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春休み
故郷の匠
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ああっ! もう二度と食べられないかも知れないと思っていた〝チーズかまぼこ〟が、私の目の前に!
「この日を、どれだけ待ち望んた事か……!」
ふわああああっ! お、美味しっ! 何という優しい歯応え! 濃厚なチーズを適度に内包した様は、まさに宇宙の縮図! そしてそれを噛みしだいた時に口内に伝わる、かまぼこ部分とチーズ部分の感触の違いッ! これは神の恵みか悪魔の罠か? 延々と繰り返される無意味な舌先での判別という遊びに、答えなど有るのか? いや、無い! しかし、答えが無いからこそ、狂おしい程のその感触の違いを人々は求めてやまないのだ! 永遠に解く事の出来ない究極のパズルとも言える宴に身を任せ続けようではないかッ! 私は! 私は帰ってきたのだッ!!
「チーかま眺めながら、なに冷蔵庫の前で涙ぐんでるんだ?」
うっわ! びっくりした!
なんだ、アニキか。
「落ち着いたか?」
「……うん」
私は、30年振りに、この世界に帰って来た。
あっちの世界は、時間の流れが遮断されていたから〝ほぼ旅立った時間〟に戻って来れたし、和也さんと私の能力で、子どもの姿に戻る事も出来た。
つまり、私以外から見れば〝私には何も起きなかった〟のと同じなのよね。
……でもアニキは、そんな〝何も変わっていない〟私の事を、なぜか理解して、気遣ってくれている。
「そうか。まあ、何かあったら言えよ」
確か兄貴は、15年先の未来から、戻ってきたとか言ってたよな。その体験が、今回の件を理解しやすくしているのかもしれない。
ん? まてよ? 私は30年以上、あの世界に、閉じ込められていたんだよね。
「…………フッ、勝ったな!」
「何がだよ?!」
「分からない? 今や、私の方が、年上なのだよ? これからは〝お姉様〟とお呼びなさい」
むしろ、いつから私が〝妹〟だと勘違いしていた?
既に、立場は逆転しているのだ。
ふははは! 跪け! 媚びへつらえ!
貴様よりも長く生きた、私こそが〝姉〟なのだ!
「……………お姉様」
ぎゃああああっ?!
鳥肌がッ! ゾワゾワッて鳥肌がッッ!
「……お姉様?」
いぎゃあああぁぁ!!
気持ち悪いッ! 何よコレ! 何なのッ?!
「お姉様ぁん!」
ひいぃぃぃぃッ?!?!
「……やめてください、お願いします」
アニキがニヤリと笑う。
くっそー! 私はヤツの手のひらの上で、踊らされていたのか!
「おっと。遊んでる場合じゃなかった。大ちゃんが呼んでるぞ」
アニキが、思い出したかのように言う。
そうだ。私の着ていた鎧を、大ちゃんに預けたんだった。私が子どもサイズになってしまったんで、ブカブカなんだよね。
「大ちゃん、かなりテンション上がってたからな。〝こんな材質見た事ないぜー〟とか言って」
あれは〝潔白の鎧〟っていう、伝説級の鎧なんだ。
なんでも〝戦いの女神〟が悪魔と戦うために、最高神から与えられた幻の金属〝アルブタルム〟を使って作られたとか。
いやー、苦労してゲットしただけあって、スゴい鎧なんだよね。何せ〝鎧を白以外に染めようとする攻撃を全て白紙に戻す〟って、ブッ飛びチート性能なんだから。まあ、おかげで、敵を斬って鎧に返り血が付くと、それも無かった事にされちゃうから、汚れないように戦う癖がついちゃったけど。
「いやー、楽しみだな! どんなスーツになるんだろう」
…………はい?
「やっぱり、元々が白い鎧だから、お前は〝ホワイト〟なんだろうなあ」
……えーっと…………え?
「戦隊モノで仲間が増えるパターンは良くあるけど〝ホワイト〟は珍しいよな!」
ええええッ?!
「ちょっとまって! スーツって何?!」
「……ん? 〝救星戦隊プラネット・アース〟のスーツに決まってるだろ?」
「私の鎧と、そのスーツ、何の関係があるの?!」
嫌な予感しかしない。でも、まさかね……?
