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16話 たまにはお酒を
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そろそろ帰ろうと、俺は席を立つ。
そこで教官がにかっと笑う。なんだよ、もう俺は何も聞きたくないぞ。
「王子、まくらはご覧になられましたか」
「ええ、水色のシマシマまくらですよね」
どきんとする。今日の教官は、突っ込みどころと、暴露感がすごくて 対処するのが辛い。
そして、あのまくらにはやばいものでも入っていたのだろうか。
ここで白状しよう。あれを見てから俺はおかしくなった。
あの両陛下と王太子殿下は顔と名前しか知らない、会ったこともない赤の他人だ。
だが、まくらを見てから、名前を聞くごとに親しく感じ始めている。
そしてまくらに家族の愛情と言うものが入っていると信じ始めている。
もともと前世でも俺の両親は忙しく、俺は教育係の執事に育てられたようなものだ。
だからかもしれないが、それ程濃い絆が俺と両親の間にあるとは思えなかった。
外国を回る両親に連れられて一緒にいたと言いたいのだが、大人と子供の時間は違うため、夜遅い両親とはろくに話すひまもなかった。
子供のころでさえ、月に2,3回しかまともに時間を過ごせず、あとは朝に姿を見かけて挨拶するのがせいぜいだったのが、20歳を過ぎ、米国のMBAに入ったころには年に2,3回会うという状態になっていた。
特に最近は修行として、外部の会社に入り、独立してマンションで暮らしていたことから、1年近くは会っていない。
もちろん愛情は持っていたし、両親からも愛されていたと知ってはいた。
ただ、関係が希薄だっただけだ。
そこに何故か両陛下と王太子殿下が入り込んできて、混ざったと言うか・・・これも神の仕業だろうか。
そうであっても、あのまくらを見て感じるほどの愛情を持っていてくれる家族なら・・・・・それでも良いと思っている。
いつか会った時に結論はでるだろうし、それまではこの気持ちを持ったままでいたい。
この世界にひとりぼっちはさみしいだろう。
そして教官は嬉々として話を続ける。
「あれは陛下がアデス高原の綿花を使って、糸と綿を作らせ、殿下がチェロスの青花を取り寄せて、染めさせ。
王妃殿下が手ずから ”ジル” と刺繍した、心の篭った枕です」
「えぇ、あれを見ただけで、疑いようもなく家族の愛情を感じました。
記憶に齟齬を感じたのもそのせいです」
「それはよかった。提案した殿下もお喜びになるでしょう。
いつかまた、お泊りに来てくれるほど仲良くできることを希望して用意させていた一品だそうです」
「兄上でしたか・・・愛情に溺れそうなので手加減していただけるとうれしいのですが」
「なにをおっしゃいますやら。
そうそう、冒険者活動は休みになりますが、鍛錬は別です。
明日から3人で来てください。
私からの敬愛の気持ちを沢山差し上げるつもりです」
そして俺たちは小部屋を出された。
ちぇ、そんな愛情はいらねえよ、教官!!
