プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー

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5年生 3学期 2月

覚醒

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 実験体の顔をおおっていた水が、消えていく……

「……これは熱気?!」

 熱い! もしかして、体温を上げて蒸発させてるの?

「だとしたら……人知を超えてますね……」

 そう。人知を超えている。
 ブルーさんが大ちゃんによく言っているけど、人間の英知は、なんて物を作り出したんだろう。
 ……顔の周りにあった水を、ぜんぶ蒸気に変えたあと、実験体は悠々と大きく息をついて僕をにらむ。
 ちょっと怒ってる……よね?

「ガルルル……」

 この子は、瞬発的に体温を上昇させることが出来るんだね。しかも、信じられない温度に。
 ……もしかしたら、ケージを破壊したのも、この力を使った技なのかな?
 実験体の発していた熱気は消えた。けど、代わりに殺気が高まっているよ。
 ほら、ジリジリと頭を下げつつ後退していってる。これってきっと、後ずさりじゃなくて、飛びかかるための間隔を開けてるんだよね。

「ちょっと困りましたね」

 ……そういえば、たっちゃんに、

 〝敵の心臓とかを念動力で握りつぶしちゃえばいいんじゃない?〟

 と、言われた事がある。
 そうだよね。それが出来れば最強なんだけど。
 ……実は、生き物の〝体の中〟には、念動力は入っていけない。
 建物とか、機械とかは、中から色々と出来るのに、不思議だよね。
 だから、この子も、念動力では、体の表面しか触れることが出来ないんだ。
 可哀想だけど、縛る・止めるじゃなくて、打撃・射撃をしなくちゃならないかもしれない。
 念動力による攻撃も、物理攻撃と同じで、加速すればダメージが大きくなる。縛るより切り裂く、止めるよりぶつける方が、大きな力を加えられるみたい。けど……

「生物を攻撃するのは……初めてです」

 仕方ないよね……実験体を野放しにすれば、大勢の人が犠牲になってしまうから。
 僕は両手を前に差し出して、念動力を、自分の前に集中した。
 1つ、2つ、3つ。
 目には見えない力のかたまりを並べていく。
 時を同じくして、実験体が頭を床スレスレまで落とした。来るよ!
 僕は連続で、5発の念動力を発射した。
 タタタタタン! と、弾けるような音が鳴り響き……今まで実験体が伏せていた場所に、5つの穴が開く。

 「?! 外し……!」

 次の瞬間、背後に、気配けはいを感じた。
 振り向く間もなく、背中に衝撃が走り、そして目の前には、壁。
 直後、僕の視界と意識は、黒く塗りつぶされた。





 >>>





『……い……ずや』





 ん……。





『めざ……か……』





 だれかの……声が……聞こえる……





『目覚めなさい、和也』





 ……誰?



貴方あなたみちびく者です』



 僕を導く……?
 もしかして、神様?


『少し、違います。むしろ、神に最も近いのは、貴方です』


 僕、どうしたんだっけ……


『貴方は、攻撃を背中に受け、壁に激突したのです』


 ……そうだ。僕、負けちゃったんだ。

『いえ、まだ終わっていません。貴方は、自分が〝終わっていい〟と思うまで、命を落しても、よみがえることが出来るのです』

 そう言えば、ブルーさんがそんな事を言ってたよね。
 ……でもさ、あの子、ちょっと強すぎるよ。僕じゃ、止められそうにない。

『それなら、貴方は力をほっするだけでいい。貴方は理不尽なほどの力を持つ、救世主なのですから。貴方は、あの〝哀れな者〟を、どうしたいですか?』

 救いたい。

『あれほど、怖い思いをし、酷い事をされても、貴方は、まだ、あの者を救いたいのですか』

 勝手にあんな姿にされて、こんな所に閉じ込められて……可哀想すぎるよ!
 僕は……僕は……!

「あの子を救いたい!」

 突然、体の感覚が戻ってきた。
 ……内から、外から、どんどん力が溢れてくる。

『……今の言葉が。貴方の慈愛の心が。〝目覚め〟を大きく進めたのです。さあ、貴方の望むようになさい』





 >>>





 目を覚ますと、実験体は僕にのしかかり、鋭い爪を突き立てようとしていた。
 ヘルメットが割れてはじけ飛ぶ。
 何度も攻撃されたのだろう。アーマーは波打つのをやめ、いたる所に亀裂が入っている。
 
