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49.リリーの卒業
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それから、3年生だったリリーが卒業するまでの半年間、クラウスはリリーという存在に助けられながら何とか授業を受け続けた。
クラウスへの嫌がらせはかなり減ったし、万が一でもクラウスに危害が及びそうな時は、必ずリリーがどこからともなく現れ、救ってくれた。
とはいえ、リリーは学年が違うし選択科目も違う。だからいつも側にいてくれた訳ではなかったし、リリーも俺とは一定の距離を保っているように感じた。
…元々俺たちは寡黙な方で会話は少なかったが、より話さず、笑い合うこともなかった。リリーは、どこかそれが義務かのように、俺を助け続けてくれた。…彼女の本心が隠されてしまったようで、クラウスは寂しかった。
一方で、シリルやノア、マシューとは完全に関係が切れてしまった。
避けられていることは明白で、一時期勇気を出して話しかけに行っていたが、その度にさりげなく逃げていってしまった。
周りは振られ続ける俺のことを最初冷笑し、次第に「彼らに迷惑だ。話しかけるな」と俺を攻撃し出した。
俺は怪我が増えたのとリリーにこれ以上負担をかけないため、シリルたちに話しかけることは断念した。
そんな、リリーに助けられた半年が経ち、リリーもついに卒業してしまった。
卒業式は恒例の大パーティーも取りやめになり、ただ学園で形式通りの式を行うだけの慎ましやかなものとなった。
リリーは卒業後、宮廷魔法官に入るようだ。
宮廷魔法官は、魔法研究から魔術師育成まで魔法に特化した官職だ。
リリーはやはりというべきか、魔法研究科に進むようだ。…実は、リリーの両親も魔法研究科の優秀な職員だったらしい。リリーの思いは聞いていないが、きっと両親の出来なかったことをやるつもりなのではないかと思う。
宮廷魔法官になるということは、リリーも宮廷の近くに引越し毎日宮廷に通うことになる。
きっと、未だ会えていないギルバートやアーサーとも仕事をすることがあるかも知らない。
そのことを少し羨ましく思う気持ちもあるし、リリーとの別れを寂しくも思った。
果たして、リリーのいない後2年間、俺はこの学園で耐えられるのだろうか…。
「クラウス」
その時、卒業式を終えたリリーが、卒業の証の魔石を手にしたままやってきた。リリーの魔石は瞳と同じ紫に輝き、綺麗だ。
凛と佇むリリーは、その暗い茶色の髪をなびかせ、瞳は以前より信念を持ったようにキラリと光っており、改めて綺麗で強い人に成長したんだなと実感した。
「卒業おめでとう」
自然とクラウスは微笑んだ。
リリーは珍しく目を細めて笑った。
「ありがとう」
「他の人と話さなくていいのかい」
実はさっきから、遠くからチラチラとリリーを見ている人たちがいる。後輩の女子から、頬を染めている男子まで様々だ。
リリーは平民差別を受けながらも一匹狼で他を寄せ付けなかったが、実はその強さや秀才ぶりに憧れている人もいたようだ。
「いいのよ。最後にあなたと話したかったから」
そう言われると嬉しく思う。
リリーは、急に真剣な顔をした。
「クラウス、あなたが卒業するまで、後2年よね。…不安かもしれないけど、…決して諦めないで。あなたを想う人は、確実にいるから」
それは、離れていてもリリーは俺を気にかけてくれる、ということだろう。
ありがとう、と素直に頷いた。
「卒業したら、あなたはもう少し生きやすくなる。生きやすくなるよう、私た──いや、私は力を尽くすわ。…あなたは1人ではないってことを、ずっと忘れないで」
その言葉は温かく、俺の心に届いた。
クラウスはぐっと熱いものを堪えると、彼女を安心させるように笑って頷いた。
「ありがとうな。忘れないよ」
クラウスへの嫌がらせはかなり減ったし、万が一でもクラウスに危害が及びそうな時は、必ずリリーがどこからともなく現れ、救ってくれた。
とはいえ、リリーは学年が違うし選択科目も違う。だからいつも側にいてくれた訳ではなかったし、リリーも俺とは一定の距離を保っているように感じた。
…元々俺たちは寡黙な方で会話は少なかったが、より話さず、笑い合うこともなかった。リリーは、どこかそれが義務かのように、俺を助け続けてくれた。…彼女の本心が隠されてしまったようで、クラウスは寂しかった。
一方で、シリルやノア、マシューとは完全に関係が切れてしまった。
避けられていることは明白で、一時期勇気を出して話しかけに行っていたが、その度にさりげなく逃げていってしまった。
周りは振られ続ける俺のことを最初冷笑し、次第に「彼らに迷惑だ。話しかけるな」と俺を攻撃し出した。
俺は怪我が増えたのとリリーにこれ以上負担をかけないため、シリルたちに話しかけることは断念した。
そんな、リリーに助けられた半年が経ち、リリーもついに卒業してしまった。
卒業式は恒例の大パーティーも取りやめになり、ただ学園で形式通りの式を行うだけの慎ましやかなものとなった。
リリーは卒業後、宮廷魔法官に入るようだ。
宮廷魔法官は、魔法研究から魔術師育成まで魔法に特化した官職だ。
リリーはやはりというべきか、魔法研究科に進むようだ。…実は、リリーの両親も魔法研究科の優秀な職員だったらしい。リリーの思いは聞いていないが、きっと両親の出来なかったことをやるつもりなのではないかと思う。
宮廷魔法官になるということは、リリーも宮廷の近くに引越し毎日宮廷に通うことになる。
きっと、未だ会えていないギルバートやアーサーとも仕事をすることがあるかも知らない。
そのことを少し羨ましく思う気持ちもあるし、リリーとの別れを寂しくも思った。
果たして、リリーのいない後2年間、俺はこの学園で耐えられるのだろうか…。
「クラウス」
その時、卒業式を終えたリリーが、卒業の証の魔石を手にしたままやってきた。リリーの魔石は瞳と同じ紫に輝き、綺麗だ。
凛と佇むリリーは、その暗い茶色の髪をなびかせ、瞳は以前より信念を持ったようにキラリと光っており、改めて綺麗で強い人に成長したんだなと実感した。
「卒業おめでとう」
自然とクラウスは微笑んだ。
リリーは珍しく目を細めて笑った。
「ありがとう」
「他の人と話さなくていいのかい」
実はさっきから、遠くからチラチラとリリーを見ている人たちがいる。後輩の女子から、頬を染めている男子まで様々だ。
リリーは平民差別を受けながらも一匹狼で他を寄せ付けなかったが、実はその強さや秀才ぶりに憧れている人もいたようだ。
「いいのよ。最後にあなたと話したかったから」
そう言われると嬉しく思う。
リリーは、急に真剣な顔をした。
「クラウス、あなたが卒業するまで、後2年よね。…不安かもしれないけど、…決して諦めないで。あなたを想う人は、確実にいるから」
それは、離れていてもリリーは俺を気にかけてくれる、ということだろう。
ありがとう、と素直に頷いた。
「卒業したら、あなたはもう少し生きやすくなる。生きやすくなるよう、私た──いや、私は力を尽くすわ。…あなたは1人ではないってことを、ずっと忘れないで」
その言葉は温かく、俺の心に届いた。
クラウスはぐっと熱いものを堪えると、彼女を安心させるように笑って頷いた。
「ありがとうな。忘れないよ」
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