「何を言ってるんだ? お前の鎧を改造して、スーツにするんだろ?」
はあああああああっ?!
「なななな? なんで?! どうしてそんな事になっちゃうわけ?!」
おかしいおかしいおかしいおかしい!
〝伝説級の鎧〟なのよ?
それを、あの〝イカれたコスプレ〟に改造?!
「〝どうして〟も何も、お前が言ったんだろ? 〝私が着れるようにヨロシク〟って……!」
「違ああああぁぁぁう! サイズ! 私が言ったのはサイズの事だよ?! どうして魔改造しちゃうの?!」
「…………お前、あの鎧姿で、人前に出るつもりだったのか? 恥ずかしいヤツだな」
「アニキが言うなああああっ!!」
>>>
あまりの衝撃に声が出ない。
大ちゃんに腕時計を渡されて、言われた通りに〝変身〟と叫ぶ。
う、わ……あ。
本当に、変身しちゃった。
自分の姿は見えないけど……いや、むしろ見たくない。
「……どうかなー? 戦隊のカラーリングに合わせるために、シルバーに塗装するのが大変だったぜー!」
私の……鎧……
シルバーになっちゃったの?
「か、かっけええええ! やっぱり〝ライン〟と〝プロテクター部分〟は白か!」
……なんでそんなに嬉しそうなんだよアニキ。
あれ? っていうか〝潔白の鎧〟に色を塗るってどうやったの?! 〝邪竜の王〟の豪炎を受けたときですら、真っ白なままだったのに!
「コンセプトは〝勇者〟だぜ。ヘルメットや肩、肘、腰、膝のプロテクター部分は、邪魔にならない程度に、甲冑を模した作りにしてみた」
ああ……! 〝伝説級の鎧〟が、妙なデザインのコスチュームに!
なんで、こんな事に……?
「ブルー、鏡を出してやってくれ。いやー、しかしカッコいいなあ!」
あーもー! だから、鏡なんか見たくないって!
ちょっ! ジロジロ見ないでよアニキ……
カッコいいわけ無いじゃない。
「さすがね。ここまで洗練されたデザインになるなんて」
彩歌ちゃんまで……
ん? 洗練されたデザイン?
「やー! るりちゃん超・勇者っぽい! サイコー!」
ユーリちゃん?
そんな……はず……
「えへへ! るりちゃん、スゴくカッコイイし、かわいいよ!」
和也さんっ?! か、かわいい?!
いやいや、まさかそんな……
『ルリ。鏡を用意した。見てみるといい』
いえいえブルーさん、鏡なんか出されたって……え?
「これが……私……?」
シルバーを基調に、所々、白いラインが入った流線型のボディが近未来感をアピール。
ヘルメットは、ヒーローのマスクに、フルフェイスの兜をミックスさせたようなデザイン。額部分には、緑色の宝石が埋め込まれていて、髪飾りのようにも見える。
「……か、かっこいい!」
「だろー? 特に額の宝石は、魔界産の〝魔除け〟らしいぜ。栗っちとペアで行動する時は、スーツの色味と合うからベストじゃねーかな!」
「カズヤさんとベストマッチ! スゴく……イイ……!」
……はっ! で、でも! こんなに原型を無視した改造をして、その上、塗装なんかしちゃったら、せっかくの特性と性能が!
「あー、それから〝変色〟をトリガーにして、全ての事象を無かった事にするっていう機能だけど……」
それ! それじゃん!
もー! いくら見た目がカッコよくなっても、そこがダメになっちゃったら意味無いよね?
「あのままだと、こっちからの攻撃まで無かった事にされちまうから、トリガーを〝自分以外が起点の変色〟に絞っといたぜ? しかし、よくあんな〝ポンコツ機能〟の付いた鎧を着て戦ってたなー?」
あ、あうあ……?!
ちょ、まっ?!
「そ、そんな事が出来ますのん?!」
〝伝説級の鎧〟だよ?! それを〝ポンコツ〟って!
