ざまあ~が終ったその後で BY王子 (俺たちの戦いはこれからだ)

mizumori

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35話 紅茶とバラの日々 1

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 そうだ、教えておこう。例の件があって、俺の側近たちは家族に会ったわけだが、オリバーとゴードンは弟妹に殴られた。ゴードンは頬に平手で、オリバーは腹パンで。そして2人に泣かれた。抱きつかれなくてよかったな?
ヤルゲルトとエリオンは父親に殴られた。なんだか、あいつらの家族は凶暴だな。

 兄上はきっと、そんなことはしない。


 セバスチャンは初めて会った日から毎日俺の元へ通ってくる。店の建設が終ってもだ。
そして俺が欲しいといったバラの花びらを種類別に分けて、気を利かせたのか他の名前は知らない花も持ってくる。季節もいいし、バラはさすが王宮と言うべきか20キロ以上、他の花は(ごめん、花びらになった花の名前を区別できるほど俺は物知りではない)30キロはあるのではないかと思う。
王宮はこの国で一番バラ園が多くあるので、さもありなんと思うが、毎日花がらをとって花壇を整備している王宮庭師から、この量だから・・・多分すべての花がらを集めてくるセバスチャンの手腕は素晴らしいの一言につきる。
俺もさ、オレンジばかりでは不味いとは思っていたんだよね、思ってはいたけれど、あの花摘みの作業を思うと、ちょっと腰が引ける。だから香水は高いんだと納得のいく作業だったよ。でもここでエッセンシャルオイルを買うと幾らかかるか・・・考えたくもない。だからセバスチャンの心遣いは嬉しく思っている。

 そういうわけで彼は毎日来るついでにお茶も入れてくれる。悪いけれどゴードンよりおいしい。さすがのセバスチャンだ。
この時間は今や俺の癒しとなっている。

 そこにビンセントがやって来た。

「ジルベスター様、そろそろ王妃様への贈り物はお決まりになりましたでしょうか」

 実は母上が紹介してくれた貴族の高級石鹸買い付け額はなんと2,000個、大金貨100枚(1億円相当)になっているのだ。そろそろお礼をしなければまずいだろう。それをこの間相談されていたのだ。
もちろん王宮で使う石鹸もアルバトロス製に切り替わっている。俺の献上品だ。これで王室御用達はこちらの物だ。

「いい物を見せてあげます」

 俺が取り出したのは卵だ、それも卵の形をした石鹸がリボンで飾った小さな籠に薄緑の布を敷いた上に2つ、ちょこんと乗っている。

「可愛いでしょう」

 籠は幾つもあり、絵を描いてある卵もあれば、リボンで飾った卵もある。ビンセントも手にとって見る。

「とても上手に描かれているのもあれば・・・これは何の絵ですか」

「それはゴードンが描いた猫です」

 ちょっと猫に見えないけれど、こういうのは上手な人ばかりでは駄目なんだ。色々いるから楽しい。

「お茶会の話題を提供するつもりです。皆で絵を描いて遊ぶのは楽しそうでしょう。
春の芽生えの季節と卵は合うし」

「もう5月も終りますが・・・」

「・・・今年は仕方がないです。来年はもう少し早い時期に始められるでしょう。
棚に飾っておけば、ほのかにオレンジの香りがして、悪くないものだと思いますが」

「えぇ、確かに。こちらの皆様で作られたのをお贈りするのですか」

「いえ、何も描いていないものも、ピンクと水色で100組用意しました。
皆様が気にいって下さるといいのですが」

 そして俺は遠い目をした。君たちは覚えているだろうか。兄上のせいでマルコリアが張り切ってあの地方のオリーブ油の生産量の半分を集めたことを。さすがにそちらは全部石鹸にしていないが、あの値段で売りつくすのにいったい何十年かかるのか、俺が生きているうちに売り切れるのか、気が遠くなりそうだ。はっきり言って、不良在庫である。ちまちまとでもこうして消費させなければ。

 そしてビンセントが何か言いたげにしている。

「あの、アルバトロスの会長はいつまで続ければいいのですか。
もう護衛に戻りたいのですが」

 俺はにっこりと笑った。

「兄上から期間は5年だと(うそ)聞いていませんでしたか」

「・・・護衛でと聞いていますが・・・3年で・・・伺う先々で似合わないといわれるのです。
いい加減本来の職に戻りたいのですが・・・」

 珍しくセバスチャンが口をだした。ビンセントを気の毒に思ったのだろうか?

