ざまあ~が終ったその後で BY王子 (俺たちの戦いはこれからだ)

mizumori

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18話 冷たい婚約者

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 一通り自分史を書き終えた俺たちは、訓練のあと小部屋に食べ物を持ち込み昼食としている。
明日からの面談のための打ち合わせだ。

 そして俺たちが書いたものを読んだ教官からは呆れと哀れみの目で見られた。

「あなた方の中ではこのようになっていたのですか」

 そして男爵令嬢に貢いだ金額を見たときにはその哀れみの目はもっと深くなっていた。
いやさ、この作業は地味に心を削るよね。

「それでおかしく思うところがあれば、指摘していただきたいのですが」

 教官は前髪をくしゃりとすると、頭を振った。

「全部違うとしか言いようがないので・・・
なんですかこの小芝居は、オペラでも見せられている気分です」

 そしてじっと俺を見る。

「特に王子のが秀逸ですな。このまま台本として使えます」

「えぇ、さすがジル様です」

「そんなことで、流石と言われても・・・
それにあれは俺が書いた台本じゃないからな」

「そうですよ、あれは敵の書いた台本です。
馬鹿なこと言わないでいただけますかオリバー」

 ほんとだよ、きらきらした目を俺に向けるんじゃありませんオリバー。
そしてゴードンは立ち直りが早いな、もう敵認定か。
まあ、こいつはプライドが高いからな、自分をこけにした相手を許せないんだろう。

「それで、まずはですね・・・家族関係はこの間話したとおりです。うまくいっていました。エリオン殿とヤルゲルト殿も同じです。

あとは使用人ですね・・・もう少し親しみを持ったり、信頼していても良さそうなのですが。
ただ世話をしてくれていたというだけの印象しかないのもおかしく思います。
私は直接的には王子のことしか知らないのですが、家令のセバスチャンとは主従の仲を超えたものがあったように見えました。特に子供のころは、側についていてくれる女官とか従僕とはかなり親しくなるものです。
その信頼関係があってこそ、彼らは大人になった主を支えられるものです。
でもそれが見えません。あなた方全員にそのような存在がいたはずなのですが」

 気にもしていなかったけれど、あの家令の名前はセバスチャンというんだ。
セバスチャンだって!俺にセバスチャンがいたんだ。
今度会ったら仲良く出来そうな気がする。なんたってセバスチャンだものな!

「それで・・・婚約者の方々ですが・・・」

「うん、なんか悪かったと思っている」

 オリバーが俯く。

「確かにオリバー殿に関してはそうなのですが。

そうだ、これだけは言っておかなくてはなりません。
彼女たちは一切いじめをしていません。
最初のころに貴族のたしなみとか言い聞かせていたとは聞きましたが、それだけのようです。
令嬢方の中で普通にある、あれこれの鞘当もなかったようです。
もっとも私が知らないだけと言うこともありますが、なにしろ女性同士のことですから。


それでオリバー殿ですが、婚約者の方とはそこそこ仲良くされていたようです。
このままいけば、問題なく仲の良いご夫婦になったでしょう。

エリオン殿とヤルデルト殿もそうです。
特筆することなく普通の関係でしたね。

ただ王子の婚約者、フィーゲル侯爵令嬢セリーヌ様は違いました。
12歳の時、彼女は1つ上でしたが、婚約されたわけですが、なにもありませんでした。訪問もお茶会ですら。
年に数回定められている夜会に出席する。それも年齢が低かったのでそうそうに退席される、ほぼそれだけの関係でした」

 えっ、彼女は俺を慕っていたのではなかったの。それも、うそなんだ。
例え何とも思っていなくとも、女性に冷たくされるのは堪える。

「陛下に仲良くするようにと言いつけられていたこともあったので、王子は殿下と相談して手紙や贈り物を送られていたようです。
ただそれに形式的な礼状が来るのみで、会いたいとの手紙をおだしになっても、彼女はあれこれと理由をつけて断わっていました。そして半年も過ぎたころには、月に一回手紙と贈り物を送るだけの関係になっていたようです。