「んー? 簡単だったぜー? 〝魔法〟とか〝呪い〟とかじゃなくて〝素材そのものの性能〟を使って組み上げた機能だったからな。むしろあの鎧を作ったヤツは、せっかくの〝素材の持ち味〟を殺しちまってたよなー」
辛辣ッ?!
こ、これがウワサの〝名工神〟なのかあ……!
「おっと。それから、預かってた異世界の道具の中に、結構スゴめの薬があったんだけど……」
大ちゃんが、青い小瓶を取り出した。
「ああ、それは〝神域の秘薬〟って言って、どんなケガでも一瞬で治るっていう、すごく貴重な薬だよ。神にしか精製出来ないって言われてて、あっちの世界に3本しか現存しないっていう幻の……」
「とりあえず、20本ほど複製したんだけどな? あ、瓶がデカいから、量的には、もっとあるなー」
大ちゃんは、テーブルの上に青い液体の入った〝牛乳瓶〟を並べ始める。
ギリギリまで注いで、ラップで蓋をしてあるからだろう。漏れた液体がテーブルに溢れてしまっていた。
……はい?
えーっと。今は確か〝神域の秘薬〟の話をしていて、それから?
「大ちゃん。その、青いのは何?」
「〝牛乳瓶〟だぜ。容器がこれしか無くってなー?」
やっぱそうだよね。〝牛乳瓶〟だと思ったんだよ。でも、中身は牛乳じゃないよね?
「いや、違くて。その、瓶の中の青いのは何?」
「だから〝神域の秘薬〟だろー? 材料が無くなったから、とりあえずコレだけだけどな? 見様見真似で俺が作ったんだ」
いや。見様見真似っていうのは、誰かの動作を見て、それを真似する事だよ?
完成品を見るだけで、まったく同じ物を作るっていうのは見様見真似とは言わない。
……っていうか、ええええええええ?!
あの〝神域の秘薬〟を量産?!
「とりあえず、この薬をスーツに仕込んでおいた。任意で対象に向けてスプレー出来るし、大きいダメージを受けた場合、自動でスーツ内部がこの薬で満たされる仕組みだ。まあ、必要ないかもだけど、念のためになー?」
スゴすぎる……以前の〝潔白の鎧〟が、霞んでしまったんですけど。
「この日を、どれだけ待ち望んた事か……!」
ふわああああっ! お、美味しっ! 何という優しい歯応え! 濃厚なチーズを適度に内包した様は、まさに宇宙の縮図! そしてそれを噛みしだいた時に口内に伝わる、かまぼこ部分とチーズ部分の感触の違いッ! これは神の恵みか悪魔の罠か? 延々と繰り返される無意味な舌先での判別という遊びに、答えなど有るのか? いや、無い! しかし、答えが無いからこそ、狂おしい程のその感触の違いを人々は求めてやまないのだ! 永遠に解く事の出来ない究極のパズルとも言える宴に身を任せ続けようではないかッ! 私は! 私は帰ってきたのだッ!!
「チーかま眺めながら、なに冷蔵庫の前で涙ぐんでるんだ?」
うっわ! びっくりした!
なんだ、アニキか。
「落ち着いたか?」
「……うん」
私は、30年振りに、この世界に帰って来た。
あっちの世界は、時間の流れが遮断されていたから〝ほぼ旅立った時間〟に戻って来れたし、和也さんと私の能力で、子どもの姿に戻る事も出来た。
つまり、私以外から見れば〝私には何も起きなかった〟のと同じなのよね。
……でもアニキは、そんな〝何も変わっていない〟私の事を、なぜか理解して、気遣ってくれている。
「そうか。まあ、何かあったら言えよ」
確か兄貴は、15年先の未来から、戻ってきたとか言ってたよな。その体験が、今回の件を理解しやすくしているのかもしれない。
ん? まてよ? 私は30年以上、あの世界に、閉じ込められていたんだよね。
「…………フッ、勝ったな!」
「何がだよ?!」
「分からない? 今や、私の方が、年上なのだよ? これからは〝お姉様〟とお呼びなさい」
むしろ、いつから私が〝妹〟だと勘違いしていた?
既に、立場は逆転しているのだ。
ふははは! 跪け! 媚びへつらえ!
