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5年生 3学期 2月
最悪の置き土産
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動きの速さからか、単に、いま起きている〝非現実〟を受け入れられずにいるのか。
警官たちは、犯人の自動小銃が使えなくなった事に、まだ気付いていないようだ。
『おいおい! どうしたどうした! かかって来いよ!』
さらに挑発してくるスキンヘッド。
ベレー帽の男と、見事な連携でパンチやキックを繰り出す。
……反撃しようにも、僕の攻撃もピンクの魔法も、普通の人間には強力過ぎる。
『やめろ! 俺に攻撃が当たったら、大変なことになるんだぜ!』
ちょっとでも僕に触れてみろ。〝星の強度〟が発動して、お前ら、弾け飛んじゃうんだからな?
『何言ってんだ? ビビってんのか! オラァ!』
ビビってるよ! お前らが弾け飛ぶんじゃないかってね!
……あ、そうか。もうこいつら、銃使えないんだった。
警官隊に保護されている4人を抱えて逃げよう。
あとは、プロがなんとかしてくれるだろう。
『……お、おい! 急に3人倒れたぞ? 何が起きたんだ』
『どうやったのか見えなかったけど、あの小さいヤツが、犯人の武器を取り上げたみたいだ』
どうやら警官隊は、犯人が銃を持っていないことに、やっと気付いたようだ。ジリジリと、間合いを詰め始めた。よし、逃げるか!
『ちょっと待った、タツヤ。メガネの男の様子がおかしいぞ』
「やめてくれよブルー! 気が散ると、攻撃を避けそこなっちゃうだろ? メガネは魔法で眠ってるじゃんか」
『タツヤ、緊急事態だ。すまないが、攻撃を避けながら見て欲しい。あのメガネの男のステータスを表示するよ?』
いやいやいや、視界を遮らないで! ちょっと、ああもう。
***********************************************
ボリス ドーフライン Boris Doerflein
AGE 33
H P 28
M P 0
攻撃力 21
体 力 20
守備力 4
素早さ 12
賢 さ 19
<特記事項>
格闘技Lv1
射撃 Lv2
<状態異常>
呪詛
条件:2度目の睡眠
内容:召喚 「Pazuzu」
注意:依代として肉体、対価として魂を失う
***********************************************
……呪詛!? 呪いか!
「ピンク! メガネに呪いが掛けられている!」
デトレフだ。あいつ、そこら中に呪いをバラまきやがって!
「アースぅ、呪いの内容は?」
「えっと、条件は〝2度目の睡眠〟と。内容は……召喚〝パズズ〟?」
「え……?!」
ピンクが引きつった声を出したのと、ほぼ同時に、メガネの男の体が、空中に浮かび上がった。
黒い霧が男から吹き出し、辺りを包む。
……スキンヘッドとベレー帽は、攻撃をやめ、メガネの方を見て、唖然としている。
「ま、魔王を……召喚?」
ピンクはガタガタと震えだす。
昼間にも関わらず、空は真っ暗になり、遠くで雷鳴が轟いている。
警官隊も、何が起きたのかと辺りをキョロキョロ見回し始めた。
「ピンク、パズズって何だ? 召喚って?」
「アース……パズズは魔界の王のひとり、風の魔王よ……」
口調が戻っているぞピンク。
それほどにヤバい奴なのか? パズズって。
「……パズズが本当に来るなら、この世は終わりよ。誰も止められない」
「いや、俺とピンクの力なら、負けることはないだろ! パパっとやっつけちまおうぜ!」
肩を落とし、俯きがちに首を横に振るピンク。
「勝てない。達也さんは強いわ。でも……」
「でも?」
僕は不死身だぜ。なんたって〝星の強度〟だからな!
っていうか〝達也さん〟って……普通に言っちゃってるし。
「……魔王は、魂を引き裂くわ」
『タツヤ、それはマズい。キミはまだ、魂を守る方法を手に入れてはいない』
忘れてた! そうだよな、悪魔とか魔王って、そっち系の攻撃、得意そうだし。
……メガネの周りに、どす黒い影が差し、頭上に、禍々しく輝く魔法陣が現れた。
カッと目を見開いて、苦しみ始める。
「魂と肉体を奪われようとしているわ」
悲鳴をあげて、グネグネと気味の悪い動きをするメガネ。
関節とか、逆に曲がってるよな、アレ……
「ピンク。今、攻撃しちゃ駄目なのか?」
「呪いが発動した時点で、もう止められない。止めれば別の肉体を乗っ取って、魂を奪うわ」
うわ、それは怖い。
くそっ! デトレフめ。僕たちが追跡する事を恐れて、呪いを残したな?