「私がお話しても宜しいでしょうか、ジルベスター様」

「かまわないよ、言ってあげて」

「はい、それでは申し上げます。
いつもビンセント様は花束を持って、お相手のところへお行きになります。
あれは貴族の訪問の仕方だと思われます。それで商人だとは先様にも見えないので、何をなさっているのだろうと、不思議がられているのでは」

 あれは経費節約のためにセバスチャンに頼んで、顧客訪問の予定数だけ俺の宮の花を使って、花束を作ってもらっているのだ。タダって素晴らしだろう。

 では代わりに何を持って行けばいいのだろう?困った俺たちはセバスチャンの顔を見た。

「私も商人の方たちのことはよくは知りませんが、花束でないのは分かります」

 そんなこと言われても・・・前世では社交とビジネスは分かれていたし、相手の会社に持っていくのは、案件の書類だろう。・・・・・まあ悩んでも仕方がない。

「ビンセント、気にしない方がいいと思います。
初めての客への一通りの挨拶が終れば、彼らは店の方に注文をだしますから。
あと少しのしんぼうです。それと代わりの人間を推薦してくれるならば、交代は考慮いたします」 

 にっこり笑ってみせる。日本で使っていた<考慮いたします>要するに考えることだけはするけれど、拒否しますという意味も含む言葉は、この世界では通用するのだろうか?どちらにしろビンセント、君は5年でも10年でも会長をやってくれたまえ。俺は有能な人材を逃すほどアホではない。そうだな、結婚したらどこかに屋敷をプレゼントしよう。君には常々感謝しているのだから。

 7月も半ばになり、損益計算書もB/Lも作った。いくつかの項目をなんにするのかには悩んだが、俺的には満足だ。だってきちんと経理が出来ていないと気持ち悪いだろう。
そして、その前に続々と商人たちが国外から帰り、石鹸の収支を〆ることができた。

 例の卵の石鹸は貴族令嬢のお遊びとしてひと時流行り、今は納まっている。季節ものにしたほうが息が長そうだ。そして母上ありがとう。最終的に卵を含め高級石鹸は6千個、大金貨240枚の売り上げとなった。
秋からは解禁して国外の貴族にも売り出す予定だ。

 獣脂の石鹸は70万本売れ、代金は白金貨1400枚(140億相当)そこから国内分だけ税金1割を引き、白金貨1300枚を得た。兄上に借りた白金貨を返すのは差障りがあるので、それは大口出資として処理し、原料代人件費を引いた1240枚の半分の白金貨620枚(62億相当)を兄上に届けさせ、俺の元には同じだけの金貨が残った。
高級石鹸の方は投資が白金貨400枚(40億相当)で税引き後に残ったのが白金貨21,6枚(2億1千6百万相当)完璧な赤字だ。これは俺の見込み違いのせいだな。とりあえず、この分は保留にしておこう。

 そして150万本も作った獣脂石鹸は売却70万本、初回のサービスで20万本、計90万本がなくなり、今手元には60万本しかない。・・・・・今年も獣脂石鹸を作るのは確定だ。


 あとはフィーゲル領は俺の試算だと60万本の石鹸を作っているはずなんだが、実際の届出は50万本となっていた、すごいごまかしだな。
御用商人が銀貨4枚で売っているので彼らは1本銀貨3枚が取り分とみて、手取りは白金貨1650枚(165億相当)×5年+αが最大だ。最初からそこまで大量に作っていなかっただろうから、税の支払いを参照して、2割ごまかしているから、約白金貨10万枚(1千億相当)の利益をこの7,8年間で得ていたと推測できる。頭が痛くなるような金額だ。実際の数字は分からないが、どれだけばら撒いて、どれだけ手元に残っているんだろう。しかしフィーゲル侯爵が大きい顔をするわけだ。これだけ金を溜め込んでいたら、そうなるだろう。

 毎年の石鹸の収入が一般的な侯爵領の収益に近い。しかも普通は可処分所得はぐっと減るというのに全部使えるんだぜ。

 今年はまだ1/10しか売れなくても、多分16億は儲かっている。侯爵領の産業だから、薪とか要らないし、人件費がどうなっているんだか分からないけれど、時期が冬で、農業に手を取られない。賦役という形にすればタダだ。ぼろ儲けだな。


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