貴様よりも長く生きた、私こそが〝姉〟なのだ!
「……………お姉様」
ぎゃああああっ?!
鳥肌がッ! ゾワゾワッて鳥肌がッッ!
「……お姉様?」
いぎゃあああぁぁ!!
気持ち悪いッ! 何よコレ! 何なのッ?!
「お姉様ぁん!」
ひいぃぃぃぃッ?!?!
「……やめてください、お願いします」
アニキがニヤリと笑う。
くっそー! 私はヤツの手のひらの上で、踊らされていたのか!
「おっと。遊んでる場合じゃなかった。大ちゃんが呼んでるぞ」
アニキが、思い出したかのように言う。
そうだ。私の着ていた鎧を、大ちゃんに預けたんだった。私が子どもサイズになってしまったんで、ブカブカなんだよね。
「大ちゃん、かなりテンション上がってたからな。〝こんな材質見た事ないぜー〟とか言って」
あれは〝潔白の鎧〟っていう、伝説級の鎧なんだ。
なんでも〝戦いの女神〟が悪魔と戦うために、最高神から与えられた幻の金属〝アルブタルム〟を使って作られたとか。
いやー、苦労してゲットしただけあって、スゴい鎧なんだよね。何せ〝鎧を白以外に染めようとする攻撃を全て白紙に戻す〟って、ブッ飛びチート性能なんだから。まあ、おかげで、敵を斬って鎧に返り血が付くと、それも無かった事にされちゃうから、汚れないように戦う癖がついちゃったけど。
「いやー、楽しみだな! どんなスーツになるんだろう」
…………はい?
「やっぱり、元々が白い鎧だから、お前は〝ホワイト〟なんだろうなあ」
……えーっと…………え?
「戦隊モノで仲間が増えるパターンは良くあるけど〝ホワイト〟は珍しいよな!」
ええええッ?!
「ちょっとまって! スーツって何?!」
「……ん? 〝救星戦隊プラネット・アース〟のスーツに決まってるだろ?」
「私の鎧と、そのスーツ、何の関係があるの?!」
嫌な予感しかしない。でも、まさかね……?
「何を言ってるんだ? お前の鎧を改造して、スーツにするんだろ?」
はあああああああっ?!
「なななな? なんで?! どうしてそんな事になっちゃうわけ?!」
おかしいおかしいおかしいおかしい!
〝伝説級の鎧〟なのよ?
それを、あの〝イカれたコスプレ〟に改造?!
「〝どうして〟も何も、お前が言ったんだろ? 〝私が着れるようにヨロシク〟って……!」
「違ああああぁぁぁう! サイズ! 私が言ったのはサイズの事だよ?! どうして魔改造しちゃうの?!」
「…………お前、あの鎧姿で、人前に出るつもりだったのか? 恥ずかしいヤツだな」
「アニキが言うなああああっ!!」
>>>
あまりの衝撃に声が出ない。
大ちゃんに腕時計を渡されて、言われた通りに〝変身〟と叫ぶ。
う、わ……あ。
本当に、変身しちゃった。
自分の姿は見えないけど……いや、むしろ見たくない。
「……どうかなー? 戦隊のカラーリングに合わせるために、シルバーに塗装するのが大変だったぜー!」
私の……鎧……
シルバーになっちゃったの?
「か、かっけええええ! やっぱり〝ライン〟と〝プロテクター部分〟は白か!」
……なんでそんなに嬉しそうなんだよアニキ。
あれ? っていうか〝潔白の鎧〟に色を塗るってどうやったの?! 〝邪竜の王〟の豪炎を受けたときですら、真っ白なままだったのに!
「コンセプトは〝勇者〟だぜ。ヘルメットや肩、肘、腰、膝のプロテクター部分は、邪魔にならない程度に、甲冑を模した作りにしてみた」
ああ……! 〝伝説級の鎧〟が、妙なデザインのコスチュームに!
なんで、こんな事に……?
「ブルー、鏡を出してやってくれ。いやー、しかしカッコいいなあ!」
あーもー! だから、鏡なんか見たくないって!
