プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー

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5年生 冬休み

察する

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『では、カズヤも、遠隔えんかくで会話ができるようにしようか』

 僕は右手で、彩歌は心臓。ブルーを介して会話ができる。欠片かけらはあと一つあるから、それを使うのかな。

「ブルー、栗っちに、欠片かけらを渡すのか?」

『いや、それには及ばない。カズヤには元々〝精神感応〟が備わっている。既に受信機がある状態なのだから、チャンネルさえ合わせれば、簡単に繋がるよ』

 栗っち、スゴいな。ブルーなしで何でも出来ちゃうんだ。

『よし、繋がった。試してみて』

 栗っちは、ジュースを飲みながら、不思議そうに僕を見ている。
 僕は、右手に力を込めてから、話しかけた。

『もしもし? 聞こえますかー?』

『はーい! 達也さん、どうかした?』

 彩歌あやかの声が聞こえた。

『うわ、彩歌さん!? ごめんごめん、間違えた!』

『タツヤ。気持ちはわかるが、アヤカの事を考えすぎだ』

「たっちゃん、今の声は……?」

「いや、栗っち、なんでもないんだ」

『彩歌さん、また連絡するよ〝儀式〟頑張って』

『……? うん! ありがとう。達也さんも頑張ってね』

 通信が切れた。彩歌を思い浮かべたつもりはないが……以後、気を付けよう。

「えーっと、気を取り直してもう一度……」

 今度は、ちゃんと栗っちの顔をイメージして……と。

『あーあー、聞こえますかー!』

『わあ! ビックリした! たっちゃんの声が頭の中に、直接聞こえる!』

 そりゃびっくりするよな。でもちょっと待てよ? 今の栗っちの声……?!

「栗っちの声、ブルーから聞こえた! という事はつまり……」

『カズヤは、もうこの通信を理解して、使いこなしたんだ。さすがだ』

 説明いらずとは。
 やはり、救世主、あなどりがたし!

『これ、便利だね。たっちゃんと、いつでも話が出来るんだ』

『カズヤ、私とも繋がるので、何かあれば質問してくれて構わない。ただ、この会話の性質上、タツヤも一緒に聞くことになるけどね』

『えへへ。ブルーさん、ありがとう! 困ったことがあったら、相談に乗ってね!』

「そういえば、僕とブルーは24時間起きてるから、深夜でもOKだぜ?」

「ええっ! そうなの?! 寝たほうが良いよたっちゃん! 体に悪いよ!」

 やっぱり優しいな、栗っちは。

『カズヤ、タツヤには〝不眠不休〟という特性が備わっている。眠る必要が無いんだ』

「寝ないの? 眠くなったらどうするの? つらくないの?」

 すっごく心配してくれるなぁ。

「大丈夫。ここ数日寝てないけど、ぜんぜん平気だよ。〝眠い〟って感覚がなくなっちゃったみたいなんだ」

 そう。〝寝る方法を忘れた〟みたいな感じかな。おかげで宿題は、ほとんど終わらせてしまった。

「へえ! やっぱり凄いね、星の導き手って! 死なないし、歳もとらないし、寝る必要もないなんて!」

『カズヤ。君も、覚醒が進めば、死を克服する能力を身につける筈だ』

「不老不死になるのか?」

『えっと……救世主は死んでも、しばらくすれば復活するんだ。寿命も〝全てを終えるまで〟となっている。つまり、救世主自身が〝もう死んでも良い〟と思うまで延長され続ける。方法も〝若返り〟〝転生〟〝復活〟など、自由だ。そして最終的には〝神〟になる』

「それって僕よりスゴくね?」

『いや、タツヤ。〝人〟という〝しゅ〟が存在できる時間は、星の寿命より遥かに短い。カズヤの命は少なくとも、人の歴史が終われば共に終わる。だが、キミはこの星の寿命が尽きるまで、死なないし老いない』

