プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー

文字の大きさ
133 / 264
5年生 3学期 2月

フリー・マジック

しおりを挟む
 源泉かけ流し。
 ……じゃなかった。
 魔法もずいぶんと受けたし、大精霊様もそろそろネタ切れみたいだし、パッパッと片付けちゃいましょうかね。
 そう思った矢先に、ノームが口を開いた。

『魔法が効かぬなら、これはどうだ?』

 新たな呪文を唱えるノーム。
 おっと、まだ何か持ってるんじゃん。早く出せばいいのに。

いでよ、ゴーレム!』

 ノームが地面に片手を付く。
 グムグムという〝どこかで聞いたような音〟が響き、身の丈3メートルはある〝土の巨人〟が現れた。

『そいつは土で出来た人形だ。恐ろしく頑丈で、怪力だぞ? ……いくら魔法を無効に出来ても、物理攻撃は防ぎようが無かろう?』

 まだ笑う余裕があるのかノーム。
 〝魔法を無効〟って、見当違いな事を言いやがって。
 ……ん。あれ? 何だろう、この感覚。
 このゴーレムとやらを見ていると、なにかちょっと頭の隅がチリチリする。
 何かを思い出せそうな不思議な感じだ。これは一体?

「ブルー、ちょっと良いかな?」

 思考がフル回転を始めた。頭の隅にあったひらめきが、さらに次の閃きを呼ぶ。
 思考が……連鎖する! 爆発する!!

「僕、もしかして解ったかも知れない。ブルーの使う地球の力って、こうだよな?」

 僕は地面に目を向けて、指差す。
 自分でも不思議なほどに〝その力〟の使い方が分かる。
 ほら! 床の石畳いしだたみの隙間から、土がボロボロと湧き出して来た!

『なんだって?! タツヤ……まさかキミ……?!』

 僕は、ゴーレムをもう一度見て、確信する。
 これは〝僕の知っている力〟だ。
 さっきからノームが使っていた〝精霊魔法〟も、全部分かってしまった。

「なんだ、あれも土人形か……同じだ。さっきの呪文でそれが出来るという事は……」

 僕の脳裏に、土の力を操るための図式が浮かぶ。なんで今まで解らなかったんだ?
 空中に岩を出現させるには……簡単だ。こっちの力をちょっと借りて、こうだろ?
 ……ほら、出来る。空中に無数の大きな岩が現れた。

「なんだ。呪文ってそういう仕組みか……なら〝要らない〟な」

 何も唱えなくてもいい。
 要は、力の借り方とその使い方だけだ。
 ……で、この岩を圧縮して硬くするんだろ?
 こっちの回路をこう繋ぐ。
 力はもっと〝右上〟から借りて、こうだな?

『タツヤ、キミはいったい?!』

 巨岩は、全て圧縮されて小石サイズになった。実に簡単だ。

「ん? 何を驚いてるんだブルー」

 土人形とゴーレムが一緒なら、他のも僕に出来るはずだろ。
 よし、さっきノームがやったよりも小さくなるまで圧縮できたぞ?
 どれどれ、試しに撃ってみるか。えっと、引き金はこうかな。

穿うがて」

 次の瞬間、目の前のゴーレム目掛けて、全ての岩が撃ち出される。
 凄まじい轟音と共に、ゴーレムはちりになった。
 朦々もうもうと上がる砂煙が収まるまで、誰一人、動く事も、声を出すことさえ出来なかった。

「なるほど。じゃあ、あれは……そうか、あっちをこう繋ぐのか」

 さっき見た、全12種類の精霊魔法を思い出してブツブツとつぶやいている僕を除いて。

詠唱破棄えいしょうはき……だと??!!』

 ん? やっと喋ったな。けど違うよ、ノーム。

「魔法じゃないんだ。だから、詠唱破棄とかそういうのじゃなくて……」

 僕が両手を目の前にかざすと、さっきノームが使った12種類の土魔法が全て同時に発動し、ズラリと並ぶ。
 ゴーレムも、あいつが作ったのより強そうだ。

『タツヤ! 〝使役しえき:土〟を、自分で習得したのか?!』

 そうだよ、ブルー。
 先日の〝精算〟で開放した、火・水・風を自在に操る力。
 それと同じ、土を操る力を、僕は今、手に入れたんだ。
 だからこれは、さっきノームが魔法で呼んだ力と同じものだが、魔法じゃない。
 ……僕の力で呼んだ〝大地の力〟だ。

『ば、化け物か!? いや、この力は……まさか神?』

 結局、正解にたどり着かなかったな、ノーム。
 罰ゲームは決めてなかったけど、どうしようか。

「神より上の存在って、知っているか?」

 口を開けたままのノーム。
 その〝大地の力の頂点〟に〝大地そのもの〟であるブルーが語りかける。

『〝神〟は、生物を導くために存在する。犬の神、猫の神、馬羊猿鳥うまひつじさるとり、それぞれに神がいる。でも、それは生命が芽吹き栄える〝星〟ありきの話だよ。しゅついえれば、神もまた消える。だから星は、神よりも上位の存在なんだ』

 その声を聞いて、ハッとした表情で震え始めるノーム。

「ほ、星の化身……!」

 膝と両手をつき、ひたいを床に擦りつけて動かなくなるノーム。
 降参……かな?
 僕は12個並んだ〝使役:土〟の効果を片手で消し去った。

「そういえば〝宇宙〟とか〝星〟を作ったのは、〝神様〟じゃないのか? ブルー?」

『うーん。それは表現が難しいんだ。〝神〟というくくりが、広い意味で使われ過ぎだからね。生物から見れば、この世界を作ったのは〝神〟だが、私やキミから見れば、もっと上の存在だよ』

「部長も専務も社長も会長も、全部〝上司〟って呼んじゃってる感じか?」

『なるほど。さすがだタツヤ。わかりやすいね』

 ブルーがいつものように笑っている。それをさえぎるように、床に頭を付けたままノームが口を開いた。

『恐れながら申し上げる。このノームの身の程を知らぬ振る舞い、もはや覚悟は出来ております。どうぞ、お好きに……』

 消すなり、封じるなり、吸収するなりってやつか?
 ……精霊のリアクションは、グレードに関係なく、同じなんだな。
 まあ、コイツのおかげで、大地の力を使うコツが解ったし、消すのは勘弁してやるか。

「エーコさん、ノーム、る?」

 未だに、あんぐりと口を開けて呆然としているエーコに聞いてみた。

「た……達也くん! 大精霊をそんな、作りすぎた野菜みたいに言うのか……?!」

 ありゃ。そんな軽い感じだったかな。

「それ以前に、大精霊を宿せるようなエレメンタル・ネストなど、そうそう無いんだ。それこそ、神が作ったような剣でもない限り……」

 そっか。残念だな。

「それに私にはもう、グアレティンが居るしな!」

 その言葉を聞いて、心なしか嬉しそうな表情の、火の精グアレティン。
 良いコンビになりそうだ。
 ……さて、それじゃノームをどうするかだな。
 吸収って、どんな効果があるんだ?

『タツヤ、気付いているとは思うが、キミは地球そのものだ。〝その程度〟の土の力をキミが取り込んだ所で、無意味だ』

 その程度ってひどくない? ノーム泣いちゃうぞ?

「達也さん。もしかして、あの異世界の聖剣に、ノームを宿せないかしら?」

「異世界の……? そうか! 神が作ったというあの剣なら、いけるかもしれないな!」

しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

処理中です...