透明色の魔物使い~色がないので冒険者になれませんでした!?~

壬黎ハルキ

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第六章 神獣カーバンクル

205 奇妙な少年の申し出

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「うーん、楽しかったのですー♪」

 マキトとノーラが粗方話し終えたところで、ラティたちが戻ってきた。

「やっぱり魔力スポットは、力がたくさん湧いてくるのです」
「キュウキュウ♪」
『またつよくなれたかなー?』

 ロップルとフォレオも、魔力スポットの恩恵に与れたらしく、実にご機嫌な表情を見せていた。
 そして――

「いやぁ、魔力スポットってのは、ホントいいもんだぜ♪」

 カーバンクルも満足そうな笑顔を浮かべていた。

「たっぷり遊んで、しかも特訓になるなんてサイコーってもんだよなぁ」
「キュウッ」
『たのしかったねー♪ またいっしょにあそぼうよ』
「おう! もちろんだぜっ!」

 ロップルたちともすっかり打ち解けた様子のカーバンクル。もはやメンバーの一員といっても過言ではないレベルであった。

「ね、マキト」

 くいくいとマキトの服の裾をノーラが引っ張ってくる。

「カーバンクルも懐いてるし、マキトがテイムしちゃえば?」
「そうだなぁ……」

 腕を組みながら、マキトはカーバンクルに視線を向ける。
 実際、それでもいいとは思っていた。魔物たちも懐いているし、カーバンクルが仲間になってくれれば賑やかになることだろう。
 しかしながら、ここでいきなり誘うのも、彼は少しだけ気が引けていた。

(カーバンクルはずっと、サリアが迎えに来るのを待ってるんだよな)

 これまでの話を聞いていると、やはりカーバンクルは、サリアに対する気持ちがこの上なく強いことがどうしても感じられてしまう。
 サリアがもうどこにもいない可能性もある。だがそれでも、カーバンクルは諦めきれていない。
 カーバンクルの心は、あくまでまだサリアの中にいるのだ。
 それが分かっている以上、気軽に誘うのも何か違う気がしていた。
 確かにラティたちと友達にはなれただろう。しかしこのまま流れ的にテイムされるかどうかは、全くの別問題だ。

(仮に俺が誘って、アイツが喜んだとしても、それがアイツの本心とは限らない)

 この一日で、カーバンクルが自分に懐いてくれている――それはマキトも自信を持って言えることではあった。
 しかしどうしても、サリアを越えることはできない。
 過ごした時間の長さもそうだし、なにより絆の深さも違い過ぎる。いくらマキトがサリアの息子だとしても、それとこれとは何の関係もない。

「大丈夫だと思う」

 すると急に、ノーラから話しかけられた。ハッと我に返って振り向くと、優しい笑みを浮かべながら、ジッとマキトを見つめてきている。

「昔は昔。今は今。昨日から一緒にいるのは、サリアじゃなくてマキト」
「サリアじゃなくて……俺?」
「ん。カーバンクルもマキトに心を許している。だからもっと胸を張っていい」

 まっすぐ見つめてくるノーラの目は、まるで奥底の気持ちを見透かしてくるかのようであった。
 マキトは思わず息を飲む。何故かノーラから目を逸らせない。
 逃げることは絶対に許さないと――そう言われているような気がしていた。

(まだ昨日の今日だからなぁ。もう少し様子を見たいところだけど……)

 それでも、少し聞いてみるくらいはいい気もしてきた。
 なんやかんやで、割と長い時間、一緒に話せた。一緒に来ないかと問いかけて、気乗りしないようであれば、素直にそれを受けとめればいいだけの話だと。

「そうだな……少し、難しく考え過ぎてたのかもしれないな」

 マキトはそう呟きながら立ち上がる。そして、ロップルたちと楽しそうにじゃれ合っているカーバンクルの元へ、ゆっくりと歩き出した。

「なぁ、カーバンク――」

 マキトが呼びかけようとした、まさにその時であった。

「――あああああぁぁぁぁーーーーーっ!!」

 凄まじい叫び声が聞こえてきた。マキトは勿論のこと、ノーラやラティたちも、思わずビクッと背筋を震わせ動きを止めてしまう。

「な、何だ……?」

 妙な緊張感を走らせながら、マキトが周囲を見渡す。もはやカーバンクルに話を持ち掛けることは、完全に頭からすっぽ抜けてしまっていた。
 すると――

「そ、それはあああぁぁーーーっ! それはああぁ――ぶべぇっ!!」

 一人の少年が叫びながら駆け寄ろうとして、盛大にすっ転んでしまっていた。
 カランコロン、と長くて丈夫そうな気の枝が転がる。どうやら杖代わりにしていたらしく、少年の恰好と実にマッチしていた。

