プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー

文字の大きさ
122 / 264
5年生 3学期 2月

反対意見

しおりを挟む
 酒屋さんまでの、比較的人通りの少ない場所で、大ちゃんと栗っちは、すべもなく立ち尽くしていた。

「ちくしょう! 俺とした事が油断してたぜ!」

 すごい形相の大ちゃん。
 ユーリは、2人が見ている目の前で、フッと消えたそうだ。

「ごめんね。僕も、何が起こったのか分からないんだ」

 栗っちは、今にも泣き出しそうだ。
 しかし、この二人の目の前で、しかも〝あの〟ユーリを連れ去るなんて、本当に可能なのか?

「友里さんが消えたのは、どのあたり?」

「えっとね、ユーリちゃんは丁度、その電柱の所を、スキップしながら歩いてたんだ」

 目に浮かぶようだ。急に深刻さが和らいだな。いや、何も好転してないんだけどさ……

「俺たちは、その後ろを歩いてたんだよ。そうしたらなー……」

 突然、姿が見えなくなったという。そんな事が有り得るのか? 

「ブルー、どうだ? 何か分かった?」

『物理法則では説明出来ない方法で、こことは違う空間に、連れ去られたみたいだね。異常な方法だけに、手がかりを見つければ、痕跡を辿たどれると思うよ』

「ほんとかよ! 頼むぜ、ブルー! ユーリに何かあったら俺は……」

 唇を噛んで、目を潤ませる大ちゃん。

「やー? 私に何かあったら、大ちゃんはどうするの?」

「もしユーリを傷つけた奴が居たなら、俺は地の果てまででも追いかけて、そいつを……」

「そいつを?」

「ユーリ!!!!」

 うっわ、ビックリした!
 何だよ大ちゃん、急に大声で叫んだと思ったら、ユーリに抱きついたりして。
 まったく。イチャイチャするなら、もっと人目ひとめにつかない所で……

「ってユーリ?!」

 何の前触れもなく、突然ユーリが現れた。何が起きたんだ?!

「友里さん、良かった! 無事だったのね!」

 彩歌あやかが駆け寄る。

「良かった! 良かったね! ユーリちゃん、大ちゃん!」

 栗っちは、嬉し涙で顔がグシャグシャになっている。

「ユーリ、俺! 俺!」

 おっと。大ちゃんも、ポロポロと涙を流している。よっぽど心配だったんだろう。
 しっかりしていても、こういう所は小学生だな。

「やー! ごめんよー。泣かないで、大ちゃん。私は大丈夫だから!」

 大ちゃんの頭を撫でているユーリ。本当に無事で良かった。
 ……しかし、生身なまみだった大ちゃんは仕方ないとしても、救世主である栗っちの目をあざむいて、ユーリを連れ去るとは。

「ユーリ、一体、何があったんだ?」

「あー、それがね。ちょっと問題なんだよー」

 そう言って、ユーリはキョロキョロと辺りを見回す。
 例の〝監視者〟が、見ているかもしれないのか?

「よっし。じゃあ帰ろうか、みんな!」

 そう言うと、ユーリは自分の口元を人差し指で押さえ、そっと足元を指差して、ウインクした。そうか、地下室の方が良いんだな?
 全員、それに気付いたようなので、余計な会話はせず、ウチに向かって一斉に歩き始める。
 ……これはこれで怪しいと思うけどな。





 >>>





 地下室。
 練習場の真ん中にテーブルが現れ、5つの椅子が用意された。
 妹は、身代わりが居ないので、今回は欠席。
 テーブルの真ん中には、派手な装飾の剣と、キラキラと輝く指輪が置かれている。

「……というわけで、たっちゃんの拾ってきた剣は、その異世界を救う、勇者の証だったみたいなんだよー」

 〝異世界の剣〟と聞いた時点で、もしかしたら、そうじゃないかな、とは思ったんだけど、まさか〝監視者〟の標的が、この剣だとは思わなかった。

「ごめん、ユーリ。まさかこの剣のせいで、お前がさらわれたりするなんて……」

「やー。たっちゃんのせいじゃ無いじゃんかー。私が触っちゃったせいだし」

 ユーリの話では、この聖剣は〝神様〟の魂が練り込まれていて〝邪竜の王〟を封印することが出来るという。
 使い手となった勇者以外が、この聖剣に触れた場合、神の裁きにより、灰になって死ぬらしい。
 手を火傷やけどしたぐらいで済んだのは、ユーリの人間離れした能力のおかげだ。

