天使様女神様歌姫様…? いいえただのコスプレイヤー(男)です

れのひと

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自己紹介ですか?

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「ようこそ異世界へ」
「…………は?」

 たっぷりと間を開けて間抜けな返事を返す僕。言葉の意味がわからない…いやわかるんだけど、理解が出来ない。無駄に繰り返す瞬きが増えて落ち着かなくなる。

「ちょっ 瞬き早っ 笑いを取りたいのか?」

 そんなわけないだろう? 状況の理解に苦しんでいる人の前で笑いをこらえるのをやめてくれ…

「異世界って…あの異世界ですか?」
「うーんと、あのって言うのが何を指しているのかわからないけど、日本が存在していない世界なのは間違いないね」

 急に息苦しくなってハクハクと酸素を求める。

「ぶっ 今度は金魚の真似か?」
「ちがっ 笑わないでくださっ」

 なんなんだこの人はこっちは本当に驚いているのになんか怒りがこみあげてくるっ でもその怒りのせいか呼吸が落ち着いてきた。もしかしてわざとなのか…?

「もうっ 次の質問にも答えてくださいよ!」
「あーわるいわるい。えーと、日本語が話せる理由だっけ? ではちょっと自己紹介といたしましょうかお嬢様?」
「お嬢様って…」

 おいおい。僕男なんだけどな…コスプレのせいで女に見えるのか。

「ではあらためて。名はシエル・ブランジット年は12歳」
「12歳!!」
「ブランジット男爵の次男で、元日本人で転生者だ。この世界に来たことで手に入れた力で成り上がる予定…こんなところか?」
「転生…あるんだ」
「あるからこうして日本語で会話出来ているだろう?」

 言われてみればそうだ。まあこの人の言っている言葉が本当ならだけども。じつは僕と同じくただのコスプレイヤーの可能性だって0ではない。それにしても12歳ってとてもそうは見えないな…高校生くらいに見える。

「あと力って何…」
「力っていうのは…ああ丁度いいな」

 窓の外をちらりと覗き込んだシエル・ブランジットは僕を手招きして外を見るように指をさした。どうやら何かを見せたいらしい。窓の外を見るくらいどうと言うことはないと思って僕はその方向に視線を向ける。

「…え、何あれ」

 馬車の少し後方に犬みたいな生き物が二本足で走っていた。しかも二匹もいる。

「──────!」

 窓の外へ左手を出すと日本語ではないあの知らない言葉を何か口にしたシエル・ブランジット。その左手から何かが飛んでいった。何か…うん。何なのかわからないのだから何かとしか言いようがないものだ。

「ギャンッ」

 犬みたいな生き物の一匹が声をあげて血を吹き出した。僕の顔から血の気が引くのがわかる。

「こここ…ころっ ころ!」

 動物虐待っ 犯罪者! やばい奴の所に僕は来てしまったのか!?

「落ち着けって…」
「ひっ」

 狭い馬車内で逃げようがないのに僕はさがれるところまで下がった。

「あーあれは魔物、モンスター、化け物、害獣、OK?」

 とりあえず犯罪ではないことがわかり僕は何度も大きく首を縦に振った。犯罪じゃないとしてもむやみに生き物を殺すのは普通に怖いと思う。下手に逆らわないようにしよう…

「それよりほらちゃんと見てたか? 魔法」
「魔法…魔法?」

 ああっ あの手から飛んでった何か! なるほど力と言うのは魔法のことだったのか…異世界、転生、魔法、貴族、成り上がり…ふむ。

「そう魔法が使えるんだよこの世界は」
「じゃあもしかしたら僕も何か魔法が使える…?」
「それはわからないが…それよりお嬢様も自己紹介してもらえると嬉しいのだが?」
「あ、そうでしたね。僕は…」
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