ざまあ~が終ったその後で BY王子 (俺たちの戦いはこれからだ)

mizumori

文字の大きさ
24 / 64

24話 地道に商法を学ぶ。ちぇ、こんな異世界生活はいやだ

しおりを挟む
 翌日は屋敷に引越し、足りないものの手配と買い付け。みなが忙しそうだが、俺のやることはない。
そこで商業ギルドにいって、商法のお勉強だ。
ゴードンが当然のごとく文句を言う。

「まったく例の件さえなければ・・・同じことを2度も覚えるなど、腹立たしい以外の何者でもないですね」

「ごもっとも。
さあ、今日中に商法は覚えきるぞ。明日からは判例のチェックだ」

「・・・ジル様、私には覚え切れそうにありません」

「オリバー、君は覚えられるだけがんばってもらうということで。
ゴードン頼むぞ」

「やれやれ、敵討ちの為だと思ってがんばります」

「さすが、宰相子息、当てにしている」

 ゴードンは深く頷いた。教官に教えてもらった過去の黒歴史に心が傷つけられたのだろう。
挽回すべく、あんなのは私ではないとつぶやいて、必死になっている。がんばれ!
現代と違って量が少ないのが救いだ。

 六法全書を知っているだろうか?あの分厚くて、字の細かい本を。
でも、あれも大事だが、判例も同じぐらい大事だ。人間は知らず知らずのうちに自分に都合の良いように解釈してしまうもので、公正に法律を解釈する為には判例を読み込まなくてはならない。
そこには経験とか明文化されていない慣習とか、まあ実際に運用する為の知識が沢山詰め込まれている。
新人はそこのところが手薄なので判決で勝って、勝負に負けるという結果になることがある。判決で負けることもあるけどさ。
ベテランにはベテランになるだけのものがあるわけだ。

 そこで俺たちだ。判決にも勝負にも負けるわけにはいかない。商業活動の隙をつかれて、いちゃもんをつけられ、逆転敗訴。権利を全て持っていかれました、など許される訳がない。
この場合無知は罪だ。時間はかかるがこの街で起こった判例ぐらいは読み込んで見せよう。
ついでにこの世界の常識も身につくだろう。

 

 一週間で読み込み終えた。さすが俺。ハイスペックだ。

 そして屋敷のリビング、今度は40畳ほどあるので男13人でも問題なし。

「ジル様、私はまだ半分も読み込んでいませんが・・・」

 ゴードンがぶちぶちいっているが、俺はこの手の書類は慣れている、それにいつまでもこんなことばかりしてはいられない。

「そのうち、おいおいな、時間があれば商業ギルドにいってくるといい」

 拳を握って悔しがるゴードン。ちょっと気分が良いかも。

「さすが王子、ではそろそろ商会の立ち上げですね」

「あぁ、その前に商人の選定です。巻き込まなくては人手が足りなくてやっていられません。
それにオリーブ油はギルドがありましたよね。
いずれにせよ彼らの手を借りないわけにはいきません。」

 俺たちは頭を突き合わせて、3人の商人を選んだ。



「それでは手紙を用意してください。使者に言って、ごちらでお食事にご招待するという形で」

 そして教官が爆弾を落とした。

「ところで商業ギルドへの推薦状の件なのですが・・・」

「ええ、どなたに頼まれたのですか」

 
 ここで説明しよう。
商業ギルドは完全なる国の下部組織である。どこぞのファンタジーのように国から独立したギルドなんぞありえない。各国に渡って組織があり、独立しているのは宗教だけだ。

 大きな領には商業ギルドがあり、それ以外は領主の行政の一部として商業活動を管理している。
規模によって許可免状は違っていて、領内のみの商業活動の場合は領主の認可が必要で、手数料は金貨1枚から10枚程度らしい。これは領主の気持ち1つで決まる。

 国内で自由に商業活動をするためには、国の認可が必要でここで初めて商業ギルドがでてくる。
大規模、中規模、小規模商会と分かれていて、大金貨100枚(一億相当)、10枚(一千万相当)、1枚(百万相当)の手数料が必要だ。

 国外はまた別で、貿易規模により手数料額が違い、最大大金貨300枚(3億相当)で国外との貿易が許され、その輸出入には別口で関税が掛けられる。そのうえ、新たな品物を扱う場合はいちいち許可が必要となってくる。

 なお、戦略物資を商人が扱うことは許されていない。これは国王の許可の下に大貴族が行うことだ。が、そんな馬鹿なことは普通行わないと言っておこう。せいぜい友好の印に剣を贈るぐらいだ。

 食料品と酒、塩そして鉄器も広義の戦略物資といえば言えるのだが、戦争をしていなければ大きな影響力はない。ので国家戦略上影響を与える物資であるが、とくにそう定義はされていない。貿易自体が国家戦略といえるので国の統制下に入っていれば充分なのであろう。

