プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー

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5年生 3学期 2月

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 キンデルダイクで風車を堪能たんのうしたあと、アムステルダムへ。
 僕と彩歌あやかは、ミッションクリア後の観光を楽しんでいる。

「見て見て! 達也さん!」

 はしゃぐ彩歌。

「彩歌さん、気をつけて! 車が来てるよ!」

 車にぶつかったら大変だ……相手が。

『あはは、本当だねタツヤ。キミ達にぶつかったら、車の方が大破するよ』

 車に限らず、パワーアップしたばかりの僕たちは、周囲に迷惑を掛けないように、細心の注意を払わなくてはならない。

「運河クルーズ、残念……」

 彩歌が小さな声で呟く。
 アムステルダムの観光で〝運河クルーズ〟は外せないのだが、今回はパスだ。
 ……僕たちはまだちからのコントロールがよく分からない。
 
『万が一、キミたちが転びでもすれば、船だって沈めてしまうかもしれないからね』

「そうだね。博物館とかも、コントのオチみたいになるかもしれないし」

 クシャミで大きな金タライが頭に落ちて来るのをきっかけに、セットがメチャクチャに破壊された後、軽快な生演奏と共に舞台が180度回転して、アイドル歌手が歌い始めるヤツだ。
 今も足元に気をつけないと、硬いはずの石畳に、新雪を踏んだような足跡を作ってしまう。

『アヤカ、済まないがキミ達は、チカラが定着するまで、少し安静にしたほうが良い。周囲のためにもね』

「うん。わがまま言ってごめんなさい」

 残念そうにしながらも、運河を行く船を見て目を輝かせている彩歌。

「彩歌さん」

「……? なぁに、達也さん」

「また、来ようか」

「……! うん、約束よ!」

 満面の笑みでうなずく彩歌。よし、飽きるまで、世界中を一緒に回ろう。何周でも!
 ……そのためにも、絶対に守らないとな、地球。

『ひゃあ。お熱いねぇー!』

 彩歌の頭に乗っている、黄色くて丸いウサギのような生き物は〝ルナ〟。
 魔界の全てを支配できる〝魔界の軸石〟の化身らしい。ちなみに、ブルー同様、普通の人間には見えないし、声も聞こえていないようだ。

『あ、でもね。僕の力を自由に扱えるようになるには、かなりの熟練が必要だよ』

「ふぅん。そこは僕の特殊能力と同じなんだ」

「ルナ、熟練って、私、どう練習すればいいの?」

『僕が使える初歩の能力は、門の開閉。こっちの世界に無数にある〝魔界の門〟を開け閉めできる』

「ええっ? 魔界へのゲートって、いくつもあるの?!」

 彩歌が叫ぶ。凄い驚き方だ。

『世界各地にあるよ? 開いてる門は少しだけど』

「開いている……それ、本当なの? すごく危険な事よ?!」

『えーっと……いま開いているのは、彩歌たち魔道士の都市と、ニホンのカナガワを結ぶ門も入れて、全部で5つみたい』

「開いてるゲートがあるなんて……魔道士が管理していないゲートがあと4つも?」

「それって、もしかして、悪魔がこっちに来たい放題なのか?」

 かなりヤバくないか、それ!

「ルナ、そのゲート、今すぐ閉じられる?」

『僕の能力は彩歌の熟練次第さ。今はまだ、門に近づかないと無理だよ』

「そのゲート、どこにあるんだ?」

『えっとね……近いところからだと、ドイツの、〝ベーリッツ陸軍病院〟』

 大ちゃんに聞いたら、知ってるぜー? とか言うだろうな。

『あと、ルーマニアの、〝シギショアラ〟』

 吸血鬼伝説で有名なところらしい。

『アメリカの、〝カサ・グランデ山〟』

 行方不明者多数。悪魔が関係してるのは間違いないな。

『カナダの、〝アンジクニ湖〟』

 雪と氷の凍てつく大地。せめて夏に行きたい。

『ふむ。タツヤ、それらの場所は確かに空間の歪みが大きい。ルナの言う通り、どうやら本当にゲートは開いているようだ』

 深刻な表情の彩歌。なにかブツブツと呟いている。

「彩歌さん? 大丈夫?」

「一刻も早く、閉じなくちゃ……」

「え?」

「達也さん、ブルー。私、今すぐに、開いている門に向かわなきゃ!」

 かなり思い詰めた口調の彩歌。必死の形相だ。

「彩歌さん、落ち着いて!」

「魔界のゲートが、いくつもあって、しかも開いたままなんて、有り得ないわ。急いで閉じなくちゃ!」

『ちょいちょい、彩歌。カナガワのも含めた5つの門は、長い間、開いたまんまなんだよ? 急いで閉じた所で、そんなに変わらないと思うけどなあ』

 のんきに笑うルナ。

「ふざけないで! 悪魔は本当に恐ろしいのよ! 一般の人だけじゃない。私の仲間たちだって、何人犠牲になったと思うの?! 今、この瞬間にも、誰かが悪魔に……」

 歯を食いしばって、涙を流す彩歌。そこまで悪魔を……今までにも、色々とあったんだろうな。

『……ごめんよ彩歌。僕もキミと一緒に色々見てきたのに……無神経だったよ』

 ルナは耳を垂れて、しょぼんとする。

『ただ、何かが門を通過したかどうかぐらいは、今の僕でもわかるんだ。キミ達がいつも使っているカナガワの門以外、ここ数十年間は、誰も通っていない』

「そんなはずないわ。こっちへのゲートがあるなら、悪魔が押し寄せてるはずよ!」

『それが、来てないんだ……理由はわからないけど。何らかの方法で通行を封じられているとか、魔界側で何かが邪魔をしているとか? 魔界の生物たちが、こっちにホイホイ来れない状態なのは間違いないよ』

「そ……そう。良かった」

 少し落ち着いた様子の彩歌。

「でも、やっぱり放っておけない。いつ悪魔が来るか分からないし、一般人が迷い込む可能性だってあるわ」

 たしかにそうだな。現にどのゲート周辺も、有名な怪奇スポットになっているようだし。

『では、こうしよう。これからひと月に1か所ずつ、魔界の門を閉じて回るんだ。それでどうだろう、アヤカ』

 ブルーの提案に、考え込む彩歌。神妙な表情で、それを見ているルナ。

「……大丈夫かしら、そんなペースで」

「ブルー、せめて一番近い、ドイツのゲートだけでも閉じに行かないか?」

『うーん。キミ達の能力が体に馴染むまでは、大人しくしていた方が良いのだが……』

 そうだった。忘れていたな。

『仕方がないね。何が起きてもキミ達の生命が脅かされる事態にはならないだろうし、それに、アヤカがそこまで言うなら、魔界のゲートは相当危険な物なのだろう』

「それじゃ……!」

『アヤカ、ドイツへ通じる〝ルート〟の入り口は近くにある。でも、出口からは少し歩いてもらうことになるよ?』

「ありがとう、ブルー!」

 という事で、ドイツに直行だ。
 ……まあ僕は、このまま世界一周でも構わないんだけどね。

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