ざまあ~が終ったその後で BY王子 (俺たちの戦いはこれからだ)

mizumori

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32話 石鹸市場のパイを食べる 

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 宿を取った俺たちは作戦会議だ。
といってもこの近辺の領地の内情を聞くことから始めなければならない。

 そして教官が分厚い本を5冊も出してきた。

「これは一冊大金貨1枚もする高価なものです。
無駄になさらないでくださいね」

 おい、ゴードン、親の敵みたいに睨むなよ。貴族年鑑・・・俺も睨みたいのはやまやまだけどさ。

「殿下は勘がするどくていらっしゃる。
何故このようなものをこれ程と思いましたが、必要になるのを分かっておられたのですね。
質問はこの内容以外で受け付けます。がんばって覚えてください」

 ちぇ、スパルタだな。訳が分からないエリオンとヤルゲルトがあたふたとしている。
でも俺の部下には必要なスキルだ、何も考えずに飲み込んで覚えてくれ。

 とりあえず今日はここ人口10万人のサリド伯爵の領の話を聞く。
アルバトロス商会として明後日の昼に商業ギルドで主な商会と会談だ。
ビンセントに指示を出せる程度には飲み込んでおかなければ、せっかくギルド長に話をつけて(贈り物で)早くに開かせたかいがない。

 翌日の午前中はビンセントと打ち合わせだ。
そして午後からは一人の商人と会った。騎士の一人の伯父さんであるコネリーさんだ。
世間話をしながら、彼には石鹸のお披露目をした。そして色々なことを教えてもらった。
まず、ここでの商人の仕入値は銀貨3枚(俺たちの石鹸と同じ量である時)、相手が侯爵御用達の商人なので値段はほぼ向こうの言い値であること。なので、特に商談というほどのことはなく、いつも軽い世間話で終るそうだ。
商人の売値は銀貨4枚で、それを小売は銀貨5枚で売る。いつもそうであるそうだ。

 そして一番大事な仕入れ量だが、7千本だと分かった。

 ここでは俺の作った棒石鹸、500グラム、日本の石鹸5個分を1単位としている。
実際にフィーゲル領から仕入れているのはサイコロ型の石鹸で分量は10個分ほどらしい。
いちいち切り分けて、秤で計って売買するのが異世界らしいとはいえるが、面倒極まりないとも思う。
俺のは切る場所に棒を押し付けたようにへこませて印をつけている。

 コネリーさんに石鹸を見せると、扱いやすいし、匂いがほとんどしないと喜んでいた。
そこで仕入値を銀貨2枚半、そして裏にいる大物の存在を匂わせると、最終的にこちらについてくれることになった。後2,3人仲間を募ることもお願いした。
裏に大物がいて、扱う品がたかが石鹸だと、それ程抵抗はないようだ。
たかが石鹸、されど石鹸ではあるが、貴族に逆らってまでどうこうしようとする物ではないものな。

 俺はこねの便利さに万歳した。現代ではここまでうまくいかない、さすが王政、よかったぜ。
調子に乗った俺は兄上に手紙を書いた。このあたり出身の近衛騎士たちを呼び寄せる為だ。
たった8人の近衛騎士ではすべての領をカバーできない。とりあえず、この近辺出身の騎士は呼び寄せなくては。
マジックポーチに高級石鹸と棒石鹸を一杯詰め、手紙を持った騎士2人が早馬で去っていく。うまくすれば5日ほどで戻ってくるだろう。
そして兄上なら高級石鹸をうまく使ってくれるだろう。

 
 翌日の昼、商業ギルド、ここはサリド伯爵の領都で、大手の商人はここに店を構えている。
今回は12人の商人が集まっている。
ビンセントはギルド長と並んで座り、お互いの横には補佐がいる。
俺もビンセントの後ろに秘書でございと控えている。

 ご挨拶のあと、早速教官が石鹸を皆の前に配り始める。あちこちで感嘆の声がきこえる。うんうん、そうだろうとも。
ここでコネリーさんが有能であるのがわかった。ギルド長を抱き込んでいたのだ。

「今年はこちらの石鹸を扱ってはどうかね」

 皆にお勧めするギルド長。ビンセントも付け加える。

「お買い付けいただいた方には初めてということで、お渡ししたいものも沢山ございます」

 そして手元に来るオレンジ香料入りの石鹸3本セットの木箱。驚きに皆感歎の声を上げる。

「これはあの高級石鹸と変わらないような!」

「これはいいですな」

 味方であろう商人たちが、こちらについた方が今後に繋がるだろうと煽ってくれる。
すかさずビンセントが言う。

「そちらはお持ちください。他にもございますが、まずはお買い付けの相談をさせていただきたく思います」

 俺がドアの外に合図をすると、料理と酒がどんどん持ち込まれていく。
待っている間は、ここで宴会をやっていてね。

 とりあえず、どんどん商談をしていく。ギルド長が味方なので、昨年度の買い付け量はお見通しだ。
代金はギルドの預金から、手形は?と思ったが必要なかった。俺に抜かりはない、このときのために石鹸10本、紙包み入りの木箱が出来ている。契約書を頂いたら、騎士をお供に一度石鹸を持って店へお帰りいただく。もちろん、お供の人でも可。渋る人にはちょっぴり強権も使おうと思っていたのだが、それもなく終った。

 なぜなら、フィーゲル領の商人は態度が大きかったからだ。
先行者利益とばかりに傲慢で、接待を強要していたらしい。唯一の品を売っていれば往々にしてそうなるのかもしれない。

 店に品物を渡しに行った時に、初回サービス、買い付けたものの1/4の数を上乗せで渡したので、戻ってきた時は皆にこにことしていた。ただ、契約内容を漏らすほどご機嫌でなくてほっとした。

 コネリーさんと愉快な仲間たちにはオレンジ香料入りの石鹸の箱ををいくつか余分に渡しておいた。きっとこの地の貴族に売るのだろう。そちらには売り値の指示を出していないので、儲かると良いな。

 こうして俺は無事に昨年度の買い付け量プラス1/4を彼らに押し付けることに成功したのである。
これで今年はサリド伯爵領にこれ以上の石鹸は売れまい。ハハハハハ。

 
 このあとは忙しかった。2,3日に一箇所、馬で駆け巡った。荷物を持たずに動けるのは助かる。
フィーゲル領を中心とした空白地帯を残し北西部の大きなところはほぼ回った。
すべての領を俺と商人たちで回るのには手が足りないので、規模の大きな商人には多めに品物を押し付けて、早い者勝ちですよとささやくこともした。
フィーゲルの石鹸を買ったら、幾ら安くとも、次に買うのは来年になるだろう。その前に先回り。商人は拙速を尊ぶのさ。


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