ざまあ~が終ったその後で BY王子 (俺たちの戦いはこれからだ)

mizumori

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46話 今夜も夜会へGO 3 

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 俺は幸せだけれども、今現在において不幸である。出来立てほやほやの婚約者に会えないなんて。緊急避難のために領地に帰ることを勧めたのは俺だけれど、面白くない。俺の理性が命じたことだけれど面白くない。

 それで公爵令嬢を構って、第3王子やアントニオ・フィーゲルが俺にいらいらした顔をするのを見て、溜飲を下げている。これも計画通りなので、実行しなくてはいけないのだ。悪いね、君たち。
あぁ、段々と心がすさんでくる。

「というわけなのです、兄上。お茶の時間を一緒に過ごさせていただくのが私の唯一の癒しです」

 俺はぶちぶちと兄上にこぼす。

「私の可愛いジルがぐれてしまうといけないので、それでは動きましょうか。その方が君の希望にも適うと思います。暴発の危険はないと思いますが、それにしても彼らはどうして動きが鈍いのでしょうね」

 この1年で彼らのことは、かなり調べがついている。お金も湯水のごとく使ったが、一番効いたのは新天地を用意することだった。下層の人間は裏の仕事を引き受ける者も多いが、ほとんどはまともな仕事があれば、そのような危険なその日暮らしをしたいとは思わないものだ。貴族に仕える者も主人のやっていることの危うさに危惧を覚えるものがいないわけではない。彼らの将来の生活を保障をすることで、こちらの味方として働いてもらうことが出来た。彼らには仕事が終ったら、例の寒村、家族はすでに移住させている村で漁師ときこりをやって、かつ開拓をしてもらう予定だ。フィーゲル派閥でこちらに寝返った使用人たちもいずれそこの管理人として赴任する。

 第3王子の派閥にはフィーゲル侯爵を筆頭として、第4王子、第5王子も関係している。第5王子の関与の方が大きい。不吉なので言葉にはしたくないのだが、彼らは兄上の死をもってして、狼煙をあげるのだろう。その暗殺手段が地味すぎて、いらいらする。もっと派手なのを考え付かないのかよ。衆目にわかるようなやつを。例えば、路上での襲撃とかさ。陰の暗殺者なんぞが幾ら増えても、さすがに王子は断罪できないじゃないか。

 内通者たちに唆させているのだが、慎重すぎてだめだ。あれだけあおったのに、陰の暗殺者だけってなんでだよ。


  それからしばらくして、兄上は遠乗りに行って落馬した。馬丁が馬の耳にアブを入れて、暗殺を狙ったと公式発表された。

 俺はすっ飛んで行った。
ドアの前の近衛騎士を押しのけてドアをバア~ン、と開ける。
中に入ったら・・・兄上はソファーで書類を読んでいた。

「あ、兄上・・・」

 俺は兄上の前まで歩くと、へたり込んだ。兄上は黙って頭をなでてくれた。
俺は気を取り直すと兄上の身体をぺたぺた触り、異常がないことを確かめた。全く・・・考えておくと言われたのが、こんなに危ないことだったとは。馬がどう動くかは計算できないから、これはかなり危険な方法なんだぞ・・・文句を言えないのが悔しい。わかってんだよ、だけれどさ、実際にそうなると心臓に悪い。

 そのときの馬丁は第3王子の間者であることが確認されていたので、兄上が嵌めたのだろうけれど、いまは大事に牢屋に入れられている。言葉が変だろうか。でも普通にしているとあっという間に殺されてしまうので用心しているだけだ。
こんなにわかりやすくて、立証しやすいのはいいね。でも囮の兄上が安全で派手で分かりやすい方法は他にはないんだろうか。


