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ずっと隣にいられたら

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「はよ……ちあ、ちゃん」

 アンジェロが身じろぎしたからか、その腕に抱かれていた順もまた目を開いた。しかしまだ眠いらしく、申し合わせたように二人揃ってあくびをする。
 それでも千晶は固まったまま動けなかった。

(どうして? 何でアンジェロがうちにいるわけ?)

 寝起きに加え、動揺しているせいで、頭の中は真っ白だ。

「早起きなんだね、千晶」
「え、あ、えっと、その」

 正直、何がなんだかまだわからない。しかしアンジェロがゆっくり身を起こし、彼が濃紺のドレスシャツを着ているのを見た時、唐突に昨夜の記憶が蘇ってきた。
 黒のジャケットこそ脱いでいるものの、その格好はチャオチャオのパーティーで演奏した時のままだった。

「あ」

 もちろん彼は無理やり家に押しかけてきたわけではない。
 昨夜ショッピングモールの屋上で夜景を堪能した後、帰宅するためタクシーに乗ろうとした時、順が目を覚まして騒ぎ始めたのだ。

 ――嫌だよ! アンジェロも来なきゃ帰らない! 嫌だってば! タクシー、乗りたくない! アンジェロ、一緒におうちに帰ろうよ! 

 いつもおとなしい彼にしては珍しい反応で、千晶が途方に暮れていると、アンジェロは「いいよ」と頷いてくれた。

 ――大丈夫。順が眠ったら、すぐ帰るから。

 そう言ってタクシーで家まで送ってきてくれたのだ。ところが何かのスイッチが入ってしまったのか、順ははしゃいで、その後もなかなか寝ようとしなかった。そこで千晶はアンジェロに相手を頼み、キッチンに立ったのだが――。

「僕、あのまま眠っちゃったみたいだ」
「え、ええ、そうね」
「グラッツェ、千晶。ブランケットをかけてくれたんだね。昨日は順と遊んでいたはずなんだけど、途中から何も覚えていなくて」

 三人分のココアを作って戻ってみると、アンジェロと順はソファの上で寝入ってしまっていたのだ。
 本当は二人ともずいぶん疲れていたのだろう。順はアンジェロにしがみつくようにして、一方のアンジェロも小さな身体をしっかり抱いて、すっかり熟睡していた。
 まるで年の離れた仲のいい兄弟のようで、起こすのが気の毒になり、千晶は苦笑しながらブランケットをかけてやったのだった。

「ソファで寝ちゃってごめん」
「ううん、私の方こそいろいろ面倒かけちゃってごめんなさい。昨日は本当にありがとう」
「どういたしまして」

 寝起きでアッシュブラウンの髪は乱れ、表情はどこかぼんやりしている。それでも隣でモゾモゾと動く順に向ける視線は優しくて、アンジェロの横顔に見入らずにいられない。

「あ、そうだ。シャワーを――」

 そう言いかけて、千晶は口ごもった。来客用に歯ブラシの買い置きやタオルは用意してあるものの、男性用の着替えがないことに気づいたのだ。
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