 過去の仏蘭西のように<あいつが気に食わない>と言って英国にワインを売らなかった例もあるのでかなり恣意的に運用されている可能性もあることは付け加えておく。

 ご清聴、サンクス。


 そして教官が言いにくそうに続ける。

「それが王太子殿下が口ぞえされたそうで、ビンセントを会長として許可を得たのですが、国内外、戦略物資以外の取引を許可するとの許可証でした。
その上、許可を得た品物が、生活物資全般とか多数書かれており・・・まあ、なんでも取引できます。
手数料は羊皮紙代などを含めた実質の金額で金貨5枚(50万相当)使いの騎士たちは推薦状を貰うだけのつもりだったので、金を持っていなかったのですが、余裕で足りました。

 王都で手続きしたので、すでに許可証は出来ており、こちらにあります。なお、ご希望の名前を聞いていなかったので、王太子殿下が名をお付けになったそうです」

 俺は呆然としてその許可証が入っているというマジックポーチを受け取った・・・・・兄上・・・

 と、とにかくその騎士たちに金貨5枚を払おうじゃないか。
そして、幾ら早馬を使ったとはいえ、片道に馬で6日もかかるところを往復8日で戻ってきた騎士たちには感謝しなければ。

 そして、子爵位上の貴族は手数料が1/10になるとはいえ、金貨300枚をたったの5枚にした兄上の力技には驚きを通り越して言葉もない。さすが王政と言おうか。

 騎士たちにはあとで石鹸をプレゼントしよう。
兄上は・・・ありがたく<アルバトロス商会>の名を頂きます。

 あとで袋をチェックして分かったのだが、教官、あのマジックポーチには食べ物が入っていると思ってにやにやしていたでしょうが、違いますから。
いや、違くはないのだが、他のものも入っていた、知ったら笑ってばかりはいられないだろう。
さすが兄上、計画の進みがこれで早くなる。


 
 あの日から3日、俺はファンタジーの世界にいて、魔法も使えるのに、なんで前世と同じようなことをやっているのだろうと思う今日この頃、商人たちとの面談です。

 といってもただの昼食会です。
新たに商会を始めたビンセントがこの地の皆様にご挨拶です。
俺は秘書らしく末席で参加。特に紹介もされず、話は大人たちでがんばってもらおうという算段。
楽でいいね。

 この地はオリーブ油が特産で国外にも輸出しているので、国外貿易の資格を持つ人が2人、国内向けの商売のみの人が1人。
ビンセントはこれから商売を始めようとしているという設定だ。

「そうですか、お父上が子爵をなさっていると」

「はい、私は3男ですので独立しなければなりません、ぜひ皆様方先達には宜しくご指導いただきたく思います」

「それで、どのようなご商売を考えておられるので」

「はい、この地の物を子爵領に売りにいこうかと。
向こうでなら知り合いも多いので、良い物を持ち込めば買い手は付くと思っています」

 皆さん、にこやかでいらっしゃる。この若造になにを売りつけようかと考えているのかな。
がんばれビンセント、君が台本のまま話せば、お客様方は君を上得意とみなして、色々話してくれるぞ。


 お客様方が帰ったあと、ビンセントはぐったりとしている。

「お疲れ様でした。今回は助かりました」

「王子、私では力不足でとても会長は務まりません。
あの3人に家族構成から好みまですべてさらけ出されて・・・」

 うん、因幡の白兎のようにあの3人に毟られていたね。
教官、可愛い部下の不幸なのに、そんなにおもしろがっては可哀そうだと思いますよ。

「いいじゃないですか。設定した履歴のまだ半分しか話してないのですから」

「そんな、あと一回あったら私の手持ちのカードは無くなります。
せっかく王子に紙5枚分も書いていただいたのに」

「ビンセント、仕方がないじゃないか、王子の設定されたあの、むやみに前向きでついうっかり質問に返事をしてしまう・・・うんぬん。を守ろうと思ったら、ああなるだろう。
それに貴族とは違う遠慮のなさがある。
大手どころの商人だ。海千山千とはああいうのを評するのだろうな」

ビンセントは教官にすがるような目をする。

「護衛の振りなんかなさらないで、アドヴァイザーをやっていただけませんか。
この先の展開が不安です」

「大丈夫ですよ。次はオリーブ油の大量買付けのお願いになりますので。
その為3人にしたのです。結託しないといいですね」

「結託してろくでもないことをするようなら、強権をつかいます」

「それは使いたくないのですが・・・その先のこともありますので可能性は半々ですね」

しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。

アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。 それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。 するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。 それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき… 遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。 ……とまぁ、ここまでは良くある話。 僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき… 遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。 「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」 それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。 なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…? 2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。 皆様お陰です、有り難う御座います。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...