プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー

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5年生 3学期 2月

マジック・フリー

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 こちらを見てニヤニヤしているノーム。
 あいつ、まだまだ余裕だな……きっと、まんまと僕が〝罠〟に掛かるとでも思っているんだろう?
 目の前に、普通の人なら死んじゃうような〝結界〟が3枚あるのは、ブルーに聞いて知ってるんだぞ。
 ……僕はそんなものに触ったって死なないんだけどな。

「ちょっと良いかな、大精霊ノーム様?」

 僕はピタリと立ち止まり、ノームに話しかける。
 ブルーによると、結界まではあと10歩ぐらいだ。ここらでちょっとらせてやろう。

『何だ小僧。命乞いなら聞かんぞ?』

「それはいいよ。僕もお前の命乞いを聞く気は無いし」

 ノームは眉をひそめた後、おもむろに両手を広げ、呪文を詠唱する。おっと、何をするつもりだ?

あるじよ。わたくしめが黙らせましょうか?』

「いや、いいよパズズ。とりあえず、コイツが僕の〝正体〟に気付くまで、遊んでやるさ」

 要らないかもだけど、今回は〝対魔法用〟の訓練だ。それに、コイツの魔法を……

「達也くん、それは催眠系の精霊魔法だ! 眠らされてしまうぞ!」

 エーコが叫ぶ。
 ……おっと、からで来たか。頭良いな。
 でもまあ、面白そうだから付き合ってやろう。

「何をしているんだ達也くん! 早く対抗魔法を!」

「エーコ。達也さんは、魔法を使えないわよ?」

「何だって?! 魔法を使えない奴が、どうやって悪魔からあんたを助けたんだよ?!」

 世界観を壊しちゃってごめんなさい。〝殴る蹴る〟で助けました。

「フフ。見ていれば分かるわ」

 いや、どうかな? 見ててもサッパリ訳が分からない戦いになるかも知れないぞ? 〝あっち向いてホイ〟とか。
 ……しかし、さすがにエーコは〝精霊を宿す剣〟の使い手だけあって、この〝精霊魔法〟とやらを、よく知っているみたいだな。
 僕には、なんて発音してるのか、読み取れさえしないのに。

『永遠の眠りにつくが良い!』

 ノームの頭上から現れた、何かモヤモヤした物にまとわり付かれる。
 これを食らうと一般的には眠くなるのか? でも、〝不眠不休〟を持つ僕には、やっぱり全然効かないな。

「達也くん!」

 エーコの悲痛な叫び声が響く。

「呼んだ?」

「何で寝ないんだ! 達也くん?!」

『眠らないだと?! 一体どうなっている?』

 エーコとノーム、ほぼ同時に叫ぶ。ツッコミ役が二人居るのは、なかなか新しいな。

「最近、不眠症でさ。オッサンの子守唄なんかじゃ、寝れないんだよね」

 不眠症でなくても、オッサンが子守唄を歌う状況なんかで、安心して眠るのは無理だけど。

『ふざけた小童こわっぱめ。先程の圧縮岩弾プレスロックに耐えた事から見ても、複数の魔道具で武装しているといったところか?』

 ん~、ハズレ!
 ……この分だと、正解が出るまで結構なヒントを出す必要がありそうだな。

『どういうカラクリか知らんが、人間風情がいつまでも儂の魔法を防ぎ続けられると思うな!』

 いや、防ぐつもりは無いんだ。僕はこれから、お前の魔法を、片っ端から受けまくる。えっと、例えるならアレだ。〝打たせ湯〟? 

『タツヤ。考えたね。魔法を受ければ受けるほど、キミの魔力の上限が上がる』

「フフフ。気付いたかブルー」

 そうなんだ。前に彩歌あやかが言っていたが、魔法による攻撃を受ければ魔力量が上がるらしい。
 最強の精霊魔法を無料タダで受け続けられるなんて、超お得じゃないか!
 ……そうとは知らず、またしても妙な発音の呪文を唱えているノーム。さて、お前は僕をどこまでパワーアップさせてくれるんだ?





