プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー

文字の大きさ
249 / 264
6年生 1学期 4月

6年生!

しおりを挟む
 新学期が始まり、僕たちは6年生になった。

「校長先生がわったんで、話が短くなったよね!」

「今年の1年生は、誰も倒れないかもな」

 なんていう会話が、チラホラと聞こえてくる。
 実は、去年までの入学式では〝校長先生の長いトーク〟のせいで貧血を起こし、、新入生が何人か倒れていたのだ。

「でも、ちょっとこわそうだよね、今度の校長先生……」

「そう? 僕は面白おもしろくて好きだけどなあ」

 だが、新しく赴任ふにんして来た校長先生は、今日の始業式で、簡潔かんけつで分かりやすく、クスリと笑わせてくれる〝ユーモア〟まで織り交ぜた、絶妙なトークを披露してくれた。
 明日の入学式は、平和に新入生を迎えることが出来そうだ。
 そして、実はもう一人、新しい先生がやって来た。しかも、僕たちのクラスの担任らしい。
 ……おっと。ちなみに〝救星戦隊〟のメンバーは、全員同じクラスになったのでご安心を。

『ふふ。栗栖くんが居るから大丈夫。だったわよね?』

『そっか。〝確率操作かくりつそうさ〟があるんだった』

 むしろ栗っちとクラスが別れるようなら、きらわれている可能性すら疑わねばなるまい。

『えへへー。僕は、誰も嫌ったりしないよ?』

 ニコニコと笑っている栗っち。
 しれっと〝精神感応せいしんかんのう〟で、僕の声を聞いていたようだ。

『アニキ。今の発言は看過かんかできないな。即刻、地べたにいつくばって、心を込めて5ヶ国語以上で和也さんに謝って。そして〝愚かな私をどうか1年生からやり直させてほしい〟と、新校長に懇願こんがんするがいいわ』

 妹の口調くちょうや話す内容が〝妙に大人びた〟のは、異世界に長期滞在したせいだろう。

『お前は僕を罵倒ばとうするための〝語彙力〟を鍛えに、異世界に行ってきたのか?』

『いやタツヤ。こんな風に、私を経由けいゆしての会話が可能になったのは、ルリが〝勇者のちから〟を手に入れたからだよ』

 なるほど、確かにそうだな。

『私に内緒で、こんな面白い会話をしてたなんて、ズルいぞアニキ! これからはビシビシ突っ込むからな!』

『……って、やっぱ罵倒ばとうするためじゃないか!』

 で、何の話だっけ。
 そうそう。担任の先生が変わったんだ。それと……

「おい、聞いたか? 転校生が来るらしいぞ!」

 さて皆さま、覚えておいでだろうか。
 彼は今井暁雄いまいあきお。クラスのムードメーカー的な存在で、情報も恐ろしく早い事情通だ。
 ただ、その情報のほとんどが〝興味本位の噂話ゴシップ〟で、信用するに値しない。
 ……で? その転校生は、 女子なのか男子なのか、どっちなんだ?

『アレだなタツヤ。キミは本当に』

 僕にさえぎられるのを防ぐために〝アレだな〟を先に言うのはやめてくれブルー。

『えへへ。男の子でも女の子でも、新しい友だちが来るのはうれしいよ?』

『いやいやいや! そこはやっぱり女子だろう栗っち! 滅多に無い〝転校生イベント〟だぞ?! テンションの上がり方が変わってくるじゃないか!』
 
『ふぅん? 達也さんは、女子が転校して来るとテンションが上がるのね?』

 ぎゃああああ! しまったあああっ! 彩歌あやかに聞かれてた?!

『な、なんの事でしょうか彩歌さん……? ぼ、僕は何も、事は……』

「ふっふっふ! しかもだ! 聞いて驚くな?」

 僕の声をさえぎるかのごとく、今井暁雄いまいあきおが大声で叫ぶ。
 あーもー! うるさいって!
 まだやってたのかよ。これだから〝小学生男子〟は……

「なんとその転校生、女子だってよ! しかもめっちゃ可愛いらしいぜ!」

 ふぉおおおおおお! キターーーーッ! イエスッ!

『達也さん。そのガッツポーズは何かしら?』

 どああああ?! やっちまったあああっ! 体が勝手に動いてたっ?!

『タツヤ、もしかしてキミは、ワザとやっているのか?』

『たっちゃんはいつも面白いよね!』

 いやいやいや! こんな恐ろしい状況を、自分からわざわざ作らないって!
 ひぃぃぃ! 彩歌がにらんでるっ! たっ、たすけっ……

「はーい、注目! 今日から皆さんのクラスの担任になりました〝能勢のせ〟と言います。この春から、この学校へ来ました。どうぞヨロシク!」

 いつの間にか、教卓の前には、若い男の先生が立っていた。
 ザワついていた教室は、一斉に静かになる。
 ……ふう、助かった。

『タツヤ〝若い男の先生だった〟のが、そんなに残念か。君は本当に……』

『九死に一生を得たのに、何て事を言い出すんだブルー?!』

『ふふ。〝九死に一生〟……? 死ぬはず無いわよ。不死身の達也さんが。ねぇ?』

 ひゃああぁぁぁっ?! 殺される! 何らかの方法で殺されるっ!
 ゆ、許して下さいっ! じょ、冗談ですからっ!

