8 / 264
5年生 冬休み
自己紹介
しおりを挟む
急いで、ブルーの欠片で出来た心臓を、女の子の傷口に押し込む。
青く透き通った心臓に血液が満たされ、赤く脈打ち始めた。
コブシ大の穴はみるみる塞がり、顔色が良くなっていく。
「……ナニ……を……シた……バ、カナ……?!」
悪魔はもう動けない。信じられない光景を見せつけられ、ただ驚くだけだ。
「ブルー。成功したんだな?」
『うん。もう大丈夫。造血もうまく出来てるし、しばらくすれば血流が無くても直接欠片から体中にエネルギーが届くようになるよ』
女の子は助かった。良かった。本当に良かった。
……ただ、やはり気になるのは。
「で、この子、どうなるんだ?」
ブルーの言っていた〝僕と同じ様な特性を得てしまう〟とは、どういう事だろう。
『この融合の感じだと、この少女が得るのは〝不老〟と〝超回復〟だ。あと、そこそこの〝耐久性〟かな』
「劣化版、僕?」
『そうだね。キミが今後得るであろう様々な特殊能力も、特定は出来ないが5~6%ぐらいは取得すると思う』
やっぱりスゴいじゃん。ブルーの欠片、拾っといて良かった。
『……あ、それから、私を認識出来るようになるだろう』
ブルーが見えるようになるのか?
それはちょっと微妙だな。右手とか、自分で見ててもわりと気持ち悪いし。
『……気持ち悪くないよ? むしろキレイだし、カッコイイよ?』
ブルーの自尊心を傷つけてしまったようだ。確かにもう少し見慣れればカッコイイかもね。
『キレイだしね?』
「はいはい。キレイだよ」
どんだけ自分好きなんだよ。僕にキレイと言われて、ブルーは心なしか満足げだ。
『……ただ。不老は辛いぞ、タツヤ』
と、急に暗い口調で呟くブルー。
そういう話はよく聞く。
例えば、周囲の人たちが、みんな年老いて逝ってしまう悲しみに耐えられなくなるとか。
……もしかしたら僕は、この子にとんでもない事をしてしまったのかもしれない。
まぁ僕は、キツくなってから考えることにしようと思っているんだけど。
「私……どうなったの?」
女の子が目を覚ました。服が破れているのに気付き、慌てて両手で隠す。
そういえば胸部だった。僕も慌てて目をそらす。
「よ、良かった。痛い所は無い?」
「う、うん。大丈夫」
それにしても……
今まで気付かなかったが、とてもゆったりした服装だ。
というか、上から下までブカブカじゃないか。まるで大人の服を着たような……
そして、かなりの美少女だ。
まあ、それに関しては初めて見た時に気付いていたが。
肩まである長い髪にくりっと二重の瞳。大人になったら、絶対、美人になるぞ。
「……あ、そういえば〝不老〟って、まさか僕たちずっとこの歳のままなのか?」
永遠に小学生? それはちょっと困るな。
『心配は要らない。肉体が完成するまでは普通に成長するよ。そこから老いなくなる。人間で言うと、20歳~24歳くらいかな』
良かった。さすがにこの体のままだと色々と問題がある。
……この子が美人になるのも見てみたいし、ね。
「私、確か……奴に攻撃されて……」
女の子は、服に空いた穴を確認してこちらを見た。
「あなた、これ、どうやったの? こんな強力な回復魔法、見た事無い」
魔法……やっぱりそうか。さっきの悪魔も〝結界〟とか〝魔道士〟とか言ってたし。
「それは魔法じゃなくてね。えっと……何だっけ、ブルー?」
『自然の力、かな?』
「ふむ。やっぱ凄いな、自然の力って」
不思議そうに、こちらを見ている女の子。
そして思い出したように辺りを見回す。
「……奴はどこ?!」
部屋の端に転がっている悪魔の存在に気付いて、立ち上がろうとする。
「多分もう動けないと思うから大丈夫」
「ダメ! 奴は油断ならない!」
そう言うと女の子は小さい声で、聞いたことのない言葉を喋り始めた。
「HuLex UmThel FiR iL」
突然、女の子の頭上に小さい火の玉が現れ、次の瞬間、悪魔に命中した。
か細い断末魔と共に悪魔は炎に包まれ、やがて灰になった。
ペタンと座り込む女の子。やはりまだ、体力は完全に回復していないみたいだ。
「すごい。火が出た!!」
『不思議な現象だ。何か特殊な方法で、自然界のエネルギーを操作しているのかな』
かなり興味ありげなブルー。
「魔法の事、知らなかったのかブルー」
『私も〝全知全能〟というわけではない。この世には、私の意識が及ばない事象など、一杯あるんだよ』
「ふうん。そうなのか」
『そうだね。まあ地球は眠らないけど〝意識が向かない〟時とか場所はある』
「あ……貴方! その手は何なの?! 何で手と話してるの?!」
女の子が、僕の顔と右手を交互に見て驚く。
ブルーの声にも、透けて見える右手にも気付いているようだ。
『やはり私を認識できるようになったね』
「自己紹介しようか、ブルー」
僕は右の掌を女の子に見せる。
『私はブルー。地球の意思であり、地球そのものだ』
「僕は、内海達也。地球の寿命を延ばすボランティアをしてる」
『アハハ。タツヤ、それは面白いね』
女の子は、少しだけ不思議そうな表情で、可愛らしく首を傾げている。
……もっとキチンと説明しないと、分かる訳無いよね。
青く透き通った心臓に血液が満たされ、赤く脈打ち始めた。
コブシ大の穴はみるみる塞がり、顔色が良くなっていく。
「……ナニ……を……シた……バ、カナ……?!」
悪魔はもう動けない。信じられない光景を見せつけられ、ただ驚くだけだ。
「ブルー。成功したんだな?」
『うん。もう大丈夫。造血もうまく出来てるし、しばらくすれば血流が無くても直接欠片から体中にエネルギーが届くようになるよ』
女の子は助かった。良かった。本当に良かった。
……ただ、やはり気になるのは。
「で、この子、どうなるんだ?」
ブルーの言っていた〝僕と同じ様な特性を得てしまう〟とは、どういう事だろう。
『この融合の感じだと、この少女が得るのは〝不老〟と〝超回復〟だ。あと、そこそこの〝耐久性〟かな』
「劣化版、僕?」
『そうだね。キミが今後得るであろう様々な特殊能力も、特定は出来ないが5~6%ぐらいは取得すると思う』
やっぱりスゴいじゃん。ブルーの欠片、拾っといて良かった。
『……あ、それから、私を認識出来るようになるだろう』
ブルーが見えるようになるのか?
