プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー

文字の大きさ
213 / 264
春休み

変わり果てた姿

しおりを挟む
 俺の前に、黒いスーツの男が迫る。
 手に持っているのは、何かの道具か?
 ……どうせ、ろくなもんじゃないんだろうなー。
 ヤツはゆっくりゆっくり、いやらしい表情で近付いてくるぜ?

「くッ! 大ちゃん……! やめろ、この悪党め!」

 そう、俺は九条大作くじょうだいさく。大ちゃんって呼んでくれてるみたいで嬉しいぜー。
 いま俺は、絶体絶命の大ピンチだ。これはさすがにマズいだろ。

「さて。この子どもは、何回で死ぬかな?」

 〝何回〟と〝死ぬ〟という言葉、そして見たこともない〝道具〟から考えて、俺に何かしらの方法でダメージを与えて、見せしめにするパターンか? とにかく、アレが何なのか、どんな威力なのかは、一撃食らってみないと分からないなー。
 〝道具〟から、アンテナのような物が伸びて、俺の右首筋くびすじに当てられる。
 あー、食らわなくても、何なのかは分かったぜ。
 電気だろ?

「ぐあぁぁぁあああああああっ?!」

「やめろおおおおッ!!」

 いででで……! ほらな! やっぱ電気だ。コゲたようなニオイが立ちこめて、体がまだ痺れているし、何より首筋が焼けるように熱い。
 ……これはマズいな。ガチなヤツだ。今ので心臓が止まらなかったのがラッキーなぐらいだぜ?

「ほほう。死ななかったな? どうかな、この〝電撃マシーン〟の味は」
 
 黒服はニヤリと笑うと、後藤ごとうさんの方を向いて〝電撃マシーン〟のアンテナをくゆらせる。
 どうかなって……あえて言うなら、ダサい名前だな、それ。

「良かったな。もう一度、子どもを救うチャンスができたぞ。さあ、お前は何者だ? どこから来て、どういう組織に所属している?」

 効果的なやり方だぜ。
 たっちゃんたちは……まだだな。間に合わねー!
 これはもう、さすがに俺、死ぬかもしれないぜ。

「さあ、二回目、いってみようか」

 今度は、左の首にアンテナが当てられた……
 これ、回数っていうか、運だもんな。心臓が止まるかどうかは、電流の流れ具合だけだろー。

「ああ……大ちゃん! どうしたらいいんだ! 俺は、俺はッ!」

 まあそうだよな。〝秘密組織〟の一員が、そう簡単にペラペラしゃべるわけにいかないだろ。
 
「ぎゃあああああああぁぁぁぁ!」

 こ、こりゃキツイな! 痛いってもんじゃないぜ。

「ちくしょおおぉぉぉおおお!!」

 ガタガタと椅子を揺らして暴れる後藤さん。もちろん、その程度で身動きが取れるような拘束のされ方ではない。
 鉄が焼けたようなニオイが漂い、鈍い痺れは体のあちこちを痙攣させる。

「おほッ! まだ死なないか? 有能な人質だな!」

 黒服は、嬉しそうに、最高に気持ちの悪い笑顔でアンテナを振り回す。

「や……めろ……」

「あーん? 何だって?」

「やめてくれ……頼む……!」

 食いしばった口元から血を滲ませる後藤さん。仲間と俺と、どちらを取るかで、苦悶の表情を浮かべている。

「話す気になったか? それ以外に、コイツの助かる道はないぞ? ん?」

 嘘だなー。しゃべったら、まず俺が殺されて、次に〝自白剤〟だ。洗いざらい喋ることになる。
 ……つまりは、まあ万が一にも無いけど、薬が効き過ぎたり、合わなくて死んでしまった時のための保険みたいなもんだ。
 あとは、お遊びだろ? ……ひと手間、余分に苦しめるんだから趣味が悪いよなー。

「……喋る」

「何だって?」

「喋るから……その子を助けてやってくれ」

 ……本当にいい人だなー、後藤さん。
 さて、と。もうすぐ詰みだぜ。あとはもう、たっちゃんたちが俺の予想より早く来てくれる以外、助かる可能性は無いか。時間を稼ぐにも、二、三分が限界だろうしなー。

「俺は後藤千弘ごとうちひろ。〝特殊武装とくしゅぶそう戦隊せんたいマンデガン〟の一員だ」

「……よし、お前らの本部と、バックボーンについて話せ。コイツのためにも、嘘は言うんじゃないぞ」

 その二つを喋った時点で、俺は死ぬなー。
 ……黒焦げかもだぜ?

「俺たちの拠点は……〝喫茶ガブロ〟だ。そして……くッ!」

 後藤さんが言いよどむ。余程の秘密事項なのだろう。

「ふふん。言えないか? では……」

 鼻で笑ったあと、アンテナを俺の胸に当てる黒服。マズいぜ、この位置は即死だ。

「待て! 言うから待ってくれ! 香川県警かがわけんけいだ! 俺たちの所属は、香川県警特殊科分室とくしゅかぶんしつだ!」

 おいおいおい! マジかよ?!
 魔界の件もそうだけど、日本政府って、意外と色々やってるんだなー!

