透明色の魔物使い~色がないので冒険者になれませんでした!?~

壬黎ハルキ

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第七章 魔法学園ヴァルフェミオン

218 ノーラの正体

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「えっと……そもそも『神族』って、どんなんだったっけ?」

 改めてその単語を頭に浮かべたマキトは、思考が行き詰まり首を傾げる。
 なんとなくどこかで聞いたような気はするのだが、あまりにもその単語と関わりがなかったので、思い出せないのだ。
 そんなマキトの反応は、ノーラも想定内であったため、特に驚いてはいない。

「ん。その名のとおり、神を司る第四の種族。見た目は人間族と変わらないから、気づかれることは基本的にない」
「へぇー、そうなんだ」
「ちなみに神族同士だったら、不思議な直感みたいなモノで、すぐに気づく」
「ふーん」

 通路の壁を背もたれ代わりにして座り、マキトは相槌を打つ。神族の細かい説明については、正直なところあまり興味はなかった。
 これ以上だらだらと説明を聞くのもアレかなぁと思い、マキトは尋ねる。

「とにかくノーラは、カミサマ的な種族ってことでいいのか?」
「ん。今まで黙っていてごめん。マキトたちに隠すつもりはなかった」

 しょんぼりと項垂れるノーラだったが、マキトたちは別に怒っている様子は見られなかった。
 むしろ逆に反応に困っている様子ではあった。
 そこまで申し訳なさそうにしなくても、と言わんばかりに。

「それは別にいいんだけどさ――」

 マキト一つ、気になることがあった。

「もしかしてその事実をバラしたら、何か面倒なことになったりするのか?」
「ん? 多分ないけど」
「なーんだ。それなら別に気にしなくてもいいじゃないか。そもそも――」

 安心したような笑顔を浮かべながら、マキトがその小さな頭に、ポンと優しく手を置いた。

「ノーラが普通の女の子じゃないってことは、前々からなんとなく思ってたよ。前にも自分で言ってたじゃんか。よく分からない存在とかどーとかって」
「……ん」

 ノーラも忘れていたのか、そういえばと言わんばかりの反応を示す。

「あれは神族の部分をぼかして言っただけ。それも含めて、ノーラ自身がよく分かっていないのは事実」
「そっか……まぁ、どっちにしても、納得できたことは確かだよ」
「ですです♪ だから気にすることはないのです」

 ラティに続いて、ロップルやフォレオ、そしてリウも笑顔で頷いた。そんな温かい表情に囲まれたノーラは、思わず頬を染めて俯く。

「あ、ありがと……」
「おう」

 マキトは再び微笑み、ノーラの頭を撫でる。目を閉じながら、くすぐったそうに身をよじらせるも、離れようとはしない。
 なんやかんやでいつもの状態に戻りつつあるノーラに、マキトや魔物たちは安心するのだった。

「そんなことよりも、一つ聞きたいんだけど……」

 マキトは改めてノーラを見ながら切り出した。

「やっぱ神族の魔力って、普通の魔力とは違うもんなのか?」
「ん。違う」

 ノーラはハッキリと頷いた。

「パッと見ただけだと分からないだろうけど、その中身は明らかに違う」
「へぇ。そこらへんは、ラティたちと似たようなもんか」

 精霊の魔力と普通の魔力が違うことは、前にも聞いたことがあった。ノーラも否定する様子はなく、イメージ的にそういうことなのだと、マキトは納得する。

「ちなみにノーラの場合は、更に少し特殊。神の魔力が集まって生まれた存在」
「えっ、フツーに親から生まれたとかじゃなくて?」
「ん。そうじゃない。だからノーラには、親という存在が最初からいない」
「…………」

 マキトは口をポカンと開けていた。どう返していいか分からなかった。
 割と衝撃的な事実なのに、そんなあっけらかんと喋ってしまっていいのかと問いかけたくなる。しかしノーラの表情を見る限り、特になんてことないと言わんばかりにすましているため、問題はないようだ。
 もっとも、マキトの中から戸惑いが抜けるかどうかは、全くの別問題だが。

