ざまあ~が終ったその後で BY王子 (俺たちの戦いはこれからだ)

mizumori

文字の大きさ
25 / 64

25話 商人にお願い

しおりを挟む
 ここにくるまでの3日で俺はビンセントに演技指導をした。こいつは有能な26歳の中隊長だ(小隊3個、30名を配下とする役職)その有能さかげんは、あとでは役に立つが、最初に出されると回りが警戒する。
それに騎士としての部分は控えめにしてもらわないとね。
お陰で商人たちの前でぎくしゃくしていたけれど、それも初々しくていいんではないか?

 他にも花を集めてエッセンシャルオイルを作った。蒸し器で花びらを蒸して、その花びらを蒸した水蒸気を蒸し器につけた管で集める。その管を水の中に通して、冷えればオイルとフローラルウォーターになる。
こう書くと簡単そうに聞こえるが、大変だった。道具の方は鍋に土魔法で細工してなんとかできた。

 しかし、しかしだな・・・花が大量にいる・・・あそこまでいるとは思わなかった。
もう、オレンジの皮で作るのでいいことにしようかな・・・

 石鹸の試作もしてみた、手持ちのオリーブ油で作ったので量は出来なかったが、悪くないできだった。一ヶ月も経てば熟成して製品になるだろう。
獣脂の方は3回の塩斥で匂いが何とか気にならなくなった。オレンジのエッセンシャルオイルを入れればまあ問題はないだろう。でもそれ以外では問題ありありなのでどうしたもんか・・・

今は10月半ば、そろそろオリーブの実が熟すころだ。商人たちと2回目の会合だ。

「それでどの線で商人たちと話をされるのですか」

「値段と品質だけです。物は中級品位でいいのですが、値づけが難しくて困っています」

「高級品はいらないのですか?」

「食べるわけではないので、そこまでは必要ありません。
商人たちの仕入値に幾ら上乗せしようかと・・・」

「私はお役に立たないと思います」

 オリバーが一抜けした。

「ゴードンは?」

「わたしもそちらの方面には疎いもので」

 教官以下騎士たちも首を横に振る。ちぇ。俺一人で考えるのかよ。

 元値は多分小売値の半額以下だろうから・・・
だいたい中間業者の彼らはオリーブ油のギルドを作っているからして値段は横並びで売っている?
それはないか・・・・見当が付かない。

「店での仕入れ値はいくらなんだろう・・・」

 俺の独り言にゴードンが答えた。

「分かりますよ、売値の7、5割だそうです」

 俺は顔を上げてゴードンをみる。何故だ?

「値段を調べていた時にですね、幾らぐらい安くなるかと思って、その店の娘に聞いてみたのです。
あっさり答えてくれたので、秘密でもないのでしょう」

 いやいや、これだから顔のいい奴は・・・そんなの秘密に決まっているだろう。

「あとは農家の売値か・・・」

 騎士の一人が声を上げる。

「私の聞いたことでよろしければ・・・」

 俺はうなずいた。

「調査で砦の近くに行ったときのことでした。
実ったオリーブが美味しそうだったので、つい見ておりましたら、農家の娘に声を掛けられました。
酒のつまみによさそうだといいましたら、昨年のものを分けてくれると。
さすがに申し訳ないので値段を聞いたら、生の実の売値を教えてくれました。
塩漬けはもう少し高いのだけれど、同じ値段で良いと言って。

それでは悪いような気がしまして、銀貨を1枚置いてきたのですが、そうしたらパンにつけるとおいしいといわれて、オリーブ油も一瓶貰いました」

 こちらは、といって騎士がポーチから瓶をだす。

「これはこのくらいの甕で銀貨3枚だそうです」

 と彼は腕をまわして、甕を抱える形にする。

「助かった、それではそのオリーブ油を味見させてもらえないか」

 おいしかった、これは上級品だな。

 しかし、持つべきものはイケメンの部下だな。ゴードンはもちろんのこと近衛騎士も容姿がすぐれていることが、暗黙の条件となっている。
知らないうちに情報収集してくるとはすばらしい!!

