プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー

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5年生 3学期 2月

姉ちゃんに報告しよう!

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「心配していたのよ? どうしてすぐに来てくれなかったの?」

 姉ちゃんが怒るのも無理はない。この前の戦いから3日、私はここに来るのを躊躇ためらっていた。
 あ、いっけねー! 名乗らなくちゃ!
 ごめんごめん、私だよ、ユーリちゃんだよ!
 今日は、姉ちゃんが入院してる、病院に来てるんだ。

「電話で〝勝った〟ってだけ言って、そのままって、一体どういう事なの?」

 ……ここに来づらかった理由は、いくつかあるんだよ。まず一つが、

「とにかく、よくやったわ! さあ、ガジェットを出して。メンテナンスしなきゃ」

 これだよー。どうしよう……

「何してるの? 早く出して」

「……壊れちゃった」

「……え?」

「…………」

「ごめん、ユーリ、よく聞こえなかったわ。もう一度言ってくれる?」

「……ガジェット、壊れちゃった」

 姉ちゃんは、目を見開いて、口をパクパクしている。

「壊れたって……壊れたってユーリ! あなたそれ、どういうことか分かってるの?!」

 そりゃあ、こうなるよねー。
 で……
 こうなると、たぶん、もう一つ、聞かれるよなー……

「それで、どう壊れたの?! ガジェットはどこ?!」

 ……ほらぁ。

「ここには無いの。でも、大丈夫だから!」

「なにが大丈夫なの? 意味がわからない! ガジェットが無いと、もう地球はおしまいなのよ?!」

「う、うん……」

「ガジェットはどこなの! 言いなさい!」

 ……言うと、絶対に怒られるよなぁ。でも、ちゃんと説明しなきゃ。

「大ちゃんに、預けたんだよー」

「……はい?」

「直せるって言ってくれたからさー、預けたの」

「……!?」

 ね……姉ちゃん、まず、瞬きと呼吸をして。死んじゃう。

「ユーリ? お姉ちゃん、ちょっとあなたが何を言ってるのかわからないの。もう一度、言ってくれる?」

「だから、大ちゃんにね、預けてね、直してもらってるんだー」

 あ、姉ちゃんに瞬きが戻った……てか、いつもの10倍ぐらい瞬いてるよ。

「だいちゃんって……誰?」

「やー! クラスメイトでさー! すっごい、頭が良くてさー!」

 あ、あれ? 姉ちゃんが小刻みに震えてる?

「ちょっと、そこに座りなさい……そうじゃなくて、正座……で、ちょっと頭を出しなさい」

 ……おもいっきり引っ叩かれた。あいたた! 何すんだよ、姉ちゃん!

「何すんだよじゃない! あなたの方こそ何してるのよ! 大切なガジェットを、あろう事か、地球人に預けたですってぇぇぇ?!」

「だって、大ちゃんが直してくれるんだよ? 預けなきゃだめじゃんかー!」

「ユーリ、あなた正気なの?! ガジェットを直せる人間なんて、銀河中を探しても、そうそう居ないのよ?! それを、地球人の? しかも小学生が?!」

 姉ちゃんは大きく息を吸い込んだ。

「直せるわけないじゃない! 馬鹿なの?! あなた馬鹿なの?!」

 2回も馬鹿って言われた……

「はぁ……はぁ……」

 良かった。呼吸も戻ったみたいだよ。

「今すぐに、取り返してきなさい」

「……え?」

「え? じゃない。 早く!」

「いや、姉ちゃん、なんで? 大ちゃんは絶対、ちゃんとガジェットを直してくれるんだよ? あ、そうだ、パワーアップもしてくれるって! だから任せようよ!」

「……ユーリ、あなた本気で言ってるの? ガジェットを修理? パワーアップですって?!」

「姉ちゃん、落ち着いて。大ちゃんはすごいんだよ。ガジェットは絶対に直してくれるからさー」

 と言った瞬間、姉ちゃんが涙をこぼした。ええ?! なんで?

「ユーリ……あなた、本当にどうしたの? どうして……どうして……」

 ポロポロと涙を流し続けている姉ちゃん。
 ぜんぜん心配ないのに、なんで泣くかなー!

「泣かないで。大丈夫だから。大ちゃんに任せれば大丈夫だから!」

「この子は、まだ言うの?!」

 姉ちゃんは腕を大きく振りかぶって、私の頬を叩こうとした。
 次の瞬間、その手を、赤いラインのスーツを身にまとったヒーローが受け止めた。
 ……やけにカッコいいエフェクトとともに、変身が解ける。

「ユーリ、お前は本当に説明が下手だなー!」

 大ちゃんだー!

「誰?!」

 それだけ言って、なんとも言えない表情で固まっている姉ちゃん。
 そりゃー驚くよー。目の前に突然、ヒーローが現れたら。

「はじめまして! 俺は、九条大作。大ちゃんって呼んでほしいぜー!」

「あなたが……大ちゃん?」

「病室の扉、開けっ放しだったぞー? 大声でやっちゃ駄目な内容の会話だろー」

 あれ? 閉め忘れてたかー! またやっちった!

「お姉さんには、俺から説明するぜー……ユーリ、これ」

 大ちゃんが渡してくれたのは、ガジェット。え? もう直ったの?

「ちょっと材料を揃えるのに手間取ったけどなー! ひと晩あれば、十分だぜー!」

 やー! やっぱ大ちゃんカッコイイ! 好きすぎる!

「直ったって……あなた、一体」

「俺は、たぶん地球で一番頭がいい小学生だぜー!」

 それ、自分で言っちゃうんだ! さすが大ちゃん! 愛してる!

「そのガジェットは、武装用の回路が傷んでたから、修理がてら、ちょっとパワーアップさせておいた。試してみてくれるかなー?」

「えっと、その……大ちゃん? それを扱える技術者なんて、地球には居ないのよ? 直すどころかパワーアップなんて……」

「あー。普通は、そうだよなー」

 でも、俺は普通じゃないからなー! と言って、ニヤッと笑う大ちゃん。もうダメ! 抱きしめて!

「やー! とにかく、動かしてみるよ! 姉ちゃん、ガジェットに触れて」

「まあ、時間を止めるとかの回路は、あんまりイジってないけど、エネルギー効率は、30%ほど、良くなってると思うぜ」

 姉ちゃんはいぶかしげに、ガジェットに触れた。早速、戦場ボードを作成する。
 ……病室の時計の秒針が止まり、周囲の音が全くしなくなった。良かった。ちゃんと動いてるよ。

「壊れてはいないようね。良かったわ」

 ほっとした様子の姉ちゃん。

「よし、じゃあ、武装を試してくれよー!」

「えええええっ?! なぜ動けるの?! あなたガジェットに触っていないのに!」

 ギョッとした様子の姉ちゃん。

「んー。まあ、こういう所が、ちょっと普通じゃないんだよなー」

「姉ちゃん。実は、この前の戦い、大ちゃんが助けてくれたんだ」

「ああ。あれはヤバかったなー!」

「……あなた、何者なの?」

「まあ、それについては あとでゆっくり説明するぜー! ユーリ、武装してみてくれよ」

「りょーかい! 武装!」

 まばゆい光が辺りを包み、いつものように、戦闘装束に……うわぁ! すっごい!

「ユーリ、その姿は……?!」

 姉ちゃんが驚くのも無理はない。
 病室の洗面台の鏡には、今までの重厚な武装ではなく、大ちゃんや、たっちゃんと同じような姿の、ヒーローが映っていた。

「ラインは黄色だ。お前、ミカン好きだからなー」

 さっすが大ちゃん! 愛を感じちゃうなぁ!!

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