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三手目
礼にはじまり
しおりを挟む三林とたもるの対局が始まった。
将棋を指す上で最も大切なこと、
それは礼儀。
「将棋は相手がいてくれなければ成り立たないゲーム。だから相手を尊重することが大切だよ。全ての将棋はよろしくお願いしますで始まるんだ。」たもるの幼少期は、この言葉と共にあった。
「よろしくお願い致します。」
たもるの先手番。
たもるは父と対局する時同様、
初手▲7六歩といわゆる角道をあける。
「おっ、それを知ってるなら10級はあげてもいいぞ!」
笑いながら△8四歩と三林は飛車先の歩をつく。
たもるは父以外の将棋指しと初めての対局のため驚くことが多く、若干身体が震えている。
まず、周りに観戦している人がいるだけでも大分違う。
(緊張するなぁ。てか三林さん、駒、綺麗に並べないのかな。せめて真ん中に真っ直ぐ置いてほしいなあ。意地悪してるのかな?)
たもるは四間飛車戦法しか知らないので、▲6ハ飛車と飛車を横にスライドさせる。
「おっ、振り飛車党か!そこから美濃囲いに囲うのか?それとも穴熊か?定跡知ってるの?」三林が周りに何か言って欲しそうに饒舌になる。
「三林さん流石です、俺振り飛車党なんて全然何のことか分からないのに、詳しいですねー!」ギャラリーの一人が返す。
「定跡ってなんだろ。。」
たもるの呟きに、
三林の細い目が丸くなる。
「おいおい、定跡も知らないから勝ったことが無いんだよ、参ったね最近の若者は」三林がにやけながらも尖った口でたもるに言葉を投げる。
(なんか怖いなぁ。。でも言い返して対局辞められちゃったら駄目だし、失礼の無いようにしなければ。。)
冷静に。冷静に。
自分に言い聞かせる。
手が数手進んだところで、
三林、動く。△8四飛車
「ほーれれれー!これはもう、
たもる君の方が悪いねー!」
「へぇーそうなんですかー!
もう三林さんの勝ちですかー!
いやぁやっぱり強いですね!」
ギャラリーが盛り上がっている。
「さぁたもる君どうするの?
投了してもいいんだよ?」
三林がたもるに被さるかのように
言葉を投げる。
「あのぉ、、」たもるが口を開く。
「ん?」
「あの、対局中なので、そんなに話しかけないでもらえますか?」
「あん?」
「いえ、あの、盤に集中したいだけなんです。ごめんなさい。」
「なーんか、やりずらいなぁ。」
「す、すみません。本当にすみません。いやこんなに大勢の方に見られる対局、初めてで緊張してしまったんです、すみません。」
「おーそうかーなら早く終わらそうや。指して指して。」
「すみません!」
たもるの頬に汗がつたう。
身体中から汗がふきだす。
だが、たもるの眉がゆがみ、
眼が、鋭く盤を睨み始める。
(これで、負けてるわけない!
勝負は始まったばかりだ!)
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