それはちょっと微妙だな。右手とか、自分で見ててもわりと気持ち悪いし。
『……気持ち悪くないよ? むしろキレイだし、カッコイイよ?』
ブルーの自尊心を傷つけてしまったようだ。確かにもう少し見慣れればカッコイイかもね。
『キレイだしね?』
「はいはい。キレイだよ」
どんだけ自分好きなんだよ。僕にキレイと言われて、ブルーは心なしか満足げだ。
『……ただ。不老は辛いぞ、タツヤ』
と、急に暗い口調で呟くブルー。
そういう話はよく聞く。
例えば、周囲の人たちが、みんな年老いて逝ってしまう悲しみに耐えられなくなるとか。
……もしかしたら僕は、この子にとんでもない事をしてしまったのかもしれない。
まぁ僕は、キツくなってから考えることにしようと思っているんだけど。
「私……どうなったの?」
女の子が目を覚ました。服が破れているのに気付き、慌てて両手で隠す。
そういえば胸部だった。僕も慌てて目をそらす。
「よ、良かった。痛い所は無い?」
「う、うん。大丈夫」
それにしても……
今まで気付かなかったが、とてもゆったりした服装だ。
というか、上から下までブカブカじゃないか。まるで大人の服を着たような……
そして、かなりの美少女だ。
まあ、それに関しては初めて見た時に気付いていたが。
肩まである長い髪にくりっと二重の瞳。大人になったら、絶対、美人になるぞ。
「……あ、そういえば〝不老〟って、まさか僕たちずっとこの歳のままなのか?」
永遠に小学生? それはちょっと困るな。
『心配は要らない。肉体が完成するまでは普通に成長するよ。そこから老いなくなる。人間で言うと、20歳~24歳くらいかな』
良かった。さすがにこの体のままだと色々と問題がある。
……この子が美人になるのも見てみたいし、ね。
「私、確か……奴に攻撃されて……」
女の子は、服に空いた穴を確認してこちらを見た。
「あなた、これ、どうやったの? こんな強力な回復魔法、見た事無い」
魔法……やっぱりそうか。さっきの悪魔も〝結界〟とか〝魔道士〟とか言ってたし。
「それは魔法じゃなくてね。えっと……何だっけ、ブルー?」
『自然の力、かな?』
「ふむ。やっぱ凄いな、自然の力って」
不思議そうに、こちらを見ている女の子。
そして思い出したように辺りを見回す。
「……奴はどこ?!」
部屋の端に転がっている悪魔の存在に気付いて、立ち上がろうとする。
「多分もう動けないと思うから大丈夫」
「ダメ! 奴は油断ならない!」
そう言うと女の子は小さい声で、聞いたことのない言葉を喋り始めた。
「HuLex UmThel FiR iL」
突然、女の子の頭上に小さい火の玉が現れ、次の瞬間、悪魔に命中した。
か細い断末魔と共に悪魔は炎に包まれ、やがて灰になった。
ペタンと座り込む女の子。やはりまだ、体力は完全に回復していないみたいだ。
「すごい。火が出た!!」
『不思議な現象だ。何か特殊な方法で、自然界のエネルギーを操作しているのかな』
かなり興味ありげなブルー。
「魔法の事、知らなかったのかブルー」
『私も〝全知全能〟というわけではない。この世には、私の意識が及ばない事象など、一杯あるんだよ』
「ふうん。そうなのか」
『そうだね。まあ地球は眠らないけど〝意識が向かない〟時とか場所はある』
「あ……貴方! その手は何なの?! 何で手と話してるの?!」
女の子が、僕の顔と右手を交互に見て驚く。
ブルーの声にも、透けて見える右手にも気付いているようだ。
『やはり私を認識できるようになったね』
「自己紹介しようか、ブルー」
僕は右の掌を女の子に見せる。
『私はブルー。地球の意思であり、地球そのものだ』
「僕は、内海達也。地球の寿命を延ばすボランティアをしてる」
『アハハ。タツヤ、それは面白いね』
女の子は、少しだけ不思議そうな表情で、可愛らしく首を傾げている。
……もっとキチンと説明しないと、分かる訳無いよね。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました
髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」
気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。
しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。
「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。
だが……一人きりになったとき、俺は気づく。
唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。
出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。
雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。
これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。
裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか――
運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。
毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります!
期間限定で10時と17時と21時も投稿予定
※表紙のイラストはAIによるイメージです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