「なるほどな。工作員からの報告の中に、何やら隠蔽いんぺいされたような形跡があったのは、お前らの情報だったのか」

 さすがは悪の秘密組織〝ダーク・ソサイエティ〟だな。お約束通り、警察にも入り込んでるか。

「な……何だと? まさかお前ら、警察にスパイを?!」

「あーはっはっは! そうだ。我々はありとあらゆる場所に構成員を送り込んでいる」

 こういう所は、逆に見習わないとダメだぜ。ある程度驚いたフリをすれば、相手を無駄に怒らせないで済むからなー。
 ……まさか、本当に驚いてないよな、後藤さん?

「よし、大体の情報は頂いた。残りは特製の自白剤で、じっくり聞き出してやる」

 黒服はアンテナを俺の胸に当てた。
 ほらな、言ったとおりだ。

「なっ?! 待て! 約束が違うぞ!」

「そんな約束、俺が守ると思ったのか? とんだ平和ボケ野郎だな!」

 ……同感だ。でも、俺は好きだぜ、後藤さん。

「出力を最大に上げて、と。さあ、黒コゲになれ!」

「やめろおおおおおぉぉぉぉッ!」

 黒服は〝電撃マシーン〟を操作して出力調整をしたあと、スイッチに手を伸ばす。
 だめかー。
 悪ぃな、ユーリ……たっちゃん、栗っち、藤島さん。俺はここまでだぜ。

「待たせたわね!」

 黒服の手に、真紅の薔薇バラが突き刺さり、持っていた〝電撃マシーン〟が足元に転がる。

「くそっ! 誰だ?!」

 薔薇バラが刺さったままの手を押さえながら、辺りを見回す黒服。この声は……!

「あなたたちの悪事もここまでよ!」

 慈許音じもとね隆代たかよさんだ! 助かったぜー!

幼気いたいけなガキンチョに何て事するんじゃい! 許さんぞ!」

 土田端どたばた和久わくさんも一緒かー! やっぱりアンタも仲間だったんだなー!
 
「すまない二人とも! 助かったぜ!」

 後藤さんが、安堵あんどの表情を見せる。

「ええい! 出てこい戦闘員! 敵襲だ!」

 声を聞きつけて、四方の扉からドヤドヤと現れる黒服たち。すげぇ数だなー!
 隆代さんと和久さんは、変身せずに戦っている。おおー、分かってるな! やっぱヒーローは、ある程度、素手で戦闘員と戦っとかなきゃだよな!

「……大ちゃん、大丈夫かい?」

 不意に、背後から聞き覚えのある声が聞こえた。この声は〝喫茶ガブロ〟のマスターだぜ。

「振り向かずに聞いてくれ。返事もいらない。私は〝半透明マント〟で姿を隠しているが、千弘くんの所までは、さすがに行けない」

 そりゃそうだ。見つかっちまうぜ? 半透明なんだからなー。

「今からキミのロープを切る。すきをみて、千弘くんを助けてやってくれ。これを使ってね」

 そう言って、マスターは俺の手にゴツめのブレスレット取り付けた。
 ちょっと待った! これってもしかして……?

「いいかい? キーワードは…………だ。そして、武器は……」

 マジでかー? 
 ……仕方がない。やってみるか!

「ええい! 何をしているんだ! たかが人間二人に手こずってどうする!」

 俺と後藤さんから、注意がれていく。もう一息だぜー!

「もういい! 私が直接、そいつらを始末してやる!」

 いいぞ、これだけ離れれば……!

「そろそろね! ワッ君、やるわよ?」

「おう! どんと来いじゃ!」

 やっぱりなー。わざわざ変身せずに戦ってたのは、俺たちから注意を逸らすためだぜ。いきなり変身して強さを知られたら、すぐに人質を盾にするからな。
 ……だから、チャンスは一度だけだ。やるぜー!

「いくわよ! 〝オゴッキャゲル・チェンジ!〟」

「おうよ! 〝オゴッキャゲル・チェンジ!〟」

 二人を、赤と黄色の光が何重にも包んでいく。

「〝マンデガン・レッド〟推参!」

「〝マンデガン・イエロー〟登場!」

「なんだと! 変身した?! ……イヌとゲジが見たっていうのは、お前らか!」

 変身した二人を見て、俺と後藤さんを盾にしようと振り返った黒服。今だぜ!
 俺はマスターに教わった合言葉を叫ぶ。

「〝オゴッキャゲル・チェンジ!〟」

 周りに現れた光の輪が、俺を何重にも包む。

「〝マンデガン・ベージュ〟降臨!」

 全身を包む乳白色のスーツに、所々、巻き付くような数本の白いラインが入っており、頭部、胸部、腰回り、腕周り、ひざに、白くて小さめのプロテクターがついている。
 よし、このまま後藤さんを助けて……

「ってか、もっと何かあるだろ色! なんでベージュだよ?!」

しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

処理中です...