「来たわ。なんて魔力なの……!」
男は、ゆっくりと地面に降り立った。
そっとメガネを外すと、それをじっと見つめた後、グシャグシャと握りつぶし、周囲を見渡す。
犯人も警官隊も、パズズの異様な威圧感に飲まれて、動けない。
『ふむ……我を呼び出すような術者が、今の世に居ったのかと思うて来てみれば、悪魔の呪いを使っての召喚か。なかなかに面白いが、興が削がれたな』
男はそう言うと、少し残念そうな表情を見せる……メガネの男は、完全にパズズに体を奪われたようだ。あ、魂と、メガネも。
『タツヤ、こういう時にそんな冗談を言えるのはさすがだ』
メガネ以外の外見は、まったく変わっていないが、姿勢が良くなり、所作に気品が感じられる。
魔法陣はスッと消え、黒い霧は晴れた。
しかし、雷鳴は相変わらず、遠く近く響いており、空はどんよりとした雲に覆われて、周囲は薄暗いままだ。
『ほう? 人の子にしては、なかなかの魔力を持っているな』
不意に、こちらを向いて嬉しそうな表情を浮かべるパズズ。
「なかなかの魔力って……ピンクか! マズいぞ!」
『二人か。手始めに、お前たちから血祭りにあげてやるとしよう』
僕もか~い! そうか、MPあるからな僕。精算の時に、MPにも若干割り振ったし。
『面白いな。面妖な身なりをしているが、その体格に見合わぬ魔力量だ。お前たちは魔道士か?』
ピンクは、ただガクガクと震えている。僕も、圧倒的な雰囲気に気圧されて、口が開かない。
『依代の知識を使って喋っておる。言葉は通じるであろう? 我の問いに答えよ』
『そ、そうよ。私は魔道士。でも、この人は魔界とは無関係よ! だから見逃して!』
僕を庇ったのか? いやいや、駄目だ彩歌! 僕も戦うぞ!
『愚かな魔道士よ。我は〝手始めに〟と言ったのだ。誰も逃さぬ。この依代が朽ちて塵になるまで、可能な限りの人間を殺してやろう』
さすが魔王。言い草が〝悪〟そのものだ……リミット付きなのが、せめてもの救いだな。
警官たちは、犯人の自動小銃が使えなくなった事に、まだ気付いていないようだ。
『おいおい! どうしたどうした! かかって来いよ!』
さらに挑発してくるスキンヘッド。
ベレー帽の男と、見事な連携でパンチやキックを繰り出す。
……反撃しようにも、僕の攻撃もピンクの魔法も、普通の人間には強力過ぎる。
『やめろ! 俺に攻撃が当たったら、大変なことになるんだぜ!』
ちょっとでも僕に触れてみろ。〝星の強度〟が発動して、お前ら、弾け飛んじゃうんだからな?
『何言ってんだ? ビビってんのか! オラァ!』
ビビってるよ! お前らが弾け飛ぶんじゃないかってね!
……あ、そうか。もうこいつら、銃使えないんだった。
警官隊に保護されている4人を抱えて逃げよう。
あとは、プロがなんとかしてくれるだろう。
『……お、おい! 急に3人倒れたぞ? 何が起きたんだ』
『どうやったのか見えなかったけど、あの小さいヤツが、犯人の武器を取り上げたみたいだ』
どうやら警官隊は、犯人が銃を持っていないことに、やっと気付いたようだ。ジリジリと、間合いを詰め始めた。よし、逃げるか!
『ちょっと待った、タツヤ。メガネの男の様子がおかしいぞ』
「やめてくれよブルー! 気が散ると、攻撃を避けそこなっちゃうだろ? メガネは魔法で眠ってるじゃんか」
『タツヤ、緊急事態だ。すまないが、攻撃を避けながら見て欲しい。あのメガネの男のステータスを表示するよ?』
いやいやいや、視界を遮らないで! ちょっと、ああもう。
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ボリス ドーフライン Boris Doerflein
AGE 33
H P 28
M P 0
攻撃力 21
体 力 20
守備力 4
素早さ 12
賢 さ 19
<特記事項>
格闘技Lv1
射撃 Lv2
<状態異常>
呪詛
条件:2度目の睡眠
内容:召喚 「Pazuzu」
注意:依代として肉体、対価として魂を失う
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……呪詛!? 呪いか!