ちょっ! ジロジロ見ないでよアニキ……
カッコいいわけ無いじゃない。
「さすがね。ここまで洗練されたデザインになるなんて」
彩歌ちゃんまで……
ん? 洗練されたデザイン?
「やー! るりちゃん超・勇者っぽい! サイコー!」
ユーリちゃん?
そんな……はず……
「えへへ! るりちゃん、スゴくカッコイイし、かわいいよ!」
和也さんっ?! か、かわいい?!
いやいや、まさかそんな……
『ルリ。鏡を用意した。見てみるといい』
いえいえブルーさん、鏡なんか出されたって……え?
「これが……私……?」
シルバーを基調に、所々、白いラインが入った流線型のボディが近未来感をアピール。
ヘルメットは、ヒーローのマスクに、フルフェイスの兜をミックスさせたようなデザイン。額部分には、緑色の宝石が埋め込まれていて、髪飾りのようにも見える。
「……か、かっこいい!」
「だろー? 特に額の宝石は、魔界産の〝魔除け〟らしいぜ。栗っちとペアで行動する時は、スーツの色味と合うからベストじゃねーかな!」
「カズヤさんとベストマッチ! スゴく……イイ……!」
……はっ! で、でも! こんなに原型を無視した改造をして、その上、塗装なんかしちゃったら、せっかくの特性と性能が!
「あー、それから〝変色〟をトリガーにして、全ての事象を無かった事にするっていう機能だけど……」
それ! それじゃん!
もー! いくら見た目がカッコよくなっても、そこがダメになっちゃったら意味無いよね?
「あのままだと、こっちからの攻撃まで無かった事にされちまうから、トリガーを〝自分以外が起点の変色〟に絞っといたぜ? しかし、よくあんな〝ポンコツ機能〟の付いた鎧を着て戦ってたなー?」
あ、あうあ……?!
ちょ、まっ?!
「そ、そんな事が出来ますのん?!」
〝伝説級の鎧〟だよ?! それを〝ポンコツ〟って!
「んー? 簡単だったぜー? 〝魔法〟とか〝呪い〟とかじゃなくて〝素材そのものの性能〟を使って組み上げた機能だったからな。むしろあの鎧を作ったヤツは、せっかくの〝素材の持ち味〟を殺しちまってたよなー」
辛辣ッ?!
こ、これがウワサの〝名工神〟なのかあ……!
「おっと。それから、預かってた異世界の道具の中に、結構スゴめの薬があったんだけど……」
大ちゃんが、青い小瓶を取り出した。
「ああ、それは〝神域の秘薬〟って言って、どんなケガでも一瞬で治るっていう、すごく貴重な薬だよ。神にしか精製出来ないって言われてて、あっちの世界に3本しか現存しないっていう幻の……」
「とりあえず、20本ほど複製したんだけどな? あ、瓶がデカいから、量的には、もっとあるなー」
大ちゃんは、テーブルの上に青い液体の入った〝牛乳瓶〟を並べ始める。
ギリギリまで注いで、ラップで蓋をしてあるからだろう。漏れた液体がテーブルに溢れてしまっていた。
……はい?
えーっと。今は確か〝神域の秘薬〟の話をしていて、それから?
「大ちゃん。その、青いのは何?」
「〝牛乳瓶〟だぜ。容器がこれしか無くってなー?」
やっぱそうだよね。〝牛乳瓶〟だと思ったんだよ。でも、中身は牛乳じゃないよね?
「いや、違くて。その、瓶の中の青いのは何?」
「だから〝神域の秘薬〟だろー? 材料が無くなったから、とりあえずコレだけだけどな? 見様見真似で俺が作ったんだ」
いや。見様見真似っていうのは、誰かの動作を見て、それを真似する事だよ?
完成品を見るだけで、まったく同じ物を作るっていうのは見様見真似とは言わない。
……っていうか、ええええええええ?!
あの〝神域の秘薬〟を量産?!
「とりあえず、この薬をスーツに仕込んでおいた。任意で対象に向けてスプレー出来るし、大きいダメージを受けた場合、自動でスーツ内部がこの薬で満たされる仕組みだ。まあ、必要ないかもだけど、念のためになー?」
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