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こどもたちの灯火
入江の宴
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夏の静かな夜。河口付近のテーブルを並べたパーティ。
飾られた提灯と、卓上で揺れるランプが華やかだ。
最初に子供たちがはしゃいで踊りだせば、軽快に踊りの輪が広がる。
そのうち、ビールやラムやワインがほどよくまわった大人達はご機嫌にそこここで盛り上がり、退屈を持て余した三人の子供たちは、そっと薄暗い波打ち際までやってきて海を眺めた。
ひとりは少年、もうひとりは少女、そして少し年下の人影もまた少女である。
灯りは、ここまで離れればほとんど届かず、見えるのは星明かりと月明かりのみ。
穏やかな海が、空の灯りを映してチラチラときらめいている。
星読みに堪能な少女が、視界を埋め尽くす綺羅星のなかに、星座を探して指差した。
「ねぇ、知ってる?この奥の洞窟でね……」
大人の会話を小耳に挟んだジェムが囁いた、難破船の噂。
「このあいだの嵐の夜かしら。交易船の難破?……まぁ、それは船主さんは大変な思いをしてるわね。乗員たちもかわいそうに」
痛ましい顔をするアリシアに、ジェムはあまりタチの良くない笑みを返す。
「難破したの、海賊船らしいんだよね。……何かお宝、あるかもしれない。ねぇ、行ってみようよ」
「なに言ってるのよ!そんな……なにか危ないことでもあったら……」
時々無茶をやらかす、たった2ヶ月差の同い歳ながら弟のような幼馴染。
ジェム少年のアレクサンドロ商会と、アリシアとクリスタ姉妹の家である総督府との関係は蜜月となって久しく、今日も外交と商談のためのパーティを共に開催しているのだ。
「わたし、行ってみたいなー!」
「クリスタはそう言ってくれると思ったよ!」
ほんの少しだけ背の低いアリシアの妹、クリスタがはーい、と片手を上げる。
少々お転婆で物怖じしないこの妹は、どちらかと言えば部屋の中での遊びを好むアリシアとは違い、散歩や外遊び、そして冒険や挑戦が大好きなのだ。
ジェムとクリスタが揃うと、無茶はしないか怪我はしないか、と心配になって、ふたりの笑顔の誘いを断りきれずに、アリシアも着いていくことになるのが常だった。
しかし、今回は海の荒くれ者にまつわるもの。もし噂が本当で、難破船にまだ誰かが残っていたら?
「不安そうだね。大丈夫、素敵なお姫様とかわいい妹分を連れ出すのに、まさか丸腰で行ったりしないよ。……ほら、何かあったら、最近剣の師範に段位認定をもらった僕の腕前を見せてあげる!」
そういえばジェムは、いつの間にかサーベルを手にしている。
「隠しておいたのね?……呆れた、最初から行くつもりでいたなんて」
にんまりと笑うジェムは、それから浜辺の少し脇、流木の山のかげを鞘の先で示した。
「もちろん。剣だけじゃなくて、ボートもね」
そして、クリスタがもうひとつ隠していたものを出してきた。
「そして、ランタンもね!」
ポケットから火打石と火打金まで取り出してくる周到さに、アリシアは仕方なくため息をついてほんの少しだけ項垂れると、「ああもう」と、前髪をかきあげ背を伸ばした。
「わかったわよ、行くわ。でも、パーティが終わるまでに戻るのよ。いいわね」
『はーい!』
まるでピクニックにでも行くような素直さで、残るふたりが手を上げる。
飾られた提灯と、卓上で揺れるランプが華やかだ。
最初に子供たちがはしゃいで踊りだせば、軽快に踊りの輪が広がる。
そのうち、ビールやラムやワインがほどよくまわった大人達はご機嫌にそこここで盛り上がり、退屈を持て余した三人の子供たちは、そっと薄暗い波打ち際までやってきて海を眺めた。
ひとりは少年、もうひとりは少女、そして少し年下の人影もまた少女である。
灯りは、ここまで離れればほとんど届かず、見えるのは星明かりと月明かりのみ。
穏やかな海が、空の灯りを映してチラチラときらめいている。
星読みに堪能な少女が、視界を埋め尽くす綺羅星のなかに、星座を探して指差した。
「ねぇ、知ってる?この奥の洞窟でね……」
大人の会話を小耳に挟んだジェムが囁いた、難破船の噂。
「このあいだの嵐の夜かしら。交易船の難破?……まぁ、それは船主さんは大変な思いをしてるわね。乗員たちもかわいそうに」
痛ましい顔をするアリシアに、ジェムはあまりタチの良くない笑みを返す。
「難破したの、海賊船らしいんだよね。……何かお宝、あるかもしれない。ねぇ、行ってみようよ」
「なに言ってるのよ!そんな……なにか危ないことでもあったら……」
時々無茶をやらかす、たった2ヶ月差の同い歳ながら弟のような幼馴染。
ジェム少年のアレクサンドロ商会と、アリシアとクリスタ姉妹の家である総督府との関係は蜜月となって久しく、今日も外交と商談のためのパーティを共に開催しているのだ。
「わたし、行ってみたいなー!」
「クリスタはそう言ってくれると思ったよ!」
ほんの少しだけ背の低いアリシアの妹、クリスタがはーい、と片手を上げる。
少々お転婆で物怖じしないこの妹は、どちらかと言えば部屋の中での遊びを好むアリシアとは違い、散歩や外遊び、そして冒険や挑戦が大好きなのだ。
ジェムとクリスタが揃うと、無茶はしないか怪我はしないか、と心配になって、ふたりの笑顔の誘いを断りきれずに、アリシアも着いていくことになるのが常だった。
しかし、今回は海の荒くれ者にまつわるもの。もし噂が本当で、難破船にまだ誰かが残っていたら?
「不安そうだね。大丈夫、素敵なお姫様とかわいい妹分を連れ出すのに、まさか丸腰で行ったりしないよ。……ほら、何かあったら、最近剣の師範に段位認定をもらった僕の腕前を見せてあげる!」
そういえばジェムは、いつの間にかサーベルを手にしている。
「隠しておいたのね?……呆れた、最初から行くつもりでいたなんて」
にんまりと笑うジェムは、それから浜辺の少し脇、流木の山のかげを鞘の先で示した。
「もちろん。剣だけじゃなくて、ボートもね」
そして、クリスタがもうひとつ隠していたものを出してきた。
「そして、ランタンもね!」
ポケットから火打石と火打金まで取り出してくる周到さに、アリシアは仕方なくため息をついてほんの少しだけ項垂れると、「ああもう」と、前髪をかきあげ背を伸ばした。
「わかったわよ、行くわ。でも、パーティが終わるまでに戻るのよ。いいわね」
『はーい!』
まるでピクニックにでも行くような素直さで、残るふたりが手を上げる。
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