ざまあ~が終ったその後で BY王子 (俺たちの戦いはこれからだ)

mizumori

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47話 今夜も夜会へGO 4

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 どうやれば、彼女の罪悪感を減らして無事にここを抜け出させられるだろうか。自分を責めずに、前向きに過ごせるようになるだろうか。彼女に自殺などという言葉を考えさせたくない。

 そこで、俺は彼女にちょっとしたお話をすることにした。今回の件は全容が雲の中だが、それを言っても彼女の不安をあおるだけだ。知らない不安より知っている不安の方がましだ。さて俺の作ったお話を聞いてもらおう。

「貴女がブリリアントにいかれた時のことです。貴女にジュースを持ってきた女性を覚えていますか?」

 「いえ、わたくし、あそこでは紅茶しかいただいていません」

  彼女は不思議そうな顔をしている。事実そんなことは起こっていない。

 「いいえ、貴女の侍女が呼ばれて、貴女が独りになったほんの短い時間にそれは起こりました。
あとで彼女が間者だとしれて・・・そうですね、少しばかり強引に聞き出したのです」

  拷問をしたと思ったのか、身体が揺れている。

 「その時は貴女を伝手にして王宮へ入り込もうとした、としかいわなかったのです・・・
 その後兄上に貴女が新しい侍女を強請ることもなかったので様子を見ていたのですが」

  俺はため息をつく。

 「まさか催眠術をかけられていたとは思いませんでした」

 「催眠・・・ですか?」

 「闇の者の技術です。薬を飲ませて無防備にしたあとに命令をすると、それに従うのです。
 簡単な命令しか出来ないので、それほど恐れることはないと思ったのですが・・・」

  彼女は顔面蒼白になっている。

 「貴女のように光の中を歩いている方には縁のない話です」

 「光の中?愛妾をしている私が?」

  嗤い出しそうな彼女に言う。

 「王族の手は血にまみれています。生きるためには必要なことです。
でも兄上はそのような話をして貴女を汚したくなかったのでしょう。

 貴女は何も知らずに暮らしていました。でも貴女にも暗殺者の4,5人はいたはずです(これは本当の話だ)」

  愕然とした彼女は涙を零す。俺は彼女の前に跪き、その手を取る。

 「兄上のためにご尽力いただけませんか。あなたの力が必要なのです」

 「はい、わたくしのできることでしたら」

  俺はうなずく。

 「シナリオはこうです。貴女は婚約をした兄上に嫉妬して、つい夜会でフィーゲル侯爵と親しい婦人の話を聞いてしまう。最初は用心していたのだが、慰めてくれる茶髪茶色の目の彼女となんども話をしているうちに仲良くなり、自室に招くことになった。一緒にお茶を飲んでいるうちに頭がぼーっとして気が付いたら殿下を刺していた。よく覚えていない。

 簡単でしょう。これが彼女の姿です」

  俺は紙をだして女性の姿を書く、うん、最後から2番目と3番目のの女友達の姿を混ぜたのででいいかな。
 悪いとは思うけれど、ここは異世界だし、具体的に思い浮かべないと、姿絵が描けないんだよ。

 「これが貴女に薬を盛った女性です」

  彼女はじっと絵姿を見ている。そして、ためらいがちに話し出す。

 「あの、わたくしが申し上げて他の方々が納得してくださるでしょうか?」

  俺は首を横に振る。

 「今は貴女がそう証言したとするだけです。貴女が証言するのは遠い未来の話です。王族に起こった事はたとえ10年、20年たとうと蒸し返されることがあるものです。我々兄弟が貴女をお守りするつもりですが、その手をすり抜けて貴女の元にたどり着くものもいるでしょう。それが貴女の回りが退けられない力を持った人間だったときには、この真実を述べていただきたいのです」

 俺は続けた。

「これから政争が起きます」

 彼女も気づいていたのだろう、不安そうな顔をする。

「私たちは有利な立場にいます。今回は問題なく勝てます。私が心配しているのは将来のことなのです。兄上が王になり、状況が不安定になったときに、兄上の足を引っ張るために今回の件を蒸し返そうとする輩がでてくるかもしれません。兄上のされたことは間違いだったのだと」