「……ありがとう、大ちゃん。おかげで痛くなかったよ」

 僕の中に、今までにない〝力〟が芽吹いているのがわかる。
 たぶんこれは僕が、一歩、神様へと近付いたあかし
 僕は実験体を、念動力ではなく〝腕力〟で跳ね除けた。
 数メートル吹っ飛んで、ゴロゴロと転がる実験体。

「ゴメンね、ちょっとまだ、力加減がわからないんだ」

 ダメージが大きすぎたみたい。
 すっごくカッコいいエフェクトと共に、変身が解けてしまった。
 ……あんなにボロボロになっても、そこはちゃんと機能するんだ。

「ガアッ!」

 実験体が飛びかかってきた。
 さっきまでは目で追うことも出来なかったのに、完全に動きがわかるよ。
 ……というより、スローモーションだね。
 僕は、実験体のほっぺを、引っ叩いてやった。
 
「ギャフン!」

 意外と可愛い声をあげて、真横にすっ飛ぶ。
 ゴロゴロと転がって、やっと起き上がるも、何が起きたのか理解できない様子の実験体。
 ……こちらに向き直り、威嚇しながら、じわじわと近付いてくる。

『もうやめよう。キミは、僕には勝てないよ』

 精神感応で話しかける。
 ……たぶん通じるはず。何となく分かるんだ。

『……る……い』

 ほらね、反応があった。今なんて……

『うるさい! だまれ!』

 実験体は、再び襲い掛かってきた。
 僕は、もう一発、さっきとは逆のほっぺを引っ叩く。
 ……今度は当然、逆の方向にすっ飛んだよ。
 僕、自分ではゆっくり動いているつもりなんだけど、どうやらあの子は、僕の動きを目で追えてないみたい。
 僕が急に強くなった事を〝体感〟していても、頭ではわかっていないんだね。
 実験体は、まだ僕の方をにらんで、飛び掛かろうとしているよ。

『ね、わかったでしょ? 大人しくすれば、なにもしないから』

『ゆるさない! ゆるさないぞ! よわいにんげんのくせに!!』

 ダメだ。
 まだ向かってくる。

「うーん……このままだと、大ケガさせちゃうよ。どうしよう」

 攻撃を避けながら、ふと辺りを見回すと、実験体が閉じ込められていたケージが目に入った。

「そうだ! アレを使って……!」

 大きくて頑丈なケージの鉄格子を、念動力で全部引っこ抜いて、目の前に、ズラリと並べる。
 さっきは全然曲げられなかった鋼鉄の棒が、水飴のように柔らかいよ。
 グニャグニャと丸めて引き伸ばして……
 よーし、できた! 〝実験体〟そっくりの〝像〟を作ったよ。

「えへへ。工作は得意なんだ」

 ……特に、鉄細工は。
 中は空洞で、大きさは実物とだいたい同じ。
 なかなかカッコ良くできたよね。

『…………』

 途端に、実験体の動きが止まった。
 鉄像を見て、じっとしている。そして……

『すごい! すごい! これ、ぼくだよね!』

 喜んだ。

『わぁ! すごくかたいのに、こんなのつくれるって、すごい! すごいね!』

 ほめられた。

『もしかして、ぼくをいじめにきたんじゃないの? それじゃ、あそぼうよ!』

 なつかれた。

『うん。遊ぶのはいいんだけど……キミ、お腹空いてないの?』

 えっと……お腹を空かせて、ケージを破ったんだよね?

『ううん。ごはんは、きょうもちゃんとたべたし、だいじょうぶ』

『食べたの?! どういうこと……?』

『くろいにんげんが、まいにちここにきて、ごはんをくれたよ?』

 黒い人間? ……戦闘員かな?

『えっとね、〝そのうち、だしてあげるから、おとなしーく、しててくんない?〟 っていってた』

 えー?! 戦闘員はそんな事は言わないよね?
 ……いったい誰だろう。

『ねえ、そんなことより、あそぼー!』

『……ああ! もしかして、退屈だったから、ケージ壊しちゃったの?』

『ふふ。ばれちゃった。だって、ひまだったんだもん!』

 驚いた。まるで無邪気な子どもじゃないか。
 どうにかして助けてあげたいよね……

『でも、キミ、ちょっと大きすぎるんだよね』

 この子を連れて行ったら、みんなビックリしちゃう。
 お母さんなんか、ひっくり返っちゃうよ!

『うーん。おおきいとあそべないの? じゃあ、ちょっとまってね』

 実験体は、身震いひとつすると、みるみる小さくなっていく!

『これでどう?』

 すごい! 普通のネコさんのサイズになっちゃった!
 ……うん! これなら、連れて帰っても大丈夫だよね!

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