 これで予想が出来る。ギルドは思ったほどあこぎでもなく・・・無理やりでも決めなければ話が始まらないので・・・生産者5割、ギルド2,5割、小売業者が2,5割で想定すれば・・・多分・・・常識的に?・・・大雑把に言えば・・・合っているだろう。そして生産者が油を作るまでの人件費等々を考えると一番儲かっているのはギルドだろう。

 あとは仕入値5割と売値7,5割のどこを着地点にするかだな。
この世界の常識を一番知らない俺が考えなければならないところに理不尽さを覚える。


 話し合いの3日後から、商人との商談が始まった。
今度は個別にお願いする。
商人の前に壺を3つ並べて、味見をしてもらう。

「これは中級と中下位、後は低位ですね」

「はい、これを買い付けたいと思います。
値段はですね〇〇で期間は今年の12月半ばまで。いかがでしょうか?」

「けっこうですが、値段の方は△△で」

・・・・・・・・・

 俺は秘書ですと言う顔をして横に小机を構えて静観。ビンセントがんばれ!
壺に封をしてお互いが名前を書き込み、契約書を交わしてお終いだ。
獣脂も同時にお願いした。骨も一緒にお願いする。太いこねがあるので、いくらでもと言っておいたので、それなりの量は手に入るだろう。こちらは銀貨1枚でブタ4頭分手に入るので問題ない。

 彼が帰ったあと、ビンセントはくず折れていた。
お坊ちゃんの真似は騎士にはきつかったのかな?

 あとの2人も同じようにして契約できた。
代金は最初の一人が、支払いの確認をしてきたので、白金貨200枚が入った皮袋を見せびらかしてもらった。
これはすぐ商人の間では広まったようだ。

「父上からいただいたのです。商売を始めるのに元手がないと困りますから。
独立のためには力をお貸しくださると言われているので、心強く思っています」

「そうですか、いいお父上ですね」

 商人はにこやかに微笑んでいる。笑顔が少し堅いと思えるのは、白金貨を無造作にさらけ出した、馬鹿坊ちゃん(笑)のせいだろう。

 でも、こんなのでも(ゴメン)この世界でなら、商売は成功するのだろう。
大きなバックに守られて、とある領から別の領に物を動かすだけである程度は儲かるものだ。そして、それがスムーズに行くかいかないかがこの世界では一番の問題となる。
貴族の口出しだな。

 そこそこ大きな商人は領から領へ品物を動かす。その間にはいくつもの領があり、その一々に多大な通行税を掛けられたり、いちゃもんを付けられたりしたら原価が莫大なものになって、儲からない。
それなりに大きな貴族の御用商人の印を持っていると、それが減り、まともな商売が出来るわけである。

 品物がいいとか差別化できる利点を持っているとかの話は、貴族たちの欲望の前では吹っ飛ぶ。
貴族とは理不尽なものである。

 こうして、実際にこの世界に身を置いてみると、信長の行った、楽市楽座がどれほど零細商人に喜ばれたかを実感する。
 そして初めて王子でよかったと思った。大貴族に鼻で笑われるお飾り王族から脱出してみせるぜ、俺は!

 
 そんな訳で、子爵子息であるビンセントは、スムーズに物事を運べるその立場だけで有能と目される。幾らでも買い取ると言い放った馬鹿坊ちゃんの台詞と白金貨の力で量は確保できたと思って良いだろう。

 尚、白金貨は兄上に渡されたポーチに500枚(50億相当)入っていた。
今度は貸しだぞというメモが入っていたが、兄上ってば、俺に甘いんだから。

 おかげで最初から大きな商売ができる。この地方のオリーブ油の生産量の小売値総額は俺の計算では約白金貨一千枚、100億円相当だ(これも兄上に密かに頼んで同じくメモに記してあった、いくつかの税金徴収額の数値から試算した)
そして小売の仕入値は75億相当。多分中級品が大部分を占めるが、固定客も多いので、こちらに回ってくるのは、多くて3割。多分それを切るぐらいだろう。だから、こちらが手に入れられるのは最大で20億強相当の品物。ビンセントに値段の落ち着きどころを高めに指示しておいたので、それなりに集まることだろう。

 しかし、白金貨500枚を見た教官の顔は見ものだった。口をぱかりと開けて固まっていたので、悪いが笑ってしまった。



しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。

アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。 それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。 するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。 それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき… 遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。 ……とまぁ、ここまでは良くある話。 僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき… 遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。 「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」 それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。 なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…? 2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。 皆様お陰です、有り難う御座います。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...