「そんな・・・わたくしは覚えていませんが、王子の言われたとおり操られていたのでしょう。だって、わたくしはあの方をとても大切に思っていますもの」

「それを兄上は疑ってもいません。ただ貴女を心配しています。ですから貴女には兄上の願いどおりに心安らかに過ごして欲しいのです。そして将来、兄上の立場が侵されそうになったときには、今回の事件はフィーゲル侯爵が起こしたことで間違いない、兄上は正しかったのだと証言していただきたいのです」

 彼女はうなずいた。

「あの方がそのようなお立場になるとは想像もつきませんが、そのときには必ず証言いたします」

「えぇ、その時には、頼りにさせてもらいます。王宮に絶対ということはないのですから」

そして瞳に光が戻ってきた彼女の前にオープンハートのネックレスを差し出した。

「これは兄上の気持ちです。ささやかな物ですが、これからいくところにはちょうどいいでしょう」

 「まあ、きれい!」

  嬉しそうでよかった。鎖も長くしてあるので服の上からも見えない。

 「さあ、行きましょう。あなたを狙っているのは王太子の信奉者だけではありません。フィーゲル侯爵の手のものも貴女に余計なことを言わせないように命を狙ってきます。

それに可哀そうだとは思いますが、ここにいたら貴女は処刑されるでしょう。どんな理由があろうとも王太子に手を上げたのです。

 修道院で静かに暮らしてくだされば、私も兄上も安心します。修道院長には貴女は周りの人間に嵌められたのだと伝えておきますので、同情してくれるはずです」

  俺はセバスチャンの手引きでそっと彼女を修道院に連れ出した。
 院長には大金貨50枚と美しい宝石箱を渡してお願いした。

  兄上がずっと側においていた女性なのに・・・こんなことになって残念だ。
 年上の綺麗なお姉さん・・・俺も欲しかったな。・・・いやいや今はいらないけどさ。



  兄上はベッドの上で俺を迎えてくれた。

 「かくかく、しかじかで全て終りました」

 「そうか、だったらいい。父上に報告して、動けるようになったら決行する」

 「はい、承知いたしました」

  兄上は寂しそうだ。早く結婚できるといいね。


  そして2週間がたった。兄上の回復を祝う夜会の始まりだ。子爵以上の貴族はほとんど出席している、取りこぼしはなさそうだ。
とりこぼしてもかまわないようにしてあるけれどね。

  王と王太子だけで王妃の姿が見えないことに、皆が不思議そうな顔をしている。
 兄上が片手を大きく振り上げる。合図だ。

  俺はすでに会場入りして、第3王子の後ろにいた。
 第3王子相手だと近衛が怯むかもしれないので俺の出番だ。壁際に控えていた俺の近衛騎士20人が駆けつけ、その手で王子と側近はあっという間に縛り上げられた。教官強い。

  関係者は縛られて、ホールの真ん中に集められている。これから王太子殿下の演説だ。俺はそれを横目でみながら駆け出す。フィーゲル侯爵邸へGOだ。

  王都のフィーゲル邸には近衛騎士50人がついてきた。門番を縛り上げると、俺は土魔法で門を塀に変えた。これで逃げるのが難しくなる。
 客室が20もある大邸宅だ、時間は掛かったが、内通していた従僕2名も協力してくれて、屋敷の者全員を捕縛した。

  最初はまずは執務室に行く。部屋に入って、机の引き出し、棚、紙と名のつくものは全部マジックポーチにいれた。

 「隠し部屋、収納、隠し通路そして使用人通路を調べて、隠されているものがないか調べて欲しい]

 「時間がない。どんどんいくぞ!」

  教官はやる気に満ちている。部屋にライトの魔法で煌々とした灯を作り、調べては次の部屋に向かう、これの繰り返した。全部終った時には夜が明けていた。屋敷が大きすぎるだろ。

  しかし、これで全ての書類が俺の手に入った。このマジックポーチを兄上に渡せば証拠は万全に揃えられるだろう、残留する近衛騎士に託しておこう。ここには騎士5名+従者12名を残して、俺たちはフィーゲル領に向かった。後は任せた。王都の他のフィーゲルのアジトは兄上の手のものが押さえているだろう。

  そのあと2日半でフィーゲル領に急行した!

