ざまあ~が終ったその後で BY王子 (俺たちの戦いはこれからだ)

mizumori

文字の大きさ
52 / 64

44話 今夜も夜会へGO 1 

しおりを挟む
 年が明け、ビンセントがいよいよ観念した。
俺のプレゼントした屋敷を受け取り、アルバトロス商会の会長職を極める気になったようだ。
余談だが、何度も断るので、すこしづつ大きな屋敷に変えていった。これ以上大きな屋敷になったら堪らないと思ったのだろう、3つ目の屋敷でくず折れた。今の屋敷は近衛騎士の中隊長が維持するのには多少の無理がいるのでぎりぎりの決断かな。本人は騎士団の副隊長を狙っていたようなのだが、伯爵位の連中も何人かいるので諦めた方がいいと思う。アルバトロス商会の会長をやっていれば維持するのも楽勝の屋敷なので気にすることはない。それに会長をやっていれば男爵位ぐらい簡単に手に入るぞ。我が商会は立ち上げてから大して時間も経っていないのに納税額は商会の中ではNo.1だ。
結婚式に出席したのだが、近衛騎士たちは屋敷をうらやましがっていたし、親族も喜んでいた。とくに嫁さんが嬉しそうだったので、いい選択だったと思う。紙の上だけでも騎士を兼任させているのは俺の情けだ。

 下級のくすぶっている官吏も引き抜いて商会の人間を20人も増やした。兄上の推薦だ。兄上ありがとう。

 今は4月、今年は早めに社交界に戻ってきたのだが、雰囲気が悪い。
兄上とお茶会をしたときに聞いてみたら、兄上は苦笑いをして、

「第3王子の女遊びが激しすぎて、フィーゲル侯爵令嬢がおかんむりだそうです。
あとは・・・フィーゲルの嫡男がフロイデンベルグ公爵令嬢とべったりしています。コンラーディ侯爵と令嬢がどう動くのか注目の的です」

 一口お茶を飲んで兄上が続ける。

「それとフィーゲル侯爵ですね。ほら、ジルが石鹸を売っているでしょう」

 うんうん、と俺はうなずく。今年も大変だった。

「もう、4年になるのかな・・・幾らお金を持っていても、どんどん減っていくのはプレッシャーに感じるものです。特に第3王子とその母親のマデリーンが宝石を買いあさっていますから」

「そうでした。母上に差し上げたものより質のよいものは市場には出していないのですが、ブリリアント(宝石店の名前だ、一目瞭然でいい名前だろう)をしょっちゅう呼びつけては買い求めているそうです。第3王子も女性とともに来店して・・・常連ですね、御二方は」

 俺はしばし考え、よしと拳を握る。

「兄上ご覧になってください」

 蓋を開いた箱にはハート型のミックスカットの石から鎖が2本垂れ、そこについた石がきらきらしているイヤリングと、唐草模様の鎖が絡みその先にハート型のペンダントトップがついているネックレスがあった。同じ仕様の髪飾りもある。

 俺はさりげなく兄上にも平べったい箱を差し出し、蓋を開ける。布張りのその箱には色違いでピンクのイヤリングとネックレスそして髪飾りが入っている。

 兄上はそれを見て目を見開かれた。

「これはすごいですね、ジル。随分といい石を使っています」

「はい、昨年買い付けた原石のなかに幸いにもいい物がありました。
兄上がパパラチア・サファイア、私がルビー、母上がコーンフラワーカラーのサファイアです。かの姫に贈られてはと思い用意いたしました」

