はこの国に生まれた王子としての星を背負っていた。
長かった。随分と苦労したよ。城を抜け出ては、いろんな真似事をやった。そのうち、盗賊になって、英雄を育て、革命の機運を起こし、そして、英雄を国王にした。その過程で、母の仇も討った。
アミーユ、お前は俺の守護天使だ。お前のおかげですべてはうまくいった。
だが、これからは決してお前を表には出すまい。
玉座の檻に閉じ込めておこう。お前を決して何からも傷つけぬように。
「これでアーサー国王からの話は終わりだ」
ダニエルは一人ですべてを話したにもかかわらず、最後の一言で、国王の代弁者を装った。
ダニエルは、アミーユを向いた。アミーユはダニエルと目が合うと、また涙を浮かべて、ダニエルの太ももをギュッと抱いた。
「国王はお疲れだ、臣が奥の間に連れていって差し上げる」
アミーユ、さあ、いこうか。面倒ごとはまだ十年続く。
でも今は、ふたりきりになろうか。
その家臣は国王を軽々と抱え上げた。国王は吸い込まれるようにその家臣の顔を眺めていたが、やがてその首に腕を絡ませて家臣の肩に顔をうずめる。
その姿は居並ぶ家臣らにも何の違和感も与えなかった。ただ、忠実な家臣が国王の体をいたわって抱き上げているだけのこと。
家臣は国王を大切そうに抱いて、王宮の長い廊下を奥へと向かってゆったりと歩いていった。
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