「たっちゃん……」

 栗っちは、悲痛な面持ちで僕を見ている。
 僕はグラスのジュースを一気に飲み干した。

「心配しなくても大丈夫! 僕は何億年だろうと、楽しくやるさ!」

 それに多分、彩歌も一緒だ。きっと退屈はしない。

「しかし、ビックリだよな。こんな近所に英雄候補が二人も居るなんて!」

「えへへ。そうだね。密集率スゴいねえ」

『タツヤ、カズヤ、こういうのは、意外と一点に集中するように出来ている。まだ居るかもしれないぞ?』

 僕もそんな気がする。なんかワクワクするな。

「ああ、そうだ。もう一人居るんだ。僕のせいで星の導き手になってしまった子が。そのうち紹介するね」

「……もしかして、さっきの声の?」

「あ、そうそう。彩歌さんっていうんだ。可愛い娘でね。なんと魔女っ子なんだよ」

「魔女っ子って、ホウキに乗ったり、黒猫連れてたりみたいな……?」

「あ、ちょっとそっちのパターンじゃないかも。今度、聞いてみるよ」

 そっちのパターンって何だ? でも、ホウキに乗って空を飛ぶ彩歌も見てみたいな。

「ボーン、ボーン、キュッ、ボーン……」

 隣の部屋から、正午を知らせる時計の音が鳴る。妹が妙に気に入って買ったレトロ調の柱時計だ。毎回思うんだけど、キュッって何の音だよ。

「あ、もうお昼か。栗っち! 〝まりも屋〟で一緒に食べようか!」

「うん、行こう行こう!」

 僕は、部屋を出た。栗っちも、空いたグラスと、今まで空中に浮いていた、元・空き缶の輪っかを掴んでついてくる。本当に律儀だ。

「でもそれ、目立つ所に捨てると不思議がられちゃうよな」

「本当だね。じゃ、もとに戻して……っと」

 メキメキと音を立てて、輪っかは、完全に元のジュースの缶に戻った。

「うわ! そこまで戻せるのか」

 グラスを持ってこなくても、ぜんぜん大丈夫だったんだな。心配して損した。

「たっちゃん、グラスは流し台で良い? 缶ってどこに捨てればいいかな」

「ああ、大丈夫大丈夫、そこら辺に置いといて」

 僕は、リビングの引き出しから、母さんが用意してくれた、お昼ごはん用のお金を出して、財布にしまった。

「さあ、行こうか。久し振りに、まりも屋の味が楽しめると思うとワクワクする!」

 玄関を出て、戸締まりをした。

「15年後には、もう無いの? まりも屋さん」

「いや、あるにはあるんだけど、代替わりで、味がね……」

「ふーん。じゃ、良かったね、また食べられて!」

「うん、オムライスにするか、カツ丼にするか、悩むなぁ!」

「たっちゃん、本当にまりも屋さん、好きだよね」

 10分ほど歩くと、駅前商店街の入口についた。まだ、開いている店が少ないので、人もあまり居ない。

「そういえば、おととい、ユーリがウチに来たよ」

「え? 正月早々? って、僕も人のこと言えないよね」

 栗っちが、えへへと笑う。

「偶然、コンビニで会ってね。ミカンを求めて、町中をうろついてたみたいなんだ」

「そっか、ミカンかー! たっちゃんち、ミカンいっぱいあるもんね!」

 相変わらず察しが早い。もしかして、これも救世主ならではの、特性なのかな。〝精神感応〟とか、それっぽいよな。

「そうなんだ。毎年、親戚からミカンいっぱい貰うって話したら〝お嫁さんにして!〟とか言って来るし。本当に勢いだけで喋ってるよなー」

「えへへ! ユーリちゃんらしいね。思った事、全部口に出しちゃう。昔から、たっちゃんの事、好きみたいだし」

 ……え? 何?

「えっと……? あれ? あははは、さすがにそれは、ないんじゃない?」

「だってたっちゃん、いつもユーリちゃんに〝愛してる〟とか〝大好き〟とか言われてるじゃない」

「いやいやいや。アイツ、僕だけじゃなくて、みんなに言ってるだろ?」

「ううん。少なくとも、僕は言われたこと無いし、他の男子にも、そのたぐいの事を言ってるの、聞いたこと無いよ?」

 ちょっと記憶が定かではないが、言われてみればそんな気もしてきた。〝愛してる〟や〝大好き〟は、ユーリにとっては、挨拶代わりなんだろうとしか思っていなかったのだが……

「きっと、ユーリちゃん、たっちゃんの事、本当に大好きなんだと思うよ」

 またまたー! そんな事を爽やかに言っちゃうのか、この救世主様はー。
 ……まてよ? でも、ユーリの気持ちを察したのは、救世主の特性〝精神感応〟なのか? ということは……?!

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