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ダンとの別れ3
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悪い貴族をやっつけるんじゃなかったのか?
その夢は正義だから果たさなければならないものではなかったのか。
誰かの犠牲の上に成り立つ正義などどこにもない!
「ダン、見損なったぞ、悪いことをしていない人を犠牲にするのか」
「ダニエル国王は弱い。弱いのは罪だ」
「でも、それはダニエル国王のせいじゃない」
「彼はそういう星に生まれた」
「他人の星を勝手に決めるな」
「いいか、アミーユ」
ダンは真剣な顔をアミーユに向けた。まっすぐに眉が横に伸びたその顔は、男らしく端正だ。飛び付きたくなるほどの男っぷりだ。
ああ、ダンはこんなときでも俺をたぶらかす。
「アミーユ、愚かな為政者は害悪だ」
ダンはリチャード国王に向けた言葉を用いた。パメラの悪を見抜けなかったリチャード国王。
だが、ダニエル国王を愚かと決めつけるのはあまりにも酷だ。
「ダニエル国王は、幼くして庇護者をなくしたんだ。母親は死に、父親は新たな妃をめとった。自分を守るためにアデレートを頼って何が悪い」
「幼いことなど理由にならない」
ダンは容赦ない。アミーユは論点を変えた。
「では、ダンが国王になればいい。お前のほうがよほど向いてる」
「お前は英雄だ。お前なら、民衆も納得する。民衆を止められるのはお前しかいない」
「でも、民衆を煽ったのはお前らなんだろう? 革命を起こすために民衆を煽ったんじゃないのか」
「民衆の蒙を啓いただけだ。だが、民衆はまだ自分で立つことを覚えたばかりだ。秩序を保てなくなったときが最も恐ろしい。外敵だって隙を見て攻めてくる。君主制のもとで、民主制を育てる」
ダンは目を輝かせている。いつかのように夢を語る。
「俺が果たすのは無血革命だ。革命は長い期間をかけて、暴力ではなく理解を深め合うことで行う。お前がいればこそ、それができる」
アミーユは虚しくダンを眺めながら、ダンをまたもや見失っていた。
こいつは何者なのだ?
どの視点でその思考にたどり着いたのだ?
もしかしたら、こいつが革命の指導者なのか?
ああそうかもしれない。革命家は大抵大馬鹿者だ!
「俺はいやだ! 俺はもう王都になんかいたくない!」
「アミーユ、お前は王になれ」
お前は伯爵になれ。
出会った夜にそう告げた。
ダンはその夜の続きを歩いている。ずっと一本の道を歩いている。
「ダン、俺にはお前以外はどうだっていい。お前は俺よりも民衆のほうが大事なのか」
アミーユはついに惨めにもそう訊いた。自分の価値を測るような、みっともないことを口にした。
「俺は自分を優先するわけにはいかない」
アミーユはそう言われたことでさらに惨めになった。俺はダンにとって何ら優先するものではない。俺を夢のために利用しているだけだ。
「ああ、そうか………」
アミーユは脱力し、そして再びその腕から逃れようともがく。
いやっ、もういやだ、はなせ!
「俺はお前を愛している。けれども、俺には、この国も愛おしくてたまらない」
腕の中から逃げ出そうとするアミーユをダンは逃さぬように強く抱きしめる。
「アミーユ、王都の街が俺を育ててくれた。飢えたときには必ず誰かが助けてくれた。パン屋の親父はパンを投げてくれた。浮浪者は寝床を譲ってくれた。自分たちも余裕がないのに、それでも自分の分を俺に分けてくれたんだ」
「俺ならすべてをお前に与える。俺のすべてを」
ダンはアミーユの髪に頭をうずめて首を横に振る。
「俺には多くの責任がある」
「始めてしまった責任か、仲間への責任か」
「それもある。けれども生まれ持った責任だ。俺はそういう星に生まれついている」
また星か!
お前は占星術師か!
ああ、星!
そうだった。俺たちはそういう星に生まれついている………!
そういう物語の星のもとに。向かう先は破滅だ。
ダン、いやだ、俺はお前を死なせたくない。
アミーユは涙をぼろぼろとこぼし始めた。
「アミーユ、何が不安なんだ?」
ダンは優しく尋ねてくる。
「お前が死んだら俺は生きていけない」
アミーユはダンにしがみついた。ダンは抱きしめ返す。
「大丈夫だ、俺は死なない」
「お前が死んだら俺も死ぬ」
「それはだめだ。お前は生きろ」
「ダン、絶対に死ぬな」
「俺は、死なない。ずっとアミーユと生きていく」
「うん…………」
アミーユはうなずいた。ダンの声は頼もしく、その胸は温かい。けれども、アミーユの心の中には不安しかなかった。
ダン、俺はお前を裏切る―――。
その夢は正義だから果たさなければならないものではなかったのか。
誰かの犠牲の上に成り立つ正義などどこにもない!