「ありがとう、ジル。喜んで受け取らせてもらうよ」

 兄上がほっこりと笑う。この顔を見せてもらえただけで、用意したかいがあるというものだ。

「それでですね、母上にハート型は少々差障りがあるかなと・・・若向きですし・・・」

 兄上にめっ、された。いやだな、俺はもう大人なんだぜ。

「これは青だからかまわないでしょう。母上には内緒にしてあげるから、もうそんなことを言ってはだめですよ」

 それに・・・と兄上は続ける。

「ハート型にカットしてある分、高そうです。3つセットなので前の宝飾品が使えないのもいいですね」

 これでまた、あいつ等から金を搾り取ろう。
兄上がにっこり笑う。俺も笑い返す。世はこともなしだ。


 夜会に出ても本当に公爵令嬢は俺に近寄ってこない。アントニオが張り付いていて、令嬢は時々俺の方を縋るようにみているが・・・

「久しぶりですね、フロイデンベルグ嬢、可愛らしいペンダントをつけていらっしゃる、お似合いですよ」

 アントニオ・フィーゲルがいまいましそうに俺を見る。

「これは私が贈ったものだ。もうエルフリーデは私のものだ」

 令嬢は困った顔をしている。

「何を言っている婚約者でもないくせに」

 第3王子が参戦してきた。

 それを言う2人共、婚約者持ちなんだが、ここは黙っておこう。
前ほど令嬢は俺に積極的ではない。かなりの贈り物を受け取って、身動きが取れなくなったのだろうか?
ここからは程ほどにしておいたほうがいいかな。第3王子マコーニックも前ほどの勢いはない。彼はフィーゲル侯爵からかなりの援助を受けているので、婚約の破棄は不可能だ。それに彼女を恋人にするのはアントニオがいる状態では無理かも。

 そしてコンラーディ侯爵と令嬢の顔色が冴えない。あれだけ盛大にいちゃいちゃされては面目丸つぶれだろう。

 俺は母上とその取り巻き、側近たちの嫁と姉妹の胸に輝くハート型のペンダントを見てご機嫌だ。皆似合っている、いい感じだ。
ドレスも胸元を少し開けて、上半身はすっきりしたデザインを出してもらった。ペンダントが目立たないと困るからね。
 それにしても、こう毎年流行が変わるとついていくのも大変そうだ。仕掛けた俺が言うことではないけどさ。

 そして次の侯爵家の夜会では若い女性は小ぶりのハート型ペンダントをしている子が多かった。ご婦人は赤とか青とか緑、紫の濃い色で同じくらいの数の人が身につけている。あまり年齢は関係ないのね。了解しました。
それにしても早いな、まだ5日しかたっていない、いや店の売り上げは聞いているけれどさ。聞きしに勝るというか。ハート型は女性に人気があるんだな。ハートが2つとか3つとかバリエーションを増やそう。

 例の公爵令嬢も赤い大振りのペンダントを身につけていた。あれはセットで白金貨10枚(1億相当)だぞ、すごいな。いよいよ決まりか?

 その中でコンラーディー嬢が昨年と変わらないドレス姿なのが目立った。あそこは財政は苦しくなかったはずなんだけれど・・・?

 そんなこんなで一ヶ月、お茶会で兄上に告げられた。

「ジル、フィーゲルの嫡男とコンラーディの令嬢が婚約を解消したいと届出がありましたので、受けておきました」

兄上がにっこり笑う。

「ここで動かないと逃します。決めているのなら教えてください」

 どうしようかな、不実なようだけれど候補は3人いる。その中で財務大臣補佐の彼が一番味方にしたい男だ。そして貴族としては誠実なタイプに見える。望ましい相手だ。それに・・・あの時間は心地よかった。

 俺はこっくりと頷いた。

「お願いします。それで侯爵邸に一度伺いたいのですが」

「もう先触れは出しています。今からいけばちょうどいいでしょう」

 俺はぽかんと口を開けてしまった。俺でさえ決めていなかったことを何故知っている。
兄上は神なのか?いやいや、それはないけどさ・・・

「なにを驚いているのですか、私がジルの兄になってもう20年以上たちます。
このぐらいは分かって当然です」

 そ、そうか当然なのか。

「めだたない馬車を用意しておきました。今は知られない方がいいでしょう。セバスチャンにすべて準備させましたので、安心していってらっしゃい」

 俺は兄上に追い立てられるようにして部屋を出た。部屋の外にはセバスチャンが控えていて、目立たぬように馬車まで案内してくれた。紋章なしの頑丈そうな馬車に乗ると、彼は書類を渡してくれた。

「お読みになって、侯爵に会われたらサインを貰ってください。こちらで密かに届けておきます」

 これは婚約届けと・・・婚姻届!!

「落ち着かれてください。侯爵を納得させるには手っ取り早い方法だと思われます。遅かれ早かれ結婚はなさるのですから。
それから、そこに記載されているように結婚式を挙げるまでは白い結婚なので紳士でいてください、ジルベスターさま」

 
 
しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。

アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。 それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。 するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。 それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき… 遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。 ……とまぁ、ここまでは良くある話。 僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき… 遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。 「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」 それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。 なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…? 2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。 皆様お陰です、有り難う御座います。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...