「な、何なのですか、あの人……」
「スッゲーボロボロだぜ? 一体、何があったってんだよ?」
「キュウ?」
『あやしいの? もしかしてぼくたちのてき?』

 ラティたちが怯える中、ノーラが無言でマキトに近づいてくる。

「あの服、どこかで見たことがある」
「やっぱりか? 俺もなんか、アリシアが似たようなのを着てた感じが……」
「ん。ノーラも同感」

 マキトの意見を聞いて、ノーラは確信したかのように頷いた。

「あれはきっと、ヴァルフェミオンの制服」
「ヴァルフェミオン……やっぱり、アリシアと同じ学校の生徒ってことか」

 そう言われてみれば確かに納得もできる。しかしそれならそれで、マキトは疑問を浮かべずにはいられなかった。

「でも、なんでそんなヤツが、こんなところに?」
「分からない。でも絶対に普通じゃない。厄介事のニオイがする」
「……そんな感じだよなぁ」

 マキトはうんざりとした表情を浮かべる。

「ヴァルフェミオンからここまでって、結構遠かったよな?」
「ん。空を飛んだとしても、普通に何日かかかる」
「そんな遠いこの場所に来る理由なんて、そうそうあるとも思えないけど……」
「普通に考えれば魔力スポット。竜の山の一件みたいに」
「竜の山……あのチビスケを送り届けた時か!」

 彷徨う子供のドラゴンを、マキトたちが保護してオランジェ王国まで送り届けたことがあった。
 そこでも魔力スポットにおける騒ぎがあったことは、マキトの記憶にも新しい。

「魔力スポットに何か仕掛けて暴走させた……もしかしてコイツはそれを?」
「ん。わざわざこんな山奥まで来るなんて普通じゃない。誰もいない場所なら、危険なこともやりたい放題」
「なんてヤツだ……」

 確証はないが、可能性としては十分にあり得る。マキトたちの表情が、次第に険しいそれへと切り替わっていった。

「もしそうだとしたら、絶対に許しちゃおけないな」
「同感なのです。わたしたちで徹底的に懲らしめてやるのですよ!」
「キュウ、キュウッ!」
『まりょくすぽっとには、ゆびいっぽんふれさせないぞー!』
「オレも戦うぜ! こんないい場所を襲うなんざ、見過ごせるかってんだ!」

 マキトたちは揃って身構える。しかし少年は倒れたまま、ピクピクと小刻みに震えるばかりであった。
 そして――

「ぐっ、ううぅ……っ!」
「あ、起き上がった」

 なんとかゆっくりと顔を上げてきた。そして少年の視線は、目の前にいる魔物たちに向けられている。
 そこから視線は動かない。その様子にマキトは違和感を覚えた。

「アイツ、なんかずっとこっちを見てきてないか?」
「確かになのです。魔力スポットなんて目もくれてない感じがするのです」
「ん。ノーラの予想、外れた?」

 少しばかり残念そうな表情をするノーラ。魔物たちもジッと視線を向けられ、居心地が悪そうに戸惑っている。
 とりあえずマキトは、思い切って少年に問いかけてみることにした。

「な、なぁ! 俺たちに何か用でも――」
「まさか……まさかそれはっ!」

 しかし少年は、マキトの呼びかけを遮ってしまう。というより、耳に届いてすらいないようでもあった。
 少年は力を振り絞って体を起こし、そして震えながら指をさしてきた。

「まさかそれは……し、神獣カーバンクル!?」

 その声に、マキトたちは呆然とした。カーバンクルも訳が分からず、困った表情を浮かべていた。
 そして遂に居た堪れなくなり――

「な、なんだよコイツ?」

 そう言いながらカーバンクルは、マキトに飛びつくのだった。

「っと!」

 マキトも両手で受け止め、抱きかかえる形となる。それを見た少年は、ガーンと衝撃を受けたかのような表情を浮かべた。
 いよいよもって意味が分からなくなった一行は、揃って首を傾げる。
 そんな中、少年が我に返り、そのまま四つん這いで動き出す。切羽詰まった表情でほふく前進のように進んでくる姿は、まさに不気味。マキトたちは思わず逃げ出したくなってくるが、その前に少年が来てしまう。

「た、頼むっ!」

 そして少年は地面に這いつくばったまま、ガバッと頭を下げた。

「頼むっ! その神獣を……カーバンクルを僕に譲ってくれええぇーーっ!」

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