「しかし、驚くよなー! 次は異世界の邪竜だぜー?」

「えへへー。普通の人には抜けないけど、主人公には抜ける剣って、ゲームみたいだよね。不思議だね」

『刀身を、この世界に向けて貫通させる事で、力を持つ者を選ぶための、試練としたのだろう。迷惑な話だね』

 あれ? ブルー、ちょっと怒ってる? 
 ……まあ、こんなモノをブッ刺されたら、怒りもするよな。

「達也さんは、台座から抜かなければならない剣を、反対側から引き抜いた事になるのね」

 そうか。彩歌の言う通りだな。
 ……多くの人たちが見守る中、台座から剣を抜いて、
 〝おお! やはりそなたは、選ばれし勇者!〟 
 って、なるはずの剣を、こっそり〝地中側〟へ引っこ抜く……どんな勇者だよって話だ。

「この剣を盗んだという事で、僕を探しているのかな?」

 ……だとしたら、誤解を解いて、速やかにお返ししよう。

「いやー、さっきのユーリの話だと〝使い手〟が決まって以降に、それ以外の者が触れると、灰になるって話だから、もう、たっちゃんが勇者に選ばれてしまったという事だろー?」

「ですよねー……って事は、僕、異世界で邪竜の王と戦うのか?」

 ……いよいよ、ジャンルの不明さに拍車が掛かってきたぞ。
 〝異世界ファンタジー〟にチェック入れなくても良いのかな?

「えへへー。異世界へは、折角だから、みんなで行かない? その方が早く終わるよね!」

「やー! それいい! 行こうよー!」

「マジで?! それは心強いな!」

 ……みんなで行ければ、だけど。
 まあ、ユーリの話だと、その〝ノウマズ〟っていう勇者は色んな世界の人を自分の世界に連れて行っては、剣を抜かせようとしてたみたいだから、上手く交渉すれば大丈夫だとは思うけどね。

「あ、でさでさ! その、ノウマズ・ロクドナスっていう人が言うには、あと200日しか、邪竜の王を止めておくことが出来ないらしいんだよー」

「あー。200日って事は、夏休みぐらいだなー」

 大ちゃんが、指輪と聖剣を見ながらつぶやく。
 夏休み……幸い、異星人との戦闘も、分岐点も済んでいるな。

『タツヤ、異世界の事は気になると思うが、まずはこちらの予定を優先して欲しい』

「もちろんだ、ブルー。地球が壊れたり、侵略されちゃったら、おしまいだからな」

「あとさー。〝異世界〟って言うからには、この世界とは、違う次元とかだったりするんだろ?」

『さすがだね、ダイサク。タツヤとアヤカ、そしてダイサクのベルトは、地球からのエネルギーを受けて、能力を発揮している。地球から離れれば、いずれ、エネルギーが枯渇するよ』

「あ、そっか。じゃあ、僕の〝星の強度〟とか、彩歌さんの〝高耐久〟とか、大ちゃんの〝機械仕掛けの神デウスエクスマキナ〟も、使えなくなるのか?」

『私が意識的に時間を掛けて、エネルギーを蓄えておけば、ある程度は活動可能だ』

 〝充電をしっかりする〟的な感じかな。

「そういえば、私が魔界へ帰っている間も、魔力はスゴいスピードで回復していたわ」

『いや、アヤカ。〝魔界〟は、地球と地続きか、とても近い位置にあるようだ。キミが魔界に帰っている間も、心臓には、常にエネルギーが取り込まれ続けていたよ?』

「マジか!? 魔界こそ〝異世界〟ってイメージなんだけど」

 そういえば、悪魔も日本語を喋ったりするし、案外、日本のどこかに在ったりするのか?

「ブルー、エネルギーをギリギリ一杯まで蓄えて、どれくらいつんだ?」

『そうだね。大体の目安だけど、アヤカなら、火球の魔法を2000万発ぐらい。ダイサクは、先日のガロウズ星人戦と同じくらいの戦闘を270回は行えるだろう』

 それは〝一生分〟と言うんじゃないか?

「僕はどうなんだ?」

『キミの能力は、消費エネルギーが桁違いだ。フルタイム・フルパワーだと、1年と2ヶ月ぐらいが限界だろう』

「いや、充分だろ! そんなに長期間、行くつもりはないよ」

 異星人に侵略されるか、分岐をスルーし過ぎて地球が壊れちゃうじゃないか。

「それじゃ、異世界人〝ノウマズ・ロクドナス〟に連絡をとるのは、異星人に勝って、分岐点を乗り切った、その後という事で良いかな?」

「俺はそれでいいぜー?」

「やー! 楽しみだなー!!」

「えへへー! 大賛成!!」

「私も賛成!」

『……反対だな』

 声のぬしは、練習場の奥にある、射撃用のまとを、珍しそうにジロジロと観察したり、で回したりしている。

『私は〝ノウマズ・ロクドナス〟……貴方達からすれば、異世界人という事になる』

しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...