ざまあ~が終ったその後で BY王子 (俺たちの戦いはこれからだ)

mizumori

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26話 たきぎが高いこの世界

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 ここでは10月の半ば過ぎから11月までに家畜の解体をして、冬支度をする。
何が言いたいかというと、短い期間に、獣脂と骨が荷車でそれはもう、いやって程来るのだ。
もちろんオリーブ油も運び込まれた。搾りたてを要求したために、時期が重なったのにはまいった。

 屋敷の前庭には200人ぐらいの人がいて、ひたすら藁でできたたわしで骨をこすってくっ付いているくず肉等を取り、洗ったあとに一箇所に積み上げていく。残りの数十人は運び込まれた獣脂のごみを取り、水をさっと流し、これまた一箇所に積んでいく。

 ここまではいい、誰に見せても問題ない。そこからは騎士たちが荷車で獣脂を裏庭に運び込む。骨は?オリーブ油は?時間を見計らって、庭に積まれた骨と屋敷中におかれたオリーブ油は俺のブレスレットに仕舞いこまれる。
場所がないのでとりあえずの処置だ。ブレスレットの秘密を守る余裕なんぞどこにもない。

 運びこまれた獣脂は大鍋で炊くと、油とかすになる。そこに精製水(俺が水から不純物を取り除いて作った)と塩をいれかき回して、その後置いておくと油とごみの沈んだ水に分かれる。これを塩斥(えんせき)という。
その後、油をとかして精製水と塩をいれてを2回やると、なんとか匂いがあまりしないものが出来る。
大変だった、だから獣脂を使うのはいやだったんだよ。

 一ヵ月半これにかかりきりだった。かき集めただけでは足りず、鍛冶屋にいって、錆びた剣や槍の穂先、鉄くずを買い受け、土魔法で大鍋をいくつも作った。入れ物として、魚屋さんで使っている青いプラスチックコンテナ、あれと同じものも山のように作った。材料?人のあまりいない場所からいただいてきました。そのうち池になるかも・・・

 そして一番大事なことは、薪が高いということだ。指摘されるまで気にしなかったのだが、荒地の多いこの世界では、例えこの地が豊かであろうとも、そんな無駄遣いはできない。大体そこまでの量が集まらない。
俺は現代の日本に毒されているよな。そして初めて分かった、フィーゲル領の石鹸は何故匂いがするのかと。塩斥なんぞという薪をたくさん使う作業はそう何度も出来ないことを。

 そこで俺だ。ただの火が使える。無尽蔵の魔力?を持つ俺は最初は10個、段々増えて最後には30個のかまどで火を調節しながら炊けるようになっていた。だから、がんばった。この作業をいつまでもやりたくないので、その日の分はその日のうちにと言い張って、夜中までもがんばらせた。俺も一緒にいたからブラックだとは言わせん。
ただ臭い石鹸は俺的に許せなかったので、塩斥3回を曲げなかった結果、こうなっただけだ。

 12月の始め、商人たちへの支払いも終え、俺は再び会議を開いた。
フィーゲルの石鹸、俺の作った獣脂の石鹸、それのオレンジ香料入り、オリーブ油の石鹸、その香料入り、全て並べる。最初の試作品は固まって製品になっていた。

