プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー

文字の大きさ
93 / 264
5年生 3学期 2月

サナトリウム

しおりを挟む
 〝ベーリッツ陸軍病院〟
 ブランデンブルク州、ポツダムに、〝廃墟として〟存在する。
 元々は、結核の治療の為に建てられた療養所サナトリウムだった。
 かのアドルフ・ヒトラーが怪我の治療を行った事でも有名だ。
 ……と、大ちゃんが言っていたが。

「本当に、ここに入るのか?」

 林の中を、もう随分と歩いて来た。
 〝ルナ〟が言う魔界のゲートは、いくつか点在する病院の施設跡の1つ、この建物の地下、奥深くにあるという。

「達也さん、お願い。一緒に行こう?」

 僕と彩歌あやかはドイツにいる。
 まあ、僕にしてみれば、軽いボーナスステージみたいな物だ。

「お、おう!」

 ここまでボーナス感の無いステージは初めてだけどね。

『タツヤ、ここは世界でも指折りの心霊スポットだ』

「そうだよな。僕だって聞いた事がある位だもん。悪霊とか居ませんように……」

 悪意のある霊は、無敵であるはずの僕の魂にも、直接ダメージを与えることが出来るらしい。
 そういう意味で、切実に怖い。ちびっ子がオバケ怖いって言ってるのとはワケが違うのだ。

除霊じょれい、出来るわよ? 私」

「……え?」

「対霊魔法、持ってるから大丈夫よ? それより、厄介な悪魔とかが来ていないか心配だわ」

 そんな魔法もあるの?! 先に言ってよー! もー!

「さあ、ちゃっちゃと終わらせて、ソーセージとビールを満喫しようぜ!」

『急に元気になったな』

 ルナが白い目で僕を見る。ヤメてっ! そんな目で見ないで!

『飲酒は20歳を過ぎてからだよ。タツヤ』

「あ、やっぱりそうなの? 俺も彩歌も26だぞ?」

『そういう時だけ大人振るのか。ズルい大人だな』

 そうだよね、大人って、汚れてるよね……

「達也さん……?」

 いつになく低いトーンの彩歌。

「は……はい?」

「みんなには、絶対今の、言っちゃダメよ? 私、11歳。良い?」

「……え?」

「良いわね……?」

 ひぃ……! 大人って汚れてるっ!

「ひゃい! わ……わかりました!」

「よろしい……じゃ、行きましょうか!」

 彩歌の実年齢を暴露バラしたら、僕が解体バラされるかもしれない。恐ろしすぎる……!

「ルナ、道順はわかるわよね?」

『まかせといて! とにかく、突き当たるまで真っすぐ行ってよ』

 もう夕方だ。周囲は、随分と薄暗くなってきた。
 わざわざこんな時間に突入しなくてもいいのに……テレビの心霊特番じゃあるまいし。

『そろそろ、灯りが必要のようだな』

 ブルーが、光を強めてくれたので、ある程度、周囲を見渡せるようになった。
 ちなみにブルーの光も、普通の人間には見えない。
 ……というか見えてしまったら、僕は常時右手が光る〝発光小学生〟だ。
 左右にある部屋を素通りして、薄暗い廊下をまっすぐ進む。
 部屋には、朽ちた医療用の機材や崩れた建物の破片などがゴロゴロと転がっていて、いかにもって感じだな。
 やがて、突き当りの壁が見えてきた。

『えーっと……その左に、階段があると思うから、降りて』

「なるほど、確かに地下へ続く階段だ。この先に魔界のゲートが?」

『うん。でも、もっとずっと下の方だよ。普通の人が入れない位に深い所』

 ルナによると、一般人には気付かれないような、隠し通路と隠し部屋をいくつも通り過ぎた所らしい。

『タツヤ! いま、何かがこの建物に侵入した。真っすぐこっちに向かって来る』

「なんだって! 悪魔か!?」

『いや、この気配は……』





 >>>





 ……子どもだった。
 4人組で、男の子が2人、女の子が2人だ。
 僕たちは脇の小部屋に身を隠して、やり過ごす。
 年齢は、たぶん今の僕達と同じか、少し年上だろう。全員、懐中電灯を装備している。
 地元の子どもかな? 何か会話をしているけど、もちろんドイツ語。
 ブルー先生。よろしくお願いします!

『……本当だよ! 隠し部屋があったんだ!』

『えー?! マジかよー! マンガじゃあるまいし!』

 〝世紀の大発見〟に、盛り上がる子ども達。
 っていうか〝隠し通路〟バレてんじゃん。

「ルナ、一般人には気付かれないんじゃなかったのか? 小学生にも見つかってるぞ?」

『あっれー? おかしいな……まあ〝隠し要素〟って、子どもの方が見つけるよね。発想がファンタジックだから!』

 あー、そうね。
 存在がファンタジックなお前も、もしかしたら見つかっちゃうかもな。
 ……さておき、どうしたものか。
 まさか、このまま〝隠し要素〟が次々とバレまくって、ゲートまで辿り着いてしまうとか、ないだろうな。

『〝ダニロ〟もし嘘だったら、この間の激レアカード、もらうからな!』

『嘘じゃないから! とにかく仕掛けが凄いんだぜ!』

『ねえ〝ライナルト〟? ここ、いつも来てるの?』

『結構来るよ。隅々まで知ってる。隠し部屋とかは見たこと無いけど』

『ほ……本当に大丈夫なの? なんかイヤな雰囲気』

『〝ラウラ〟は怖がりだなあ! 大丈夫だよ!』

『だって、ここって出るって言うじゃない……』

『いやっ! ラウラ、言わないで! 口に出したら寄って来るって、ネットで見たわ!』

『何が寄ってくるんだよ〝ハンナ〟……大丈夫だよ。ダニロが守ってくれるって!』

『じゃ、じゃあ私の事は、ライナルトが守ってくれるのよね?』

『おう! 任せとけ!』

 何やらいい感じに盛り上がっちゃってる……ってこれ、心霊スポットでデートじゃないか?!
 リア充だ! リア充が攻めてきた!! 息が出来ないッ!!

『タツヤ、落ち着くんだ。そういう時は〝素数〟を数えるといい』

 だから、なんでそんなマニアックなネタを知ってるんだブルー?
 ……だいたい息もなにも〝呼吸不要〟だしな、僕。

「達也さん、そっと後を追いましょう。危険なら、魔法で眠らせて連れ出すから」

 ああ、なるほど。
 それじゃとりあえず、彼らには、道案内をしてもらおうか。

しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

処理中です...