 >>>





 ……えっと、あれから5年の月日が流れた。

『タツヤ、それは無い。そこまで私とキミが不在の状態が続けば、さすがに地球が無くなってしまう』

 そりゃそうだ。
 エーコは青い顔で、そして彩歌はうっとりと、こちらを見ている。
 ノームはあれから、10種類ほどの魔法を、それぞれ2~30発、僕に向けて放った。
 さすがは〝大精霊〟。どの魔法も、僕をチクっとさせる程の強力なものだった。

「あはは。タツヤ、その表現は面白いね」

 ……今気づいたけど、僕がダメージを受けた時の〝チクっとする感じ〟は、攻撃の強弱には関係無い気がするな。
 一律に同じぐらいだ。

『キミは地球と同じ強度を持っていて、通常のダメージで痛みを感じる事などない。しかし、攻撃を受けたにも関わらず何も感じないというのは、生物として不自然だし、万が一の危険を察知できない恐れがある。その為、ある一定のダメージを受けた場合、それに気付くようにチクリとした感覚を受けるように出来ている』

 そうだったのか。
 まあ、痛いってわけでもないし、悪意のある攻撃に対して全く気付かないというのは問題だしな。
 おや? またチクっとした。さすがにそろそろネタ切れか?

『ぬうう……! お前はどうやって儂の魔法を防いでいるのだ?!』

 いやいや、防いでないって。
 ずっと〝源泉掛け流し〟だぞ?

「ノーム、もうネタ切れか? それならそろそろ、こっちから行くぞ?」

 1歩、2歩と、近づく僕を見て、ニヤリと笑うノーム。
 あからさまだな。そんなんじゃ〝罠が仕掛けてあります〟って言っているようなもんだぞ。

『タツヤ。あと8歩進むと、結界に接触するよ。解除しようか?』

 小さい声で、ブルーが言う。ノームには聞こえていないだろう。僕も小声でささやく。

「ブルー、その結界って、僕が殴って〝派手にぶっ壊す〟とか、出来ない?」

『残念ながら、物理的な干渉は出来ない。今のキミでは、素手による攻撃での破壊は不可能だ』

 そっか、残念だ。カッコ良くパンチで粉々にしたら、面白いと思ったんだけどな……
 ……あ! イイこと思いついた!

「ブルー、じゃあさ、タイミングを合わせて……」

『……なるほど。タツヤ、やはりキミは面白い事を考えるね。では、あと2歩進んだら、立ち止まって目の前にこぶしを突き出してほしい』

 ノームのニヤニヤが最高潮に達した。
 ……ああ気持ち悪い。
 だが残念だったな。お前が思っているような事にはならない。
 なぜなら僕は、ここでピタリと立ち止まり、いつものあの技を繰り出してしまうからだ。

「アース・インパクト!」

 そう。いつもの〝ただのパンチ〟。
 しかも今回は、見えない壁を、思い切りぶん殴った〝フリ〟だ。
 ……と同時にブルーが、お正月の時の要領で、結界を強制解除する。
 パリン! という音と共に、ガラスのように、結界は粉々に割れ落ちた。
 パッと見、僕が殴って砕いたように見えただろう。

『な……何だと!? 馬鹿な……! 小僧、お前何をした!?』

「あれ? 分からなかった? じゃあ、あと2回やるから、よーく見てろよ」

 残る2つの結界も、同じように砕いてみせる。驚きを隠せないノーム。作戦成功だ。

「アヤ! 何だ今の? あんなの見たこと無いぞ!?」

 彩歌あやかに食って掛かっているエーコ。

「そうね。私も初めてみたわ」

 クスクスと笑う彩歌。さすがにもう、これ位では驚かないか。

『おのれ……! 小僧! 魔法の効果を無効にする何かを持っておるな?』

 わなわなと小刻みに震えながら、イラついたようにノームが叫ぶ。
 でも残念! それもハズレ。
 ……いよいよネタばらししちゃおうかな?

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