ざまあ~が終ったその後で BY王子 (俺たちの戦いはこれからだ)

mizumori

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28話 女神の痕跡 1

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 えっと、どうしようかな、薬珠を飲む前から泣かれて・・・
とりあえずは俺の部屋だな。オリバーとゴードンを見やる、逃げるなよ。
付き添いの騎士と共に皆で俺の部屋に入る。騎士がヤルデルトをソファーに座らせようとしたが、手を振ってティーテーブルの椅子に座らせる。
ソファーではテーブルが低いから、寝たときに転げ落ちるだろう。

 そしてオリバーが酒を3本持ってくる、つまみなし、カップは銅。落ちたときに散らばったり、割れたりするのは困るものな。これも3回目、だんだん手馴れてきた。

 付き添いの騎士が俺に頭を下げて話し出す。

「8日ほど前でした、彼がふらりとニルベの街に現れました。
王子はどちらに?と聞くだけで何もしゃべらず、急いているようすだったので、こちらにつれてまいりました。

ご指示があったのでこちらに連れては来たのですが、何も分からない状態です。こちらの説明は以上です。・・・申し訳ありません」

「ありがとう、充分だよ」

 うなずくと彼は去っていった。
さて、まずは話をしよう。ここにあるのは例のティーテーブルだ。テーブルが丸いので斜め横という、心理学上、話を聞きやすいベストポジションに座れる。

「ぼろぼろになってまで戻ってきてくれて、嬉しいよ」

「でも・・・でも私は・・」

 ヤルデルトは首を横に振る。

「それでも、わたしの元に戻ってくれた、それでいいだろう」
 
 続けると、彼はうなずいた。
何のかんのと言って十代の小僧だ。可愛らしいものだ・・・・・俺?俺は精神的には29歳の立派な大人だ。大事な部下をフォローするのにいなやはない。

「あの時・・・最後に・・・」

 ヤルデルトはものすごくいいにくそうだ。

「あの・・・私は・・・」

 くちびるを舐めて、下を向く彼は俺たちと目を合わせようともしない。

「私たちには大変なことが起こりました。いまここに、こうして一緒にいることは奇跡だと思います。
私はジル様のもとで再び人生を送りたいと思うほどには復活しました。
我々は仲間ではありませんか。どんな貴方でも受け止めるつもりです。
苦労したのでしょう、そしてここまでたどり着いた。
ここが貴方の居場所です。もう安心です。ジル様は貴方のことも再び側近として仕えさせて下さいます。
我々の主は心の広い方だと思います。でも心配させたのだけは事実なのですから、起こったことはすべてお話して、判断を仰ぎなさい。きっといい解決策をお話くださると思います」

 ゴードンのやつ、とてもいいことを言っているように聞こえるが、こいつはただ、待つのに飽きただけだ。
そして、俺に仕えるつもりがあるのなら、いままでの経過をさっさと話せといっている。うん、要約は大事だね。

 オリバーも付け加えた。

「私もあの後ジル様を追いかけたのです。
私の心を解し、落ち着かせ、護衛騎士の立場を与えてくださったのは、ジル様でした。
いままでのことをお話しするのは辛い時もありましたが、いまは話してよかったと思っています。
このように静かな心持で過ごせるのは主とともにいるからだとも思っています。
せっかくここまで来たのです、勇気を出してください」

 へえ~、オリバーも言う時は言うのね。これなら騎士団長とやらになってもやっていけるだろう。


ヤルデルトはきっと、顔を上げた。

「あの最後の時に・・・断罪した侯爵令嬢を見たのです。
きっと薄ら笑いを浮かべていると思っていたのが、寂しそうに笑っていて・・・
ジルベスター様をあれほど慕っていたのです。あのようなことをしても、まだ好きだったのだと知れて・・・」

 いやいや、それは台本の侯爵令嬢で本物は鼻も引っ掛けない態度だったんだよ・・・合掌

「エリオンと私だけがそれを見たようなのです。
2人共追い出されるようにして、王宮を出た後、お互いに目を見て・・・何を思っているかがわかりました。
そして王都の屋敷で荷物をまとめると、取るものもとりあえず、待ち合わせ場所にまいりました。

宿をとって侯爵令嬢の様子を伺おうとしたのですが、すぐに侯爵領に戻るのを知って、私たちも追いかけました。こういうことはエリオンの方が目端が利くので、彼の言うとおり、冒険者の服を買い、染め粉で髪を染めて追いかけたのです。

そんなこんなでフィーゲル領で冒険者の真似事をしながら、たまに見かける彼女に幸せを感じていました」

 自分のやっていたことがまずいとわかっているのだろう、最初はおずおずと話していたヤルゲルトの目がだんだんと・・・きらきら?してくる。

「彼女には驚かされました。
あの領は作物の生育がとてもよく、それは令嬢が考え付いた方法を取っているからだそうです。

もちろん領主の娘とはいえ最初から農民たちが信じたわけではありません。
それに幼い子供の言うことです。でも、彼女は諦めず、まずは領主の畑の片隅で試し、その結果を持って皆を説得したそうです。そして少しづつその農法を試す人が増えてきて、今では農民はすべてこの農法を使っているそうです。

農家の人はノーフォーク農業とか呼んでいましたが、幼ない彼女がひたすら領民のためにつくす姿に感動を覚えました。それに、幼くして農法を発見した彼女は天才なのでしょう。そのように農民のために尽くされる方をいままでじゃけんにして、申し訳なく思います。

ただ、余所者の私たちは残念ながら、畑のそばに行くことは警戒されて出来ませんでした。ですが朝市にきている農家の娘たちが口々にその名前を言ってすばらしいのだと語ってくれたのです。(イケメンのみに許される技、ほんとは余所者に言っちゃいけないんだよ)

それとこれは内緒だがといって、牛馬の出産の時にとある手当てをすることがあると教えてくれました。
いままでは、出産は神の御業なので、何もしてはいけないといわれていたそうですが、農業の成功で令嬢の話を聞く人が増え、今では手当てをするのが当然となっているそうです。

 それに学校が4つの街に1つづつできていました。貴族は家庭教師に教わるのですが、庶民の中で子供を通わせる余裕のあるものは、学校に子供を行かせています。人々につくす彼女はまるで女神のようです」

「人数は?」

突然ゴードンが口を出した。
特に不審に思うこともなくヤルゲルトは答える。

「そうですね、大体5,60名で、毎日通えない子もいるのですが、そういう子も何日かに一回は学校に行き、2,3年で文字の読み書きと足し算引き算ができるようになるそうです。
お昼がでるので、それ目当てに通う子もいます。
令嬢は時々学校に行って子供たちに勉強を教えているそうです。姿を見かけたことがあります」

「石鹸は?」

「そちらは厳重な警戒が敷かれているらしく、領の奥地から運び出されてくるので、そちらで作っているのだろうとしか。余所者は立ち入り禁止の場所なので」

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