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5年生 冬休み
握手
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「それでも、栗っちには全てを話そうと思う」
ショックだった。何がって、地球の破壊を防ぐことイコール、人間を守る事だと僕が勘違いしていた事が。
確かに、地球の破壊が人間の手によるものの可能性はゼロとは言えない。
そして恐ろしい事に、人類がこの星を壊すのなら、僕の手で阻止しなくてはならないという覚悟も、不思議と湧いてきてしまう。でも……
「僕は、人間は〝悪〟じゃないと信じたいよ、ブルー」
人類が悪なら、僕の力で善に変えてやる! 人類が誤った選択をするなら、僕の力で正してやるさ。
『タツヤ、キミの気持ちはわかった。もちろん、私もヒトを信じたい。知っていると思うが、私も人間が大好きだよ』
そうだよな。ブルーは人に優しいと思う。
『私が言いたかったのは、カズヤが、キミとは違った使命と観点で、歴史を操作する存在だという事だけだよ。そして何があろうと、キミの好きにしてくれて構わない』
「……ありがとう、ブルー」
『私はキミを信じている。だからキミが信じるというなら、カズヤも人間も地球の味方だと信じよう』
大丈夫。中には悪人も居るだろうけど……何かあったら責任を持って僕が相手してやるさ。気長にね。
「しかしアレだな、栗っちが右手も声も認識出来ないなら、お前の事を説明しても、ただの妄想っぽくなるよな」
ちょっと早めの厨二病だ。我が右手に宿りし大いなる力よ! って感じの。
『それなら、カズヤに認識してもらうかい?』
ああ、なるほどね、じゃ、そうするか。
……って、どうやって?!
『簡単だ。覚醒していなくても、カズヤは普通の人間では無いのだから』
「マジか。そんな事が出来るのか?」
『実際には私に触るだけだけでいい。私の存在を意識できるようになるだろう』
なんだ、ほんとに簡単だな。というか〝救世主〟が、すごい存在なのか。
「それじゃ、やってみよう」
栗っちにしてみれば、かなり長い時間、僕が沈黙していたように見えただろう。僕は立ち上がって、目の前に浮いているジュースで出来た球体を指差した。
「僕からも話があるんだ。その前に、ちょっとこれ、どうにかしようか」
僕は台所からグラスを2つ持ってきた。栗っちによって、空中のジュースが均等に注がれる。
「さて、まずはこれを見て」
僕は右手を、栗っちに差し出す。不思議そうに見つめる栗っち。やっぱりまだ見えてないか。
「何も変わった所、ないよね?」
「うん。普通に手だね。どうかしたの? たっちゃん」
そりゃそうなるよな。よし、やるぞ!
「握手をしよう。それから、全部説明する。右手で握手は友情の証だ。いいだろ?」
「え? 握手って……急にどうしたの? もちろん良いけど」
僕が差し出した手を、栗っちが握る。違和感に気付いて、手を解こうとするが、僕は離さない。大人の握力を舐めてはいけない。
「いい? たぶん、次に僕の手を見たら、今までの僕とは違っている筈だ。栗っちに聞こえなかった声も聞こえるようになっている。でも、何があっても、僕と栗栖和也は永遠に友達だ」
僕の、いつになく真剣な表情と言葉で、栗っちも、何かを悟ってくれたのだろう。
「うん。いつまでも友達だよ」
僕は、そっと握手を解く。そのまま中指を上にして掌を見せる。
「何か見える?」
「たっちゃん、それ、もしかして僕が予知で見た、手に刺さってたやつ?」
ああ、そうか。もう既に見ていたんだったな。それなら話が早い。
『そうだ、初めましてカズヤ。私はブルー。地球の意志であり、地球とタツヤを繋ぐ端末だよ』
