プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー

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5年生 冬休み

謝罪

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 ポケットから、もうひとつのブルーの欠片かけらを取り出す。
 それを、右の手の平の〝透明な部分〟に当てて、彩歌あやかに見せた。

「こんな感じで刺さっていたんだ」

 手を裏返し、甲にも当てる。
 彩歌の心臓になったのが〝手の平側〟なのか〝手の甲側〟なのかは分からないけど、もうひとつの欠片かけらは、どちらの面にもピッタリと合った。

『タツヤとの〝同化〟には不要だったので、切り離した部分だ』

 彩歌は、ブルーの説明を聞きながらも、視線は僕の右手に釘付けだ。
 僕の右手を握り、観察するようにジロジロと見ている。

「これがブルー? 地球の意思?」

 ブルーから発せられる淡い光が、彩歌の顔をふんわりと照らす。

「そう。僕は地球を守る〝導き手〟として選ばれたんだ」

「地球を守る?」

 彩歌は、まだ手を離してくれない。
 青く透き通った部分と手の境目を、指でなぞっている。

『そう。私、つまり地球は、近い将来、壊れて消える』

 ブルーの言葉に、彩歌が驚いて顔を上げた。

「地球が壊れる?! そんな……本当に?」

 彩歌は、相当驚いた様子で僕を見ている。
 まあ、信じられないのも無理は無い。

「僕は15年後の未来で、その前兆を見たんだ。そして地球が壊れる前に、ブルーの力で、この時代に戻って来た」

『先程の悪魔が使ったという魔法とは違って、身体的な能力は巻き戻さずにね』

 僕の言葉の後、ブルーの得意げな補足が、すかさず入る。
 そうそう。僕の若返りは〝弱体無し〟どころか、不老不死などの超豪華おまけ付きだ。

「未来から……戻って……?」

「そう。僕はこう見えて、元26歳。つまり、君と同い年だ」

 彩歌の手は、あまりのショックからか、少し震えている。
 無理もない。世界の終りが迫っていると告げられたんだから。
 ……彼女を安心させてあげなければ。

「大丈夫。僕が絶対に地球を守るから!」

 僕は、彩歌の手を握り返して、自信たっぷりに宣言した。
 これで少しは安心して貰えたかな?

「あ! う……内海うつみ……さん?」

 慌てた様子で、彩歌が僕の手をパッと離す。
 なぜだろう。顔が真っ赤だ。

「達也でいいよ。どうしたの?」

「あの……わ、私、その。男の人と話したりとか、手を、その……」

 彩歌は、赤い顔のままうつむいて、小声でボソボソとつぶやいている。
 チラッと僕の方を見て、目が合った途端、もっと赤くなって下を向いてしまう。

「えっと、大丈夫?」

「あ、あの! ご、ごめんなさい! 私、た、達也君……じゃない! たた、た、達也、さん……の事、その、こ、子どもだと思ってたから……」

 ……詳しく話を聞いて、ようやく分かった。
 どうやら、彩歌は〝同年代の男性〟と接する機会がなかったようだ。
 子どもを相手にしているつもりが〝ある意味〟大人の男性だとわかって、赤面しているらしい。
 ヤバい。マジかわいい。

「落ち着いた?」

「うん。もう大丈夫」

 それは良かった。
 さて、と。そろそろ本題を話さなければ。
 ……話して、謝らなければ。

「それじゃ、ちょっと良いかな」

 声のトーンを落として、彩歌に視線を合わせる。

「僕は……君に、とんでもない事をしてしまったんだ」

『必然的に、私も共犯となる』

 ブルーも、謝罪に付き合ってくれるようだ。

「……え? どうしたの?」

 首をかしげる彩歌に、僕は全てを話し始めた。

「僕は地球と同化して、死なない体になった」

『そう。タツヤは、地球が壊れる程のダメージを受けない限り、死なないし、歳も取らない』

 僕とブルーの説明に、彩歌が目を見開く。

「不老……不死……?!」

『正確には、星が死ぬまでタツヤも死ねない』

 ブルーの言い方が正しい。死ねないのだ。

「そして、君はさっき、僕の……僕の油断から、致命的な怪我を……負った」

 心苦しさのあまり、喉の奥に詰まって出て来ない言葉を、無理やり押し出す。

「……僕のせいだ」

 驚いた表情で、首を横に振る彩歌。

「いいえ、違う! 私の怪我は、あの悪魔の仕業……」

 僕はその言葉をさえぎって続ける。

「僕がちゃんと君を守れていれば、君の怪我はブルーの欠片かけら触媒しょくばいとする方法でやせたんだ。でも、その方法ではどうする事も出来ない大怪我を負わせてしまった」

 左手のブルーの欠片かけらが、パキパキと音を立てて心臓の形に変わる。
 ……ありがとう。分かりやすいよ、ブルー。

「君の心臓は、悪魔に破壊されてしまった。君を救うには、この方法しかなかったんだ」

 僕は、ブルーの作ってくれた心臓を、自分の胸に当てて見せた。

「……まさか、今の私の心臓って」

『そうだ。私の
欠片かけらを、心臓にして置き換えた』
 パキパキと、欠片かけらを元の形に戻しつつ、僕の代わりにブルーが告げた。

「本当にごめん……」

 僕は深く頭を下げた。

「僕がブルーからもらった性質を、君も同じ様に受け継いだ。それが君にとって、幸せなのか不幸なのか、僕にはわからない」

 瞳を潤ませて、呆然と話を聞いている彩歌に、ブルーの声が少し無機質に告げる。



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