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北のダンジョン

ジエル視点③

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 一人はとても自由でもあり不自由でもある。
 ルーが王都に向かってから何日か経った。その数は数えていないのでわからないけど、私がわかる数え方で前数えたらルーに怒られたので仕方がない。その数え方は食事の回数。食べたものを思い出すとすぐに数えられた。おいしいと思うものもあまりおいしいと思えないものも、食事はとても大切で生きていくために必ずいる者の一つ。それを数えるのが何が悪いのか私にはわからない。だけどその数え方はやらないように言われたんだから数えようがない。つまり何が言いたいかというと、いい加減退屈であるという話だ。薬草は手元にないのでポーションは作れない。食事は毎日決められた回数食べるだけ。人には食べられる限界があるのだから仕方がないことだけども、いつか思いっきりそんなことを気にせず食べてみたいと思う。

 さっきまで 横にしていた体をむくりと起こし私はそっと窓の外を眺めた。そこには見えないはずのものが見えた。

「そう…そろそろなのね」

 ルーに外へ出ないように言われているけど私は外へ出なければいけない。本当は窓に映るはずのない光景…でもそれはこれから起こりうる未来の一つ。危険もあるけれど私はこれを選択する。大丈夫…命の保証だけはされている。ゆっくりと窓に近づくと私は普段開けない窓を外へと開いた。

「な、なんだ!?」

 そこへ丁度通りかかったちょっと変な服装をした人に窓がぶつかった。これでいい…私はじっとその人を見た後何もなかったかのように窓を閉じた。その直後入り口の扉の方を乱暴に叩く音が聞こえてくる。

「始まった…」

 命が保障されているとはいえ怖くないわけではない。その緊張感にいつもより大きく喉の音が聞こえてくる。そんな気持ちが顔に出ないように気をつけながら私は扉を開いた。扉の外にいたのはさっき窓をぶつけた人とその関係者だと思う人たちだった。

「ちょっとこっちへ来いっ」

 その中の一人が私の腕をつかみ扉の外へと引っ張り出す。これでいい…外にいた人たちは私を見て驚いた顔をする。私は約束を破っていない。だって自分で外へ出たんじゃないもの。

「これは…」
「おいっ」
「はっ」

 私がそんなことを考えている間にも状況が変わっていく。

「お嬢ちゃんおうちの人は?」
「留守番してた。今はいない」
「それは好都合」

 今から何が起こるのか初めからわかっていたけれど、私は何のこと? と言いたげに首を傾けて見せる。まるで何もわかっていない子供のように。大丈夫だからと自分に言い聞かせる。

 私のその反応を見た人たちはすぐに私の口と目を塞いだ。そして家の扉を閉じ私を担ぎ上げ運んでいく。私は抵抗しない。大人しくしていれば怪我をすることはないからね。あーだけど一つだけ…やっぱり後でルーに怒られるかな~ ちゃんと話せばわかってくれるかな? これが私達の目的に一番の近道だということ。これをきっかけに私達は目的の人物を連れていけるということ。時間は待ってくれないの…後のことを考えたら早く行動を起こすべきだと思うの。

 抱きかかえられ走る振動とちょっとした緊張、それと後で怒られるかもしれないことを考えながら私は人さらいにあった。
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