同様に彼女と仲良くしていた伯爵家令嬢ヘルミーナ様もなにを思われていたのか、段々と婚約者のゴードン殿と疎遠になり、そして2年前まではその状態が続きました」

「「「・・・・・」」」

「陛下はとても不快に思われたようですが、2年前のあれですべてが吹き飛びました」

「「「・・・・・」」」

「ただ、この婚約を強引に推し進めたのは侯爵の側なので、不可思議なことです」

「・・・王家の基盤は弱い・・・」

 思わずと言ったように声が出た。


 俺は貴族の間の相関図を思い出そうとして・・・記憶にありませんでした。
領地の大きさと場所を思い出そうとして・・・記憶があいまいです。

 メモがひらひらと舞い降りてきた。また神かよ。

「君たちの記憶のあまりの少なさに哀れみを覚えたので花びらを送る。

地理の知識だ。そして王子には神から見た歴史のダイジェスト版も付け加えておいた。
ちなみに2人には青い花びら、王子には赤い花びらだ。

あまり君たちに介入はしたくないのだが、影響力の大きさに、こうすることもやむなしと判断した。

          つくよみ」

 メモは光の粒子を撒き散らして花びらに変わった。
俺は赤い花びらを手に取り、2人にも口にするように告げる。
口に入れた花びらは舌の上でとけるように消えていった。


 
 目を覚ますと、窓から赤い光が見えた、もう夕方か・・・
他の2人もすでに目を覚ましているようだった。

「ジル様、ご気分はいかがですか」

「それで王子、あれはどんなお告げだったのですか」

あぁ、俺は何も説明していなかったか、教官には悪いことをしたな。

「あれは神が私たちの記憶の混乱を哀れんで、地理の知識を与えてくださったのです」

「そうなんだ・・・場所、特産物、人口・・・なんか詳しくわかる。
今なら、何も見ないで地図が描けそうだ。これはもしかして、私の元の知識よりすごい?」

「すごいと思いますよ。
この国の分は間道まで頭に入っています。
さすがにここまで詳しい地図がこの国にあるとは聞いていませんから、神に感謝ですね」

「それはよかったです。これから役に立ちそうな知識ですね」

「えぇ、でも、不本意であるが手を貸したと言われていたので、これ以上は期待しないほうが良さそうです。
なんでも我々を哀れに思われたようで」

「それは残念です。

・・・・・でもこれからは人間同士の争いになりますから、神が手を出されるものでもないのでしょう」


「人間同士の争い?」

「ええ、そうです。
始まりは今から10年ほど前に遡ります。
もっと前から始まっていたのかもしれませんが、我々が気が付いたのはその時期でした。

そのころからフィーゲル侯爵領が豊作となり、それが毎年続き、数年後には倍ほどの増収となっていったのです。
そして大量の小麦が市場に出回り、穀物の値段は暴落し、税金を納めるために西の地方は苦労しました。

もちろん侯爵領はさほど広いわけではありませんから、国全体でみれば多少安くなった程度だったのです。
それにかさばる小麦を馬車で運ぶのは労力と人手、ついでに間に挟まる領の徴収する通行税がありますので、遠くへ運べば運ぶほど、原価は上がっていきます。遠い地方にさほど影響はありませんでした。

しかし近隣の地方は違います。
税金は小麦を売って作るものです。通常は、領主に収穫の6割を収め、その中から領主が国に1/3を収めるのが税の基本となります。(オプションをつけるのは領主の自由)

小麦の暴落により、収穫の8割もしくは9割も収めないと農民が納める税の額に達しなくなりました。

飢え死にする領民が増え、それは翌年の税収に響きますから、さすがの領主たちも税を下げたり、支援をいたしました。
そして今度は領主たちの手元が不如意となり、彼らの困窮の原因だとはいえ、いままで近隣の領主として親しくしてきて、繁栄している侯爵に頼らざるおえないようになりました。

フィーゲル侯爵は食料にしろ金にしろ、快く貸してくれたそうです。

そして始まりから10年経った今では、かの地方はフィーゲル侯爵の支配下に置かれています。

あとはそうですね、石鹸を発明して、領の特産品としています。
似たような効果を持つ液体、洗浄液がありますが、汚れの落ち方が違います。持ち運びにも便利だし、保管できる期間もかなり長いので、一度使うと手放せないのですが、それもあの領以外では作れないそうで、かなりの金額を毎年稼いでいるそうです。

それから庶民の学校というものを作っているらしいとも聞いております」

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