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第七章 魔法学園ヴァルフェミオン
217 神竜の謎
しおりを挟む「きっと神竜は、このヴァルフェミオンの地下で、魔法研究かなんかのエネルギーに利用されているに違いない」
「あぁ、神竜が持つ魔力を吸われてるって、この手紙にも書かれてるな」
ノーラの言葉に頷きつつ、マキトは再び手紙に目を通していく。
そして力尽きないよう、魔力スポットの傍で雁字搦めにされているというのが、今の神竜の状況だと書かれていた。
「この近くに魔力スポットがあるのか」
「なるほど。それで疑問が一つ解けたのです!」
ラティがグッと両手の拳を握り締める。
「さっきから妙に、魔力スポットの気配を薄っすらと感じていたのですよ」
『たしかにねー』
「キュウ、キュウキュウッ」
フォレオとロップルも、納得だと言わんばかりに頷いている。魔力の気配に敏感なラティたちが言うのだから、間違いはないのだろうとマキトは思った。
そうなると、ノーラの言うとおり、面倒事は避けられないだろう。
神を司る竜がどれほど凄いのかも分からないのに、魔力スポットというある意味で危険なものを備え付けている状態なのだ。ちょっとしたことで何が起こったとしても不思議ではない。
「こりゃ、ちょっとのんびりしてられないかもだな」
「ん。今が静かなのは、恐らく奇跡なほう。このまま放っておくのは危険過ぎる」
顔をしかめるマキトに、ノーラも真剣な表情で頷く。
「神竜が力尽きることはないと思う。それよりも神竜の暴走のほうがマズい」
「魔力スポットの影響で、我を忘れるということなのですか?」
「痛めつけられてブチ切れるって可能性もあるぜ」
ラティとリウの予測は、両方あり得ると見て差し支えない。どちらかではなく両方が発生すれば、それこそ手が付けられなくなるだろう。
「もしも、神竜が我を忘れるくらい怒っちまったら……」
「大変なんてもんじゃない」
「……だよなぁ」
ノーラの一言だけで、マキトもなんとなく想像ができてしまった。
「ヴァルフェミオンが壊れるだけで済むかな?」
「それだけで済むのでしたら、それこそ奇跡だと思うのです」
「だな。この世界全部をぶち壊そうとしても、全然おかしくねーと思うぜ」
『まさにせかいのおわり?』
「キュウ?」
ラティたちが次々と放つ言葉に、マキトは改めて嫌なプレッシャーがのしかかってくるような気がした。
手紙には軽い感じで書かれていたというのに、実際はとても危険な状態が迫っていようとは、流石に思ってもみなかった。神様のような竜ともなれば、計り知れない力を持っていることぐらい、容易に想像はできてしまう。
改めてマキトは手紙に視線を戻してみると、その旨も確かに書かれていた。
「――要は手遅れになる前に、俺たちでなんとかしてくれってことか」
マキトは深いため息をついた。もはや状況が状況なだけに、見て見ぬ振りができないことも分かるため、なんとも言えない。
「カーバンクルをテイムしたキミなら、きっと神竜に声を届かせられる――そう書かれているのです」
ここでラティが、ニュッと割り込むようにして手紙を覗き込む。そして、にぱっと笑いながらマキトのほうを向いた。
「マスターも、よっぽどライザックさんに信頼されているみたいですね」
「あんまり嬉しくないけどな」
苦笑しながらマキトは、手紙の最後の部分を読む。
「勝手なことに巻き込んでしまって申し訳ない。キミたちを信じているから、どうかよろしくお願いします――だとさ。手紙の内容はこれで終わりだ」
「むぅ、勝手に信じられても困る」
ノーラは軽く頬を膨らませた。
「そもそも現時点で、ノーラたちに選択の余地はない。お願いを通り越した押し付けでしかないし、迷惑以外の何物でもない」
「まぁな」
同意しながらも、マキトはどこか開き直った様子を見せていた。そして、手紙を折りたたんでポケットにしまい、腕を思いきり真上に伸ばす。
「けどまぁ、選択の余地がないんじゃ仕方ないわな」
「ですね。魔物さんのピンチなら、黙っているワケにはいかないのです!」
ラティも力強い笑顔で、気合いを入れる。他の魔物たちもそのとおりだと言わんばかりに頷いていた。
どうやら方向性は決まったようだと、マキトは思う。
しかしその前に、どうしても考えなければならない問題があるのだった。
「……さて、あとはどうやってここから出るかだな」
マキトは大きな扉のような壁に視線を向ける。
「多分、通り抜けられるとしたら、あそこぐらいしかないと思うんだけど……」
「ですよねぇ。アレはまだ、わたしたちも試してないのですよ」
「よーし、じゃあ試してみようぜー!」
リウが意気揚々と扉のような壁に向かって行く。そして試しに前足の部分でちょこんと触れてみるが、何も起きなかった。続けてラティやロップル、そしてフォレオも同じようにしてみるが、やはり何の変化もない。
マキトも試しに押してみるが、見た目どおりの如く全然動かなかった。
「取っ手がないから、引っ張りようもないよなぁ」
「ですねぇ。どこか他に、隠し通路でもあるのでしょうか?」
「ちょっと探してみるか……」
ラティの言う可能性はあるだろうと思い、マキトが動こうとする。
その時――
「待って」
ノーラが呼び止め、スッと壁に向かう。周りが呆気に取られる中、ノーラは無言のまま、そっと壁に右手を触れた。
そして目を閉じ、そのまま集中すること数秒――ノーラが勢いよく目を開けた。
――ゴアァッ!
まるで吸い込まれるかのように、壁が重々しい音とともにスライドする。
あっという間に先へ進む道が現れたのだった。
「え、な……ひ、開いた? マジで?」
あまりの展開に、マキトは言葉が上手く出ないほどに戸惑ってしまう。魔物たちもこぞって目を丸くしながら、ノーラと壁があった方向を交互に見つめていた。
「驚いたのです。壁に魔力を送り込んでいたのは分かったのですけど、アレは普通の魔力じゃなかったのです!」
「あぁ。どっちかってーと、オレのに近い感じだったぜ」
「リウに近い? それってつまり、神獣の……」
訳が分からないまま、マキトが言葉を紡いでいく。するとノーラが、いつもの無表情な視線で彼のほうに見上げてきた。
「神獣とは少し違う。でも、今のノーラの魔力はそれに似ている」
「似てるって、どういうことだよ? カミサマの力でも持ってるってことか?」
流石にそれはないだろうと思いながら、マキトは問いかけてみる。しかしノーラは不敵な笑みを浮かべてきた。
まるで、いい線いっていると言わんばかりに。
「似たような感じ。ノーラは神族――神様を司る種族だから」
「しん、ぞく……?」
ここに来ていきなり明かされた事実に、マキトは頭の整理が追い付かず、ただ戸惑うことしかできなかった。
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