『クスクス。本当に達也さんはアレなんだから。ほら、お待ちかねの転校生よ?』

 彩歌が楽しそうに笑う。
 ふぅ。冗談なのか本気なのか、分からない所が恐いんだよなあ。
 あれ? ……よく考えたら、最後の〝男の先生が残念〟は僕が言ったんじゃないぞ?

「それじゃ先に、転校して来た、お友達を紹介しよう。さあ入って」

 能勢のせ先生に呼ばれて、ガラガラと扉が開く。
 登場したのは、今井暁雄いまいあきおの情報通りの美少女。
 お? アイツの情報、最近なかなか精度が高いじゃ……あ、あれ?

「自己紹介してもらおうか」

 先生にうながされ、転校生がペコリとお辞儀をした。
 僕の方を見て、ニッと笑ってから、自己紹介を始める。

「初めまして。河西千夏かわにしちなつと言います」

 先生によって、チョークで黒板に大きく書かれた名前も、やはり〝河西千夏かわにしちなつ〟だ。

『ちょっと待った! ななな……! なんで?!』

『そんな! どうして彼女が?!』

 彩歌も驚いている。
 間違いない。彼女はつい先日、ルーマニア〝シギショアラ〟で助けた〝河西千夏かわにしちなつ〟だ。
 これは一体、どういう事だ?

『えへへ。やっぱりたっちゃんも彩歌さんも、気付いてなかったんだね!』

 気付いていなかった?

『栗っち、それはどういう意味……』

「はいはい、静かにしてくれ。河西千夏かわにしちなつさんは、隣のクラスにいる。河西千佳子かわにしちかこさんの、双子ふたごのお姉さんだ。

 河西かわにし……千佳子ちかこ……?
 ああっ! そういえば、チョー似てる!

「事情があって今まで外国にいたが、今年から、みんなと一緒に勉強することになった。仲良くしてあげてほしい」 

 今まで、全く思い出せなかった。
 ……そうか。そういえば、河西千夏かわにしちなつは〝妹が居る〟って言っていたな。
 河西千佳子かわにしちかこの事だったのか!
 いやー! 世界って、広いようで狭いなあ。

『達也さん、河西千佳子かわにしちかこさんって?』

『ああ。ウチの近所に住んでいてね……』

 さて皆さま、またまた、覚えておいでだろうか。
 河西千佳子かわにしちかこは、自分の事を〝チカコ〟と呼ぶ〝一人称が名前〟で〝ポニーテール〟が印象的な女子。アサギグループの会長宅が火事の時、フード付きのジャンパーと長めのキュロットスカートに、履き古した大き過ぎるサンダルという出立いでたちで、野次馬に来ていた。
 ……詳しくは、第57話〝ランディング開始と言いたかった〟をご参照下さいッ!

『そんな偶然があるのね……!』

 まったくだ。やっぱり、海外だろうと魔界だろうと宇宙の果てだろうと、絶対に気を抜いちゃダメだな。すぐにしてしまう。
 ……しかし、さすが栗っち。気付いてたのか。

『えへへ。〝さすが〟だなんて照れちゃうよ!』

 そう、これこれ。僕はひと言も〝さすが〟なんて、口に出して無いぞ?
 栗っちは、この〝精神感応せいしんかんのう〟で、相手の考えている事はお見通しだ。
 もしかしたら、初見しょけんでいきなり、河西千夏かわにしちなつ河西千佳子かわにしちかこの姉だと見破っていたのかも知れない。

『ううん、さすがに気付いたのは、千夏さんを助け出した後だよ』

『いやいや栗っち。それでも充分スゴいから!』

 きっと大ちゃんも、気付いてたんだろうなあ。

『えへへ。たぶんね! ……それより、ビックリしたよ! たっちゃんと、るりちゃんと同じ〝双子設定〟だよ?』 

『そこなんだ。僕とるりが〝双子設定〟になったのは〝随行者ずいこうしゃの右手〟と〝随行者ずいこうしゃの左手〟のちからだけど〝としの離れた姉妹〟だった河西千夏かわにしちなつを、双子として転校させるなんて、出来ないだろ、普通』

 よく考えたら前回……僕が〝巻き戻る前〟の6年の時の担任は、5年の時と同じ、谷口先生だったぞ?

「よし、それじゃあ、今から出席をとります。先生、初めてだから、名前を呼び間違えたら教えてくれよー?」

 ……校長も代わる事は無かった。だって、入学式で5人も倒れて、大問題になったんだから。

『何かこう、大きなちからが働いてるっぽい気がする』

 新任の先生が俺たちのクラスの担任になって、校長まで代わるなんて、きっと何か裏があるんだろうな。

『そうね。いくら何でもタイミングが良すぎるわ』 

 もしかしたら、放課後に俺たちだけ、校長室に呼ばれたりしてな。

「おっと、忘れる所だった。校長先生から、伝言があります。内海! 九条! 栗栖! 藤島! 大波! 〝放課後、校長室へ来るように〟だそうだ。忘れないように行ってくれ!」 

 ……ほらね。
 これはまたしても、波乱の予感がするぞ。

しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

処理中です...