  フィーゲル邸と石鹸の倉庫を制圧。領政を司っていた300名の官吏と一族250名ほどは捕縛。私兵千名を集めて、演説。本当は私兵は250名が許される数だというのに集めたもんだ。(少ないと思われるだろうが他に騎士団を領主は持っている)
 彼らはフィーゲル侯爵が第3王子を旗頭に、何か企てていることは分かっていたのだろう、大部分がこちらについた。なに、君たちの仕事は変わらない。領内の巡回だ。

  各町村への通達を3日で済ませた俺は疲労こんばいしていた、だって400近くあるんだ、人口25万人は伊達ではない。

  ここからどうしよう?そろそろ小麦の収穫時期だ。一度戻らなければならないし・・・
途中から従士たちも合流したので(彼らの移動は徒歩です)騎士たち40名+従士100名を臨時の文官に仕立てた。彼らは素養もあるし、きっと任務を遂行してくれる。俺は彼らに簡単な指示を出して、王都に向かった。捕縛した人たち?余裕がないので一箇所にまとめて閉じ込めてある、今は時間がないので現状維持だ、悪いな。


  王都に帰るとほぼ後始末は終っていた。フィーゲル侯爵一族は処刑され、側室マデリーンと第3王子、第4王子、第5王子は北の塔に蟄居となっていた。第4王子第5王子の母親である側室たちは実家の領地で蟄居。2つの実家の領地は半分王領として召し上げられた。
ついでに貴族家も大小20程が財産没収の上取り潰しになった。
  
  あとは父上と3人で相談して、俺が持ち帰った金貨、思ったより少なくて600億相当しかなかったが、この内半分を騎士たち1,500人、一人頭白金貨1枚(一千万相当)と国軍1万人、こちらは各人違うが全部で白金貨1500枚(150億相当)に報奨金として与えた。
  
  フィーゲル領は王領とし、とりあえず俺が治めることになった。後始末の続きをしなくては。時間が掛かるのが分かりきっているのでうんざりだ。兵士の千人ぐらいは借りないとにっちもさっちもいきそうにない・・・

 貴族たちは不満があるものもいたようだったが、ことが反逆罪だったので、表面上はおとなしくしている。

  こうしてフィーゲル侯爵の案件は一応の納まりを見せた。

  兄上は王宮の貴族の力を削ぎ、王の力を強められた。
 俺は危険物であるフィーゲル領を封じ込めることができた。あれは混ぜると危険!なものだ。

  俺たち兄弟に平和な日々がやってきた。でも暇になったわけではない、より忙しくてめんどう事が増えたのは・・・政治に関わる以上致し方ないことだ。
  
  転移してからばたばたしたが、これでやっと俺も異世界で落ち着いて過ごせそうだ。 


***********************

 薄々分かっていらっしゃる方もいるでしょうが、これは直系王族のフライングです。
首謀者を捕縛、動きが取れないところで証拠を述べたて、断罪。クーデターでは良くある手法です。

 今回両派閥が動く為には大儀名文が必要でした。王族が関係する大きな政変です。

 そこで、第3王子側は王太子の暗殺、その後に次期王太子に相応しいとの名乗り。そして王太子側は表立って行われる王太子暗殺未遂その後に犯人の捕縛をお互いに虎視眈々と狙っていました。サラエボ事件(オーストラリア=ハンガリー帝国の皇帝・国王の継承者夫妻暗殺事件)で第一次世界大戦が起きたように、王太子の暗殺は大事件です。これで政局が動きます。

 王太子側は機会を上手くつかみ(作り上げ?)実行に移しました。第3王子側は不穏な情勢を分かっていましたが、王太子が生きているので動けませんでした。常に現政権側が有利なのは自明の理です。

 それに第2王子、本来なら断罪事件の後はいなくなるはずの彼が帰り咲いたことで、侯爵側は困難が増えました。でも反逆の計画を途中で止めることなど出来ません。ですから彼らは困難を乗り越えてでも前に進みました。どれだけの暗殺者が送られたことでしょうか。

 フィーゲル侯爵は王宮で捕縛された時点で勝負に負けていたのですが、その後に王太子が示したフィーゲル侯爵の準備していたアジトと武器、下手人多数が決定的な証拠となり、噂を聞いていた貴族たちを納得させました。そして彼らは王太子に頭を垂れました。王家は確信犯です。

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