「そういえば言ってましたよね? ユグさまと一緒に暮らす前の記憶がないって」

 ここでラティが、はたと思い出したように尋ねる。

「もしかしてそーゆー生まれのせいなのですか?」
「ん。ノーラも確証はないけど、多分そう。少なくともノーラがユグラシアと一緒に暮らしているのは、ノーラの魔力を安定させるため」
「なるほどねぇ……ん?」

 納得しかけたところで、マキトはある可能性に思い至る。

「それじゃあ、もしかしてユグさんも?」
「ん。ノーラと同じ神族」
「やっぱりか」

 ノーラの事実というインパクトがあったせいだろうか。ここに来て初めて明かされたはずなのに、思ったほど驚きはない。
 もっともマキト自身、ユグラシアに対しても割と出会った最初のほうから、なんとなく普通じゃない気はしていた。問いただすほどでもないと思い、そのまま気にしないでおいたが。

「でもでも、最近ノーラは、わたしたちと一緒に森の外に出てましたよね?」
「あぁ、そういえばそうだよな」

 ラティの言葉に、マキトもはたと気づく。ユグラシアの大森林がノーラの魔力を落ち着かせているのなら、外に出るのは危険だったのではと。
 しかしノーラは、大丈夫と言わんばかりに微笑む。

「問題ない。ここ数ヶ月で、ノーラの魔力は急速に安定性を増した。これにはユグラシアも普通にビックリしてるくらい」
「……そうなのか?」
「ん。多分マキトたちと一緒に過ごしたおかげ」
「俺たちと?」

 自分を指さしながら問いかけるマキトに、ノーラは頷いた。

「マキトたちがノーラを変えてくれた。この数ヶ月で、それを凄く感じる」

 正直な話、ずっと不安だった。
 自分は本当に形として存在しているのか。そのうちパッと消えてしまう儚い存在なのではないかと。
 しかし、マキトたちと出会い、一緒に暮らし始めて全てが変わった。
 自分という存在が確かな形として出来上がる気がしていた。
 たとえどんなに特殊な存在だろうと、自分だってマキトや魔物たちと同じく、ちゃんと生きているのだと。
 この数ヶ月で、ノーラはそれを密かに強く体感していたのだった。

「最初に会った時から、マキトたちには何かを感じていた。だからずっと一緒にいようと思った。やっぱりノーラの目に、狂いはない!」

 むふー、と自信満々に胸を張るノーラ。まさかそこまで思っていたとはと、マキトたちは驚きを隠せない。
 かくいうノーラも、最初は単に興味本位でしかなかったのは確かだ。
 しかしそれも、いつの間にかどうでも良くなっていた。
 ただ、一緒にいたいから一緒にいる――それが現在における、ノーラの一番の本心なのだった。

「なるほど、よーく分かったのです」

 ラティはふむふむと、腕を組みながら頷いていた。

「つまりノーラも、マスターのことが大好きだということですね♪」
「ん! そのとーり! ノーラはマキトのことが大好き!」

 そんなラティの明るい言葉に、ノーラも明るく笑う。そして勢いよくマキトに抱き着いてきた。

「っと!」

 マキトは特に慌てることもなく、ポフッと小さな体を受けとめた。再び、むふーと満足そうに笑う姿に、マキトも思わず頬が緩む。
 最初に出会った頃に比べると、随分と表情が豊かになった。
 ノーラだけでなく、マキト自身にも言えることだ。
 それが一種の『成長』ということを、まだマキトたちは意識しきれていない。

「さぁて――それじゃあ、そろそろ行こうか」

 その掛け声にノーラは顔を上げる。そこにはニカッと笑うマキトがいた。

「壁も開いたことだし、早く神竜を助けに行かないとだ」
「――ん!」

 ノーラも頷き、そしてマキトから離れつつ立ち上がる。そして改めて、マキトたちは地下通路を進み出すのだった。

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