少し驚いたような顔をした栗っち。ブルーの声も、認識できているようだ。
「えへへ。初めまして! 栗栖和也だよ。もしかして、洞窟で穴に落ちた時から、ブルーさんは、たっちゃんと一緒に居た?」
『うん。私とタツヤで会話もしていたけど、あの時のカズヤには、認識できなかっただろうね』
「僕が〝意識〟を向けてなかったんだよね!」
驚いた。ちゃんとブルーの仕組みを理解している様子だ。さすがは救世主。
「さて、ブルー。説明しなきゃならないんだけど、どこから始めようか」
『そうだね。まずは、地球の話をしよう』
僕とブルーは、地球の破壊が近付いていること、僕が15年後からそれを阻止するために来たこと、僕が死なないこと等を話した。
「ごめんね、たっちゃん。僕が予知したせいで、15年後に地球が……」
「いやいや、栗っちは悪くないじゃんか。僕を助けようとしてくれたんだし」
『カズヤ、巻き戻る前の世界では、キミがタツヤを止めた事によって、キミの能力は失われたんだ』
「能力?」
『カズヤ、キミは、救世主と呼ばれる存在だ。いずれ、天啓を受けて、覚醒する』
「栗っちは、人類を救う存在なんだって」
『そう。歴史上の、聖人とか、預言者とか言われてる者たちは、全て、〝救世主〟という存在だった』
「でもでも、それって、たっちゃんの事じゃないの? 地球が壊れるのを止めるのは、たっちゃんなんでしょ?」
「ううん。僕は、地球を救うのであって、人類を救うんじゃないんだ」
「……あ、そっか! 人間が原因で地球が壊れるかもしれない時、人間の味方をするのが僕で、地球の味方をするのが、たっちゃんなんだね」
すごいな、栗っち。もう悟ってしまった。
「そう。だから、僕達は、もしかしたら、敵同士になるかもしれないんだ」
「大丈夫。僕が人類を、たっちゃんが地球を、正しく導けば、何もかも上手くいくよね!」
『そうだ、カズヤ、どうか地球とともに、人間たちが平和でいられるように、頑張って欲しい』
「僕も頑張るよ。絶対に地球は壊させないから! それに、手伝えることがあれば、もちろん協力する」
「うん。僕も、たっちゃんを手伝いたいな。一緒に世界を救おうよ!」
やはり、話して良かった。栗っちなら、きっと人間を間違った方向に導くことは無いだろう。
ショックだった。何がって、地球の破壊を防ぐことイコール、人間を守る事だと僕が勘違いしていた事が。
確かに、地球の破壊が人間の手によるものの可能性はゼロとは言えない。
そして恐ろしい事に、人類がこの星を壊すのなら、僕の手で阻止しなくてはならないという覚悟も、不思議と湧いてきてしまう。でも……
「僕は、人間は〝悪〟じゃないと信じたいよ、ブルー」
人類が悪なら、僕の力で善に変えてやる! 人類が誤った選択をするなら、僕の力で正してやるさ。
『タツヤ、キミの気持ちはわかった。もちろん、私もヒトを信じたい。知っていると思うが、私も人間が大好きだよ』
そうだよな。ブルーは人に優しいと思う。
『私が言いたかったのは、カズヤが、キミとは違った使命と観点で、歴史を操作する存在だという事だけだよ。そして何があろうと、キミの好きにしてくれて構わない』
「……ありがとう、ブルー」
『私はキミを信じている。だからキミが信じるというなら、カズヤも人間も地球の味方だと信じよう』
大丈夫。中には悪人も居るだろうけど……何かあったら責任を持って僕が相手してやるさ。気長にね。
「しかしアレだな、栗っちが右手も声も認識出来ないなら、お前の事を説明しても、ただの妄想っぽくなるよな」
ちょっと早めの厨二病だ。我が右手に宿りし大いなる力よ! って感じの。
『それなら、カズヤに認識してもらうかい?』
ああ、なるほどね、じゃ、そうするか。
……って、どうやって?!