「ダン、見損なったぞ、悪いことをしていない人を犠牲にするのか」
「ダニエル国王は弱い。弱いのは罪だ」
「でも、それはダニエル国王のせいじゃない」
「彼はそういう星に生まれた」
「他人の星を勝手に決めるな」
「いいか、アミーユ」
ダンは真剣な顔をアミーユに向けた。まっすぐに眉が横に伸びたその顔は、男らしく端正だ。飛び付きたくなるほどの男っぷりだ。
ああ、ダンはこんなときでも俺をたぶらかす。
「アミーユ、愚かな為政者は害悪だ」
ダンはリチャード国王に向けた言葉を用いた。パメラの悪を見抜けなかったリチャード国王。
だが、ダニエル国王を愚かと決めつけるのはあまりにも酷だ。
「ダニエル国王は、幼くして庇護者をなくしたんだ。母親は死に、父親は新たな妃をめとった。自分を守るためにアデレートを頼って何が悪い」
「幼いことなど理由にならない」
ダンは容赦ない。アミーユは論点を変えた。
「では、ダンが国王になればいい。お前のほうがよほど向いてる」
「お前は英雄だ。お前なら、民衆も納得する。民衆を止められるのはお前しかいない」
「でも、民衆を煽ったのはお前らなんだろう? 革命を起こすために民衆を煽ったんじゃないのか」
「民衆の蒙を啓いただけだ。だが、民衆はまだ自分で立つことを覚えたばかりだ。秩序を保てなくなったときが最も恐ろしい。外敵だって隙を見て攻めてくる。君主制のもとで、民主制を育てる」
ダンは目を輝かせている。いつかのように夢を語る。
「俺が果たすのは無血革命だ。革命は長い期間をかけて、暴力ではなく理解を深め合うことで行う。お前がいればこそ、それができる」
アミーユは虚しくダンを眺めながら、ダンをまたもや見失っていた。
こいつは何者なのだ?
どの視点でその思考にたどり着いたのだ?
もしかしたら、こいつが革命の指導者なのか?
ああそうかもしれない。革命家は大抵大馬鹿者だ!
「俺はいやだ! 俺はもう王都になんかいたくない!」
「アミーユ、お前は王になれ」
お前は伯爵になれ。
出会った夜にそう告げた。
ダンはその夜の続きを歩いている。ずっと一本の道を歩いている。
「ダン、俺にはお前以外はどうだっていい。お前は俺よりも民衆のほうが大事なのか」
アミーユはついに惨めにもそう訊いた。自分の価値を測るような、みっともないことを口にした。
「俺は自分を優先するわけにはいかない」
アミーユはそう言われたことでさらに惨めになった。俺はダンにとって何ら優先するものではない。俺を夢のために利用しているだけだ。
「ああ、そうか………」
アミーユは脱力し、そして再びその腕から逃れようともがく。
いやっ、もういやだ、はなせ!
「俺はお前を愛している。けれども、俺には、この国も愛おしくてたまらない」
腕の中から逃げ出そうとするアミーユをダンは逃さぬように強く抱きしめる。
「アミーユ、王都の街が俺を育ててくれた。飢えたときには必ず誰かが助けてくれた。パン屋の親父はパンを投げてくれた。浮浪者は寝床を譲ってくれた。自分たちも余裕がないのに、それでも自分の分を俺に分けてくれたんだ」
「俺ならすべてをお前に与える。俺のすべてを」
ダンはアミーユの髪に頭をうずめて首を横に振る。
「俺には多くの責任がある」
「始めてしまった責任か、仲間への責任か」
「それもある。けれども生まれ持った責任だ。俺はそういう星に生まれついている」
また星か!
お前は占星術師か!
ああ、星!
そうだった。俺たちはそういう星に生まれついている………!
そういう物語の星のもとに。向かう先は破滅だ。
ダン、いやだ、俺はお前を死なせたくない。
アミーユは涙をぼろぼろとこぼし始めた。
「アミーユ、何が不安なんだ?」
ダンは優しく尋ねてくる。
「お前が死んだら俺は生きていけない」
アミーユはダンにしがみついた。ダンは抱きしめ返す。
「大丈夫だ、俺は死なない」
「お前が死んだら俺も死ぬ」
「それはだめだ。お前は生きろ」
「ダン、絶対に死ぬな」
「俺は、死なない。ずっとアミーユと生きていく」
「うん…………」
アミーユはうなずいた。ダンの声は頼もしく、その胸は温かい。けれども、アミーユの心の中には不安しかなかった。
ダン、俺はお前を裏切る―――。
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