3人で宿に帰り、俺の部屋に集まった。
そして俺は半分ポーチに移してあった食料を取り出した。
王子が好きだったシャルトの38年物のワイン、パストラミサンドイッチ、苺も出した。
グラスは王宮で使用している青緑色の不透明なものだがこの重みがいい。
「飲もうぜ」
俺がワインボトル(ただし陶器製)を手に取ると、ゴードンがすっ飛んできて俺からボトルを奪った。
「ジル様、そのようなことは私がいたしますから」
「でも俺もこれから庶民の生活をするわけだから、何でもやろうと思って・・・」
「この、ガラス製の皿に盛られたつやつやで大粒の苺を前にしていわれる台詞じゃないと」
オリバーが何か言っているようだが、スルーしよう。
「でもこれはシャルトの38年物ではありませんか。金貨2枚はします、そのように乱暴に扱っては・・・」
こいつは俺の家事能力に不安を抱いているようだ。
しかたがない、神様もこいつらの魂は不安定だといっていたし、好きにさせよう。
やれる能力のある人間より、やりたい人間にまかせたほうがいいだろう。
それよりもだ。
「あのな、宿代とか食事代をいちいちばらばらに支払うのはめんどうだろう。
共有金を集めて、それで支払うようにしよう。
一人大金貨10枚な」
「それは、少し多いような」
「そうだ、俺は金貨200枚以上、銀貨400枚以上持っているから、両替もできるぞ。
会計係はゴードンに任せる。物の値段を良く知っているみたいだし」
「それは任させて頂きますが、集めるのは一人金貨10枚で大丈夫です。
あと、私たちも細かい貨幣を持っておりますので、それはジル様がそのままお持ちください」
「そうか?それなら、それで頼む」
(しかし、こいつらもたいがいである。いかにも世間を知ってます風のゴードンであるが、彼の言う金貨10枚(100万相当)を共有金にするのはどうかと思う、金貨1,2枚でいいんじゃないか。所詮彼らはお坊ちゃんの集まりである。証拠にオリバーだって何も言わない BY 庶民)
「それでは乾杯!」
グラスのたてる澄んだ音が耳に心地よい。
「しかし、良かったな」
「何がですか?」
「家族に嫌われているのがうそで本当は家族と仲が良いと分かってさ。
今度会った時は、2人共、弟と妹に抱きつかれるぞ」
「う~ん、嬉しくは思いますが、泣かれそうで・・・」
「私は3年後ですか・・・20歳になった弟に抱きつかれるのは、ちょっと・・・
だって、あいつは今ですら、年に似合わず、ふてぶてしい顔をしているんですよ」
2人して俺の顔を見る。
「それよりもジル様は殿下に抱きつかれるのが確定してますね」
「あのような枕を贈られるぐらい愛されているのですから」
ちぇ、笑うなよ。
「3年後に21歳と24歳になる、男同士が抱き合う。
ありえない・・・だいいち美しくないじゃないか」
「そんなことはありません、お2人とも容姿がよろしいので絵になります」
「なるもんか!
オリバー曰く、ふてぶてしい弟も却下だな。
ゴードンのところだけだな、許せるのは」
たまには憂さ晴らしに飲むのもいいもんだ。そして王宮のワインはやはりおいしい!
そこで教官がにかっと笑う。なんだよ、もう俺は何も聞きたくないぞ。
「王子、まくらはご覧になられましたか」
「ええ、水色のシマシマまくらですよね」
どきんとする。今日の教官は、突っ込みどころと、暴露感がすごくて 対処するのが辛い。
そして、あのまくらにはやばいものでも入っていたのだろうか。
ここで白状しよう。あれを見てから俺はおかしくなった。
あの両陛下と王太子殿下は顔と名前しか知らない、会ったこともない赤の他人だ。
だが、まくらを見てから、名前を聞くごとに親しく感じ始めている。
そしてまくらに家族の愛情と言うものが入っていると信じ始めている。
もともと前世でも俺の両親は忙しく、俺は教育係の執事に育てられたようなものだ。
だからかもしれないが、それ程濃い絆が俺と両親の間にあるとは思えなかった。
外国を回る両親に連れられて一緒にいたと言いたいのだが、大人と子供の時間は違うため、夜遅い両親とはろくに話すひまもなかった。
子供のころでさえ、月に2,3回しかまともに時間を過ごせず、あとは朝に姿を見かけて挨拶するのがせいぜいだったのが、20歳を過ぎ、米国のMBAに入ったころには年に2,3回会うという状態になっていた。
特に最近は修行として、外部の会社に入り、独立してマンションで暮らしていたことから、1年近くは会っていない。
もちろん愛情は持っていたし、両親からも愛されていたと知ってはいた。
ただ、関係が希薄だっただけだ。
そこに何故か両陛下と王太子殿下が入り込んできて、混ざったと言うか・・・これも神の仕業だろうか。
そうであっても、あのまくらを見て感じるほどの愛情を持っていてくれる家族なら・・・・・それでも良いと思っている。
いつか会った時に結論はでるだろうし、それまではこの気持ちを持ったままでいたい。
この世界にひとりぼっちはさみしいだろう。
そして教官は嬉々として話を続ける。
「あれは陛下がアデス高原の綿花を使って、糸と綿を作らせ、殿下がチェロスの青花を取り寄せて、染めさせ。
王妃殿下が手ずから ”ジル” と刺繍した、心の篭った枕です」
「えぇ、あれを見ただけで、疑いようもなく家族の愛情を感じました。
記憶に齟齬を感じたのもそのせいです」
「それはよかった。提案した殿下もお喜びになるでしょう。
いつかまた、お泊りに来てくれるほど仲良くできることを希望して用意させていた一品だそうです」
「兄上でしたか・・・愛情に溺れそうなので手加減していただけるとうれしいのですが」
「なにをおっしゃいますやら。
そうそう、冒険者活動は休みになりますが、鍛錬は別です。
明日から3人で来てください。
私からの敬愛の気持ちを沢山差し上げるつもりです」
そして俺たちは小部屋を出された。
ちぇ、そんな愛情はいらねえよ、教官!!