 そして落馬から10日がたった日に本物の事件が起きた。 

 俺がいつものようにお茶会に行くと、兄上の部屋の前に近衛騎士が大勢いて、ものものしい雰囲気で警戒している。兄上に何かあった?そんな話は内通者から聞いていないぞ。

 俺は彼らの間をすり抜けると、ドアに突進した。

「あの、いまは・・・」

構わず、ドアについている近衛に怒鳴る。

「ジルベスターが命ずる。開けろ!!」

 びくっくとした彼らは、黙って俺を通した。中にも大勢近衛騎士が詰め掛けていた。ざっとみても兄上がいなさそうなので寝室のドアに向かった。

 今度は大人しくドアを開けてくれて、中では兄上が寝室のベッドの上で積んだ枕に寄りかかっていた。

「どこを怪我されたのですか?」

 俺はあせって尋ねた。

「わき腹を掠っただけですよ。ジルの呉れたお守りのおかげで、ナイフがそれて、わき腹を掠っただけですんだのです」

 兄上の出してきたお守りは表面がかなり凹み、そこからナイフの掠った後が付いていた。

 「DEAREST」この言葉を知っているだろうか。単純に親愛を表す言葉だけれども、これは宝石業界ではメッセージジュエリーのひとつだ。

 ダイアモンド、エメラルド、アメジスト、ルビー、エメラルド、サファイア、ターコイズと並べたネックレスとかを作って気持ちを伝える。「REGARD」もいいと思う。

 それで兄上の名前はウルフガング、男らしいだろう、6文字なので名前ごとに石を変えて俺の気持ちも内緒で込めてみたわけだ。女性ではないので板に埋め込んだ。ブックマークにでもしてくれたらと思っていたのだが、まさかポケットに入れて持ち歩いてくださるとは思わなかった。

 24金にしなくてよかった、丈夫さをメインに18金まで落としてある。勝った、何に対してだかわからないけれど、俺の勝利だ!


 俺は今度は医師に詰め寄って、治療の経過を聞き出した。これじゃあ、だめだ。
手を石鹸で洗うと、俺はラベンダー水を取り出す、これは精製水に近いので一番安全だろう。兄上の服を脱がせると、包帯を解き、塗ってある油を俺が持っている清潔な包帯でふき取る。そこにたらいを下において、じゃばじゃばとラベンダー水をかけて雑菌を流した。ラベンダーはハーブの中では有名だし、傷にかけるのはかまわないだろう、製油の方の効能は知らないので使うのは止めた。心もとないがそれだけにして、清潔な包帯をまだ出血している10センチほどの傷口にあて、その上から包帯を腹にぐるぐる巻いて固定した。

 兄上は面白がっていたが、医師は険しい顔をしていた。
時間がない俺は、「毎日、私が傷を見ます」と宣言して、医師には高級石鹸を一山与え(彼は獣脂石鹸に偏見を持っている、理由は臭いから)治療の前に石鹸で手を洗うことを言いつけた。後でじっくり話し合いだ。

 兄上が人払いをしてくれた。やっと聞きたいことが聞ける。

「ベアトリーチェに刺されたのです」

「はい?」

「ソファーに寝転がっているところをナイフでぶすりと」

「護衛はどうしたのですか」

「いました。・・・・・殺気がなかったのです」

「殺気が・・・」

「えぇ、それで誰も気が付かず、彼女の行動を許してしまいました。
しばらく、うつろな目をしていたのですが、今は正気を取り戻しました、ですが・・・泣いてばかりで」

 兄上は困ったもんだという様子だが・・・こちらこそ困る。

「どうなさるおつもりですか」

 直球で聞いてみた。

「彼女が何も知らないのは確かだと思います。誰かに操られたのでしょう。そのような方法があったとは知りませんでしたが。
そうですね、これだけ大勢の前で起こったことです、なかったことには出来ません。
今までの情もあり、哀れだとは思うのですが」

 兄上は助けたいのだろうな、でもそれは王太子としてやってはいけないことだ。
どうしようか・・・・・・・・・。

 
 必死で考えた。もう決着をつけよう。2回も王太子暗殺未遂が起きたんだ、充分ではないだろうか。(1つはやらせだが、兄上と俺しか知らないので問題なし)


「兄上、これで決着をつけませんか。いいシナリオがあります。

これが、こうで、ああして、こうして。いかがですか」

「分かりました、君を頼りにしています」

「お任せください、兄上。ベアトリーチェ子爵婦人の分も報復いたしますので、これで決着をつけましょう」


 俺は寝室から出て、彼女が閉じ込められている小部屋の前に立つ。ため息がでるが、仕方がない。
中に入り、騎士たちを追い出すと彼女に向き合った。

 彼女は黙ってうつむいている。

 「貴女は・・・」

  なんて言えばいいんだ。可哀そうだが彼女の将来は決まっている。

 「貴女は今でも兄上に心を寄せていますか」

  うつむいたまま、頷く彼女は顔を上げると、

 「・・・覚えていないのです・・・本当に・・・」

  誰も信じないことが分かっていて、それでも言わねばというように話す彼女。

 「お慕いしているのです・・・今でも、あの方が・・・あの」

  そして、俯く。どうしたもんかな。

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