「ピンク! メガネに呪いが掛けられている!」
デトレフだ。あいつ、そこら中に呪いをバラまきやがって!
「アースぅ、呪いの内容は?」
「えっと、条件は〝2度目の睡眠〟と。内容は……召喚〝パズズ〟?」
「え……?!」
ピンクが引きつった声を出したのと、ほぼ同時に、メガネの男の体が、空中に浮かび上がった。
黒い霧が男から吹き出し、辺りを包む。
……スキンヘッドとベレー帽は、攻撃をやめ、メガネの方を見て、唖然としている。
「ま、魔王を……召喚?」
ピンクはガタガタと震えだす。
昼間にも関わらず、空は真っ暗になり、遠くで雷鳴が轟いている。
警官隊も、何が起きたのかと辺りをキョロキョロ見回し始めた。
「ピンク、パズズって何だ? 召喚って?」
「アース……パズズは魔界の王のひとり、風の魔王よ……」
口調が戻っているぞピンク。
それほどにヤバい奴なのか? パズズって。
「……パズズが本当に来るなら、この世は終わりよ。誰も止められない」
「いや、俺とピンクの力なら、負けることはないだろ! パパっとやっつけちまおうぜ!」
肩を落とし、俯きがちに首を横に振るピンク。
「勝てない。達也さんは強いわ。でも……」
「でも?」
僕は不死身だぜ。なんたって〝星の強度〟だからな!
っていうか〝達也さん〟って……普通に言っちゃってるし。
「……魔王は、魂を引き裂くわ」
『タツヤ、それはマズい。キミはまだ、魂を守る方法を手に入れてはいない』
忘れてた! そうだよな、悪魔とか魔王って、そっち系の攻撃、得意そうだし。
……メガネの周りに、どす黒い影が差し、頭上に、禍々しく輝く魔法陣が現れた。
カッと目を見開いて、苦しみ始める。
「魂と肉体を奪われようとしているわ」
悲鳴をあげて、グネグネと気味の悪い動きをするメガネ。
関節とか、逆に曲がってるよな、アレ……
「ピンク。今、攻撃しちゃ駄目なのか?」
「呪いが発動した時点で、もう止められない。止めれば別の肉体を乗っ取って、魂を奪うわ」
うわ、それは怖い。
くそっ! デトレフめ。僕たちが追跡する事を恐れて、呪いを残したな?
「来たわ。なんて魔力なの……!」
男は、ゆっくりと地面に降り立った。
そっとメガネを外すと、それをじっと見つめた後、グシャグシャと握りつぶし、周囲を見渡す。
犯人も警官隊も、パズズの異様な威圧感に飲まれて、動けない。
『ふむ……我を呼び出すような術者が、今の世に居ったのかと思うて来てみれば、悪魔の呪いを使っての召喚か。なかなかに面白いが、興が削がれたな』
男はそう言うと、少し残念そうな表情を見せる……メガネの男は、完全にパズズに体を奪われたようだ。あ、魂と、メガネも。
『タツヤ、こういう時にそんな冗談を言えるのはさすがだ』
メガネ以外の外見は、まったく変わっていないが、姿勢が良くなり、所作に気品が感じられる。
魔法陣はスッと消え、黒い霧は晴れた。
しかし、雷鳴は相変わらず、遠く近く響いており、空はどんよりとした雲に覆われて、周囲は薄暗いままだ。
『ほう? 人の子にしては、なかなかの魔力を持っているな』
不意に、こちらを向いて嬉しそうな表情を浮かべるパズズ。
「なかなかの魔力って……ピンクか! マズいぞ!」
『二人か。手始めに、お前たちから血祭りにあげてやるとしよう』
僕もか~い! そうか、MPあるからな僕。精算の時に、MPにも若干割り振ったし。
『面白いな。面妖な身なりをしているが、その体格に見合わぬ魔力量だ。お前たちは魔道士か?』
ピンクは、ただガクガクと震えている。僕も、圧倒的な雰囲気に気圧されて、口が開かない。
『依代の知識を使って喋っておる。言葉は通じるであろう? 我の問いに答えよ』
『そ、そうよ。私は魔道士。でも、この人は魔界とは無関係よ! だから見逃して!』
僕を庇ったのか? いやいや、駄目だ彩歌! 僕も戦うぞ!
『愚かな魔道士よ。我は〝手始めに〟と言ったのだ。誰も逃さぬ。この依代が朽ちて塵になるまで、可能な限りの人間を殺してやろう』
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