3人で宿に帰り、俺の部屋に集まった。
そして俺は半分ポーチに移してあった食料を取り出した。
王子が好きだったシャルトの38年物のワイン、パストラミサンドイッチ、苺も出した。
グラスは王宮で使用している青緑色の不透明なものだがこの重みがいい。
「飲もうぜ」
俺がワインボトル(ただし陶器製)を手に取ると、ゴードンがすっ飛んできて俺からボトルを奪った。
「ジル様、そのようなことは私がいたしますから」
「でも俺もこれから庶民の生活をするわけだから、何でもやろうと思って・・・」
「この、ガラス製の皿に盛られたつやつやで大粒の苺を前にしていわれる台詞じゃないと」
オリバーが何か言っているようだが、スルーしよう。
「でもこれはシャルトの38年物ではありませんか。金貨2枚はします、そのように乱暴に扱っては・・・」
こいつは俺の家事能力に不安を抱いているようだ。
しかたがない、神様もこいつらの魂は不安定だといっていたし、好きにさせよう。
やれる能力のある人間より、やりたい人間にまかせたほうがいいだろう。
それよりもだ。
「あのな、宿代とか食事代をいちいちばらばらに支払うのはめんどうだろう。
共有金を集めて、それで支払うようにしよう。
一人大金貨10枚な」
「それは、少し多いような」
「そうだ、俺は金貨200枚以上、銀貨400枚以上持っているから、両替もできるぞ。
会計係はゴードンに任せる。物の値段を良く知っているみたいだし」
「それは任させて頂きますが、集めるのは一人金貨10枚で大丈夫です。
あと、私たちも細かい貨幣を持っておりますので、それはジル様がそのままお持ちください」
「そうか?それなら、それで頼む」
(しかし、こいつらもたいがいである。いかにも世間を知ってます風のゴードンであるが、彼の言う金貨10枚(100万相当)を共有金にするのはどうかと思う、金貨1,2枚でいいんじゃないか。所詮彼らはお坊ちゃんの集まりである。証拠にオリバーだって何も言わない BY 庶民)
「それでは乾杯!」
グラスのたてる澄んだ音が耳に心地よい。
「しかし、良かったな」
「何がですか?」
「家族に嫌われているのがうそで本当は家族と仲が良いと分かってさ。
今度会った時は、2人共、弟と妹に抱きつかれるぞ」
「う~ん、嬉しくは思いますが、泣かれそうで・・・」
「私は3年後ですか・・・20歳になった弟に抱きつかれるのは、ちょっと・・・
だって、あいつは今ですら、年に似合わず、ふてぶてしい顔をしているんですよ」
2人して俺の顔を見る。
「それよりもジル様は殿下に抱きつかれるのが確定してますね」
「あのような枕を贈られるぐらい愛されているのですから」
ちぇ、笑うなよ。
「3年後に21歳と24歳になる、男同士が抱き合う。
ありえない・・・だいいち美しくないじゃないか」
「そんなことはありません、お2人とも容姿がよろしいので絵になります」
「なるもんか!
オリバー曰く、ふてぶてしい弟も却下だな。
ゴードンのところだけだな、許せるのは」
たまには憂さ晴らしに飲むのもいいもんだ。そして王宮のワインはやはりおいしい!
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