【召喚魔法ドンナー】はゴミ魔法かと思ったが意外と使えるっぽい

集会

　焦げかけた目玉焼きと袋から取り出し皿に出しただけのサラダでお腹を満たし、俺とユニは予定していた通り？　の集会へと向かうことになった。もうね名前からして嫌な予感しかしないわけなんだ。はっきり言ってさっさとユニと別れて仕事をするための資格とやらを貰いに行きたいところ。すぐにでもお金を稼がないと宿に泊まるお金すらないからな。食べ物は何とかなりそうだけど寝る場所がないと困るわけで、最悪あの召喚で取り出した店舗で寝てもいいんだが…そこらに勝手に置いたままにすると、それはそれで何か問題になりそう。まあそのうち一度出して一応中は確認しておきたいが。

「ここです！」

　ユニが１軒の民家の前で足を止めた。どんどんとユニが扉を叩くと室内から物音が聞こえてきて一人の女の人がでてくる。

「セイラいますか？」
「おやユニかい。あの子なら遊びに出てるよ」
「わかりましたっ」

　扉が閉まる時女の人がちらりとこちらを見てなぜか深いため息を吐きだしていたように見えたのは気のせいだろうか？　なんていうかこう…残念な物をみるような。

「行きましょう！」
「いやちょと待てよ。今遊びに出てるって言ってたじゃないか」
「はい」

　つまり集会のために声をかけにきたと思う人物がいなかったわけで、それなら次の行き先はまだ決まっていないはず。なのにユニは何も言わずに歩き出そうとした。どこ行くつもりなんだという話。

「ですからセイラたちがいるところへ向かうんですよ？　折角天使様がいらしたんですからちゃんとセイラにも会わせてあげたいんです！」
「…ちなみにどこへ？」
「港ですね～」

　そこさっきいたところ！！　頭を抱える俺を手を取りユニは歩き出した。

　さっき俺たちが食事をした場所よりも手前でユニは左へと道を曲がっていく。あー納得した。確かに港の一部かもしれないけど、俺たちがいた場所からは少し離れているし奥まっているので、タイミングを逃すと完全にすれ違うコースだった。

「…ちょっとした公園かな？」
「こうえんが何かわかりませんけど、ここの小広場でよく僕たちは遊んでいるんです。あ、ほらいました！　セイラーッ」

　ユニが大きな声をあげて手を振りながら走っていく。もちろん俺の手を引きながら…身長差がっ　転ぶ！　転ぶって！！　初めから走るってわかっていればなんともないけど、ユニの身長でこっちのことを全く気にせず走り出すとちょっとバランスが悪い。半分引きずられるかのように俺はどうにかついて行った。

「こっちこっち～」
「セイラ聞いて聞いて！！」
「うん、話がしたいのはわかったからまずは落ち着こうか～？」

　セイラと呼ばれた女の子がユニに手を引かれている俺をちらりと見たあと、なだめるようにユニの肩を叩いた。

「これが落ち着いてもらえると思うの！？」
「で、この人が今回の犠牲者？」

　なんか不穏な言葉が聞こえてきたんだが…

「違うよ！　本物の天使様だよっ」
「だって前回もそう言って小麦粉を頭から被った人連れてきたじゃない。あれは流石に笑えた～　だって歩くたびに粉が…っ　ぷふっ」

　ユニ…天使様っぽい人見つけるとここに連れてくるんだ…しかも小麦粉被った人って無理がありすぎる。というか集会はどうなったんだ？　ただ楽しそうに会話しているだけにしか見えないが…お？　よく見たらこのセイラってこの後ろに　小さな男の子がいるじゃないか。しかもこっちをガン見しているし。

「…んっ」

　男の子はゆっくりと両手を上に上げると手をハの字になるように構えさらに俺のことを睨むように見ている。これはあれか…？　あれなのか…？　彼にとってあのポーズはきっと手から何かしら不思議なパワーが出ているつもりなんじゃないのか？？　

「…ぐ、ぐあ～…やられ…た」

　胸を押さえぱたりとゆっくり俺はその場に倒れる。閉じている目をそっと開けると嬉しそうに腰に手を当てて胸をそらしていた。よし！　どうやら正解だったようだ。

「え、ちょっと天使様どうしたんですかっ」

　そんな俺に気がつき慌ててユニが近寄ってくる。俺は指を１本立て黙っているようにジェスチャーをするがユニは首を傾げている。そして俺の視線に気がつきぽかんと口を開けた。

「ふっ　やるな…名前は？」
「クルト！」

　フンスッ　と鼻息を吐き出した男の子の名前はクルトというらしい。服についた砂を払いながら俺は立ち上がる。すると笑い声が聞こえてきた。

「くぷぷ…っ　今回は愉快な人ね～！」
「もうっ　本当に天使様なんだよ？　だって天使様が空から急に出てくるところちゃんとみたし！」
「「え？」」

　ユニの発言に俺とセイラが驚く。

「…うそでしょう？」

　疑ってかかるようなセイラの言葉にユニはゆっくりと首を振る。空から…つまり俺がこの世界に現れた瞬間をユニは見ていたってことなのか？

「天使様の特徴は銀色の髪の毛、見守っているはずのこの世界のことを知らない、それと空からやってくる…」
「全部当てはまるんだ！　だから間違いないっ」

　空からくるというのは初めて聞いた話だが、それが本当だとするとユニが俺のことを天使様だと言い続けるのもわからないでもない…が。残念ながらただの人なんだよな～　まあ別の世界の、という言葉が頭につくが。