『簡単だ。覚醒していなくても、カズヤは普通の人間では無いのだから』
「マジか。そんな事が出来るのか?」
『実際には私に触るだけだけでいい。私の存在を意識できるようになるだろう』
なんだ、ほんとに簡単だな。というか〝救世主〟が、すごい存在なのか。
「それじゃ、やってみよう」
栗っちにしてみれば、かなり長い時間、僕が沈黙していたように見えただろう。僕は立ち上がって、目の前に浮いているジュースで出来た球体を指差した。
「僕からも話があるんだ。その前に、ちょっとこれ、どうにかしようか」
僕は台所からグラスを2つ持ってきた。栗っちによって、空中のジュースが均等に注がれる。
「さて、まずはこれを見て」
僕は右手を、栗っちに差し出す。不思議そうに見つめる栗っち。やっぱりまだ見えてないか。
「何も変わった所、ないよね?」
「うん。普通に手だね。どうかしたの? たっちゃん」
そりゃそうなるよな。よし、やるぞ!
「握手をしよう。それから、全部説明する。右手で握手は友情の証だ。いいだろ?」
「え? 握手って……急にどうしたの? もちろん良いけど」
僕が差し出した手を、栗っちが握る。違和感に気付いて、手を解こうとするが、僕は離さない。大人の握力を舐めてはいけない。
「いい? たぶん、次に僕の手を見たら、今までの僕とは違っている筈だ。栗っちに聞こえなかった声も聞こえるようになっている。でも、何があっても、僕と栗栖和也は永遠に友達だ」
僕の、いつになく真剣な表情と言葉で、栗っちも、何かを悟ってくれたのだろう。
「うん。いつまでも友達だよ」
僕は、そっと握手を解く。そのまま中指を上にして掌を見せる。
「何か見える?」
「たっちゃん、それ、もしかして僕が予知で見た、手に刺さってたやつ?」
ああ、そうか。もう既に見ていたんだったな。それなら話が早い。
『そうだ、初めましてカズヤ。私はブルー。地球の意志であり、地球とタツヤを繋ぐ端末だよ』
少し驚いたような顔をした栗っち。ブルーの声も、認識できているようだ。
「えへへ。初めまして! 栗栖和也だよ。もしかして、洞窟で穴に落ちた時から、ブルーさんは、たっちゃんと一緒に居た?」
『うん。私とタツヤで会話もしていたけど、あの時のカズヤには、認識できなかっただろうね』
「僕が〝意識〟を向けてなかったんだよね!」
驚いた。ちゃんとブルーの仕組みを理解している様子だ。さすがは救世主。
「さて、ブルー。説明しなきゃならないんだけど、どこから始めようか」
『そうだね。まずは、地球の話をしよう』
僕とブルーは、地球の破壊が近付いていること、僕が15年後からそれを阻止するために来たこと、僕が死なないこと等を話した。
「ごめんね、たっちゃん。僕が予知したせいで、15年後に地球が……」
「いやいや、栗っちは悪くないじゃんか。僕を助けようとしてくれたんだし」
『カズヤ、巻き戻る前の世界では、キミがタツヤを止めた事によって、キミの能力は失われたんだ』
「能力?」
『カズヤ、キミは、救世主と呼ばれる存在だ。いずれ、天啓を受けて、覚醒する』
「栗っちは、人類を救う存在なんだって」
『そう。歴史上の、聖人とか、預言者とか言われてる者たちは、全て、〝救世主〟という存在だった』
「でもでも、それって、たっちゃんの事じゃないの? 地球が壊れるのを止めるのは、たっちゃんなんでしょ?」
「ううん。僕は、地球を救うのであって、人類を救うんじゃないんだ」
「……あ、そっか! 人間が原因で地球が壊れるかもしれない時、人間の味方をするのが僕で、地球の味方をするのが、たっちゃんなんだね」
すごいな、栗っち。もう悟ってしまった。
「そう。だから、僕達は、もしかしたら、敵同士になるかもしれないんだ」
「大丈夫。僕が人類を、たっちゃんが地球を、正しく導けば、何もかも上手くいくよね!」
『そうだ、カズヤ、どうか地球とともに、人間たちが平和でいられるように、頑張って欲しい』
「僕も頑張るよ。絶対に地球は壊させないから! それに、手伝えることがあれば、もちろん協力する」
「うん。僕も、たっちゃんを手伝いたいな。一緒に世界を救おうよ!」
やはり、話して良かった。栗っちなら、きっと人間を間違った方向に導くことは無いだろう。
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