ざまあ~が終ったその後で BY王子 (俺たちの戦いはこれからだ)

mizumori

文字の大きさ
34 / 64

34話 兄上もパイをくれる、食べられる時に食べよう

しおりを挟む
   石鹸の販売は、冬に作って、夏前までに売る。それがセオリーらしい。
3,4月と駆け回り、5月の初めから王都にいる俺は店を作ることばかりしていたわけではない。
兄上紹介の3人の信用が置けるらしい商人とも面談した。タフそうな人たちだった。彼らの一人からは屋敷も紹介してもらえたわけだ。

 でも彼らに期待しているのはそれではない。国際商人と言える彼らには石鹸を大量に引き受けてもらいたい。
お話し合いの末、銀貨2枚で引き受けてもらえた。ただし、こちらは小売値の指示はしていない。国外で売るのにそんな無理難題は言えない、でも彼らの売値は税抜き銀貨3枚ときっちり言い置いた。こちらは実現可能だものな。

 彼らは目を輝かせて、大量の石鹸を引き受けてくれた。
俺は今の状態で堂々と国外に行くのははばかられるので、引き受けてくれてうれしい。
過去の納税額からみた石鹸輸出量が正しいのか?疑問なので、ここでも数をどうしようか悩んだ。
マジックポーチを使うとかなり誤魔化せると思うんだよね。

 昨年の申請数量を越える数を引き受ける気満々の彼らに慌てて、俺はマルコリアさんを王都に呼んだ。
マルコリアさんたちは、すっ飛んできた。その後の彼らの話し合いは熾烈を極めたと言っていい。
暫定住み分け予定の配分を終えた5月の初旬終わりに、彼らは昨年の倍以上の数の石鹸を持って、意気揚々と出かけていった。
幾ら1/5は試供品と言う名のサービス品でも、少し多くないか?
でも俺に出来ることはもうない。あとは君たちに任せた。国の繁栄は君たちの肩にかかっている。


 そして俺が渡した高級石鹸だが、母上がお茶会で紹介してくれて、今は徐々に広まっているところだ。王党派の貴族のみの間で。そして母上の指示でビンセントが若き新進の商会長として、王都の各貴族の屋敷に伺うのだが、大抵の貴族はビンセントの顔を知っている。
相手はこれはビンセントのお遊びか、誰かの指示によるものだと思っているので、丁寧に商人ではなく貴族として扱われるのだが、いたずら好きの子供のように言われるものだから、ビンセントは辟易として、誰か代わってくれないものだろうかとぐちぐちと言うようになってきた。

  
 王都に戻ったのを機にオリバー、ヤルデルトとエリオンは婚約者を口説いている。
といっても10日ほども通い、やっと会わせて貰えたそうだ。
地道に心をほぐすしかないんだろう。前は仲良くしていたと聞いているので、それだけが頼りだ。

 令嬢たちに関してはそれでいい。でも男親はそうはいかない。また心変わりでもされたら堪らない等、思うこともあろう。伯爵が2家と子爵が1家、それぞれに影響力の大きい家だ。
それで貴族仕様の店が出来た時にそちらに呼び寄せた。

 そう、ほぼすべてを話したんだ。男同士の話として、バラの名の下に秘密を誓わせて。
俺たちの急激な変化を見て、半信半疑まで信じてくれたのは?幸いだった。
いまのところは、ここまでにしておこう、急ぎすぎては駄目だ。



 さて、王都に居ついているので俺の護衛騎士は元の8人に戻った。店の護衛?裏に従騎士宿舎を建てているので彼らに見回りを頼んでいる。将来的にも彼らがいるので店を襲う馬鹿は居まい・・・あそこを見つけたのはラッキーだった。

 力を貸してくれた騎士たちは役目を終えると石鹸をお礼に受け取り戻って行った。
30人程の騎士に一人100本入りの棒石鹸の木箱を渡し、試供品なのでなるべく多くの騎士たちに使ってもらうようお願いした。試供品って言葉は便利だね。これで彼らは他の騎士たちに石鹸をばらまくだろう。
銀貨4枚を渡すのはまずいが、棒石鹸なら上司や同僚に渡すのは消耗品でもあるし、いい気づかいになることだろう。
あとは各騎士に騎士割引と称して、いやいや日ごろ忠誠心を持って勤めてくれるお礼にだな、銀貨3枚でアルバトロス商会から特別販売をすることになっているのも伝えた。