「意見が欲しいので、とりあえず感想を述べるように」

彼らはさわったり、匂いをかいだりして較べている。

「この獣脂の石鹸は殆どにおいませんね」

「オレンジの香りがするのは、オリーブ油の石鹸とさほど変わらないような」

「値段があまり変わらないのなら、こちらの香り付きの石鹸のほうが・・・」

「こちらはまた可愛い・・」

「これは花ですか?」

 概ね思っていた通りの意見が出てきた。

「やはり、香料入りの獣脂の石鹸とオリーブ油の石鹸はあまり変わらないか・・・」

「値段が大きく違えば、こちらの獣脂の石鹸を選びます」

「そうだよなー、やっぱりか・・・
これは、使えないな」

「えっ、どうしてですか?いい石鹸ではないですか」

「うん、だから使えないんだ」

 きょとんとしているオリバーは置いておいて、次に進もう。

「こちらのオリーブ油の石鹸はどう思う?」

「可愛らしくて、いいのでは」

「女性に好まれそうな・・・」

「男性にはどうかな」

「特には・・・」

「なにかまずいんですか?」

 そうだった、この世界の男は花が似合うと言われて、嬉しくと思っても恥ずかしいとは思わなかったんだ・・・遠い目。

 オリバーがバラの匂いが似合うと言われて恥ずかしがったのは、自分に似合うのが優雅なバラではなく、カラーとかユリだと思っていたからに過ぎない。
ではこちらにも藍と紅花に似た染料があるので、それで薄水色とピンクでオレンジの花を浮き彫りにした石鹸を作ろう。

「値段はどうするかな?」

騎士たちがざわざわしている。

「この香料入りの獣脂の石鹸は幾らぐらいで売られるんですか」

「もしよろしかったら、私も求めたいと思います」

 そうか、騎士たちは体を動かす職業だし、石鹸はしょっちゅう使うか・・・
あの作業の間は特に使ったかも・・・裏庭にはいまだ獣脂の匂いが染み付いている。

 俺はオレンジの香りのする獣脂の棒石鹸(石鹸5個が横に繋がった形のもの)をポーチから出した。
皆に1本づつ、ビンセントとお使いをしてくれた騎士たちと情報を寄せてくれたゴードンと騎士にはもう1本。教官にも余分に渡した。トップは苦労しているものな。そして金貨も1枚づつ渡し、この3日のうちにローテーションで休みを取るように告げた。

 ほっとして解散を告げると、教官が俺のことを見ている。
え”っ、教官にも渡すの?まあ、公と私は会計が違うのだろうと思い、大金貨1枚を渡した。
あぁ、受け取るのね・・・・・教官は父上の部下だと思っていたけど、俺の部下でもあるのか?

 翌日は、連絡を入れておいた商人たちの倉庫へGO!いまだ石鹸商品化の過程は終らない。いい加減嫌気がさしてきた。
大きな倉庫に積まれたオレンジを受け取る。ついでに、にかわも。これらはそれなりの値段だ。次々と5つの倉庫を周る。しかし皮を取ったあとの中身はどうしよう。この量を俺にどないせいというんだ?
そしてもっと頭の痛いことに、オレンジのエッセンシャルオイルを作ると、100倍のオレンジ水が出来てくる。うっすらとオレンジの香りのする、飲んでも美容にもいい水だが、使いどころが分からない。現代だったら幾らでも売る場所は探せただろう。先ほどのオレンジの中身にしても、ジュースの会社に売れば済むことだ。不便すぎて言葉もない・・・・・ブレスレットの収容量が異様に多くてよかったよ。

 オレンジは今度も前回の人たちに来てもらって、ひたすら皮をむいてもらう。
そして、廃墟になった砦のひとつを借り受け、そこの岩も使って、倉庫をいくつも作った。ここで石鹸を出来上がるまで保管する。
 
 異様な量の材料に頭が沸騰してくる。
やっちゃるで。魔法も使い放題だ。

 オリーブ油はピンク2青1の割合で花型の石鹸となった。型は土魔法で作り、出来上がったら型を砂に崩す。すると砂の中から花形の石鹸が現れるという段取りだ。もったいない?言わば言え。型から石鹸をはずす方法が分からない。現実の工程はこのように困難きわまるものだ。魔法ばんざい!
石鹸はあの寒村で伐採した木とにかわで簡単な箱を作り、伐採した木で作った紙でつつんで入れる。
魔法をがんがん使った。でも、箱の組み立てと包装は人手をかき集めるほかはなかったので、3人の商人に話を通し、信頼できる人を200人以上集めた。まっ、前回頼んだ人間だったんだけどな。
あの、ロボットアームが懐かしいぜ。

 オリーブ油は大量にありすぎたので1/10を、獣脂はすべてを石鹸に変えた。
少しだけオレンジの香料入りもある、この忙しい中、騎士のために石鹸のストックを作った俺は上司の鏡ではないだろうか。


******************

石鹸作り、書くのも大変だった。次話の最後にやっと側近が・・・
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