 フハハハハ、これで騎士1,500人の石鹸の販路は俺が押さえたぜ。・・・あっ、フォローの為の商人を決めなくては。王都の店にこれる人ばかりではないものな。

 なんだかどんどん前世の生活に近づいていくのは気のせいではないだろう。
そして書類がどんどん溜まっていく。きちんと損益計算書なんぞ作る暇はないので、メモ書きと簡単なまとめですませているが・・・・・溜まっていく書類の量に怖じけがする。誰かに経理を仕込まなくては・・・



 そして兄上がやってくれた。
国軍の兵士には年に6個の石鹸が支給されることになっているのだが、ここに兄上が強引にアルバトロス商会を押し込んだ。
王太子は軍総帥である、そして王の補佐、つまり宰相だな、これに似た役目も持っている。しかし実際に2つの役目を果せると思う人は誰もいないだろう。最終決定権は持つが、普段の実務は将軍とか宰相がこなしている。
だが、法の上ではその上に王太子が立つ。だからこの程度の生活用品なら、無理が利く。王太子でなくとも伯爵とか子爵でも、そこそこ力があり、うまくやれば通せるとは思う。

 しかし困った。アルバトロス商会は実質ビンセント一人、会長一人と店員のみの商会だ。
まるで、どこぞの詐欺師が作った形だけの商会のようだ。まあ、そうなんだけどさ。
だから動こうにも人手がいない。足りないんじゃなくて居ないと言うところが、何ともいえない。
今回は騎士が使えない、なぜなら国軍と騎士団は仲が悪いからだ。昔からそうなっている。

 俺はうなって、考えた。今度は誰を巻き込もう。
俺の少ない人脈ではあの人たちしか居ない。
そう、例の伯爵2人と子爵1人の3人組である。あぁ、こういう時のための婚約なんだよな。まだ時期が早いがいたしかたない。

 再び貴族仕様の店にご招待。
幸いなことに伯爵の一人が軍部のコネを持っていた。もう一人の伯爵と子爵も知り合いは何人かいるらしい。
今回は石鹸を渡すために面会をするだけなので、それほど強いこねはいらない。ただ会うだけなら、知らない人間でもいける。でも不信感をつのらせるのも不味いだろう。アルバトロス商会の知り合いで頼まれたとして試供品を配ってもらう。役席一千人、下は小隊長から上は将軍まで、全ての人に配らなければならない。
もちろん側近4家も巻き込んだ。もうばればれのような気がするが、準備をする時間がないので仕方がない。暗殺者対策に護衛騎士を増やしてもらおうかな。

 用意した品は棒石鹸3本入りから100本入りまでのいくつかの種類の木箱。計1万本を試供品として配らせまくった。なんでそんなことをと思う人もいるだろう。
たしかに、王太子の肝いりで、かつ品質が良く値段が安ければ話は通るだろう。俺のところは銀貨3枚で売るし。でも個人の不満が押さえられるとは思わない。軍部に石鹸を採用させる為に金品をある程度の役職には配ったはずだ。その人たちの不満が解消するとは思わないが、多少は宥めておかなくてはいけないのではないかな。
なんにしろ、これで6万個、棒石鹸にして1万2千本と洗濯用に6千本計1万8千本が売れた。

 そして驚くなかれ、フィーゲル領の御用商人は軍に1個銀貨1枚で石鹸を売っていたのだ。アルバトロス仕様で銀貨5枚だな。
これは俺が思った以上に付け届けをしているようだ。兄上のことだ、きっとここにも調べは入れているだろう。これで軍部は大金貨360枚(3億6千万相当)の金が浮いたわけだから、そうそう正面切っては文句も言えまいが、反王党派の温床になっている可能性もあるので、今後も注意が必要だ。

 しかし、フィーゲル侯爵は軍部にどこまで手を伸ばしているのだろう、まいるよな・・・武力衝突は勘弁して欲しいところだ。

しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。

アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。 それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。 するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。 それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき… 遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。 ……とまぁ、ここまでは良くある話。 僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき… 遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。 「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」 それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。 なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…? 2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。 皆様お陰です、有り難う御座います。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...