ざまあ~が終ったその後で BY王子 (俺たちの戦いはこれからだ)

mizumori

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49話 さようなら悪役令嬢 2

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「その話はもういいです。それより、貴女は本来なら処刑されてもおかしくなかったんですよ。君の一族はすでに全員そうなっています」

 「わ、わかっているわよ、でも何故よ、私から色々と知りたかったから生かしておいたのではないの?」

 「私が口添えしたからですよ、元婚約者だしね」

  さあ、一応説明してあげよう。

 「さて、貴女に政治的センスがないのはもうわかったでしょう。
貴女のやったことは餓死する人間を増やしただけだし、貴女の父親も石鹸作りを教えなければ、それほど余裕ももてなかっただろうから、王家に逆らうようなこともしなかったと思いますよ」

 「でも、私は良い事だと思っていたのよ、皆あの父親が悪いのよ」

 「人の所為にするのは感心しないですね。貴女は力がないのに、身の丈以上のことをしようとして、失敗したんですよ」

 「でも、でも・・・」

  彼女は悔しそうに、顔をゆがめた。

 「では質問を変えましょう。貴女の言う、その世界には飢え死にする人はいなかったのですか」

 「・・・それは・・・いたけど」

 「じゃあ、何故助けなかったのですか」

  俺は畳み掛けた。

 「だって無理だもん。私はただの女子高生だし・・・」

 「たったの一人も?」

 「うん、無理。ちょっとだけ寄付するぐらいしか出来ない」

 「その女子高生は庶民ですよね。そしてここでは貴女は侯爵令嬢です。そして知識もあります、だから助けられると思いましたか」

  彼女はうなずいた。

 「でもね、貴女が思うよりここでは女性に力がないのです。貴女は知識を取り上げられ、利用されるだけに終りました。
そういうことですよね」

  うつむいた彼女はわかっているようだ。

 「それでは貴女の持つ知識を誰にも言わないというのなら、選択肢をあげましょう」

  不信感も露に彼女は俺を見る。

 「えっ、言わないことが条件なの!」

 「えぇ、貴女がよけいなことをしなくとも、この世界は勝手に発展していきます。ボルダ領で石鹸を発明した人がいたようにね。自然にまかせるのが一番です。突出した知識や行動はこの世界に混乱を巻き起こします。貴女が経験したとおりにね」

  彼女はうなずいた。よしよし。そして、彼女の乙女ゲームのあらすじを聞いて思いついた。あの男爵令嬢も関係者か?ここは2人一緒にしたほうが、ガス抜きにもなっていいかもしれない。

 「実は自分のことをヒロインとか言う男爵令嬢がいます。彼女も修道院に入っているのですけれど、彼女と一緒に、畑の隅に建てられたログハウスで暮らすのは考えられませんか。そして彼女とログハウスにいるときは何を話しても構いません。どうですか?」

 「でも・・・もし、気が合わなかったら・・・」

 「彼女に興味があるのですね。なんだか彼女と貴女は似た雰囲気を持っているような気がします。ですから一緒にすごすのも悪くないと思ったのですが。
もし彼女と気が合わなかったら、シスターたちと暮らせばいいでしょう。その場合は貴方の知識を人に話してはいけませんよ。火種になるようなことですし、それが貴女を害することもあります。もう貴女を守ってくれる父君はいなのです。

それに、その手の話は直ぐ噂になるものです。女性同士のここだけの話は当てにならないのは貴方も知っていますよね」

  彼女はこくこくとうなずく。

 「では、このナイフに誓いなさい。約束をやぶったら、このナイフが貴女の胸にささります」


  ようやく修道院につき、あの美人の院長に会う。
 侯爵令嬢をお願いして、彼女がシスターと共に去ると、オリバーから花束を受け取った。
そして前と同じ大金貨3枚の袋以外に 俺の渾身の作、ハート型のエメラルドが埋められた水晶の玉と花束を渡した。女性はハート型の宝石が好きだと最近学んだので、この間の宝石箱に入れてもらおう。
  
 「貴女にはいつもご迷惑をおかけします。私の作ったささやかな贈り物です。お受け取りください」

  院長はにっこり笑って受け取ってくれた。
そして俺の3度目の修道院訪問は終った。

  俺は馬車に乗る前に修道院を眺める。ここに来ると感傷的になってしまう。
  
  セリーヌ、君には同情しているんだ。侯爵令嬢に転生したことをね。それともテンプレとやらをやって、たとえ街娘でもお偉いさんに目を付けられたかな?

  そして君は貴族なんだよ。何故貴族制度をこわす原因を作るかな。市民が知識と力を持って台頭してきて、フランス革命が起きたと言う話は高校の授業で習わなかったのかな。庶民に字を教えるのは止めて欲しかった。これでも俺は王族の端くれだからね。

  この未熟な世界に君の知識、ノーフォーク農法や石鹸の事ではないよ、君の考え方だよ、それを持ち込んで欲しくなかった。俺が推測するにきっと君はそれを周りの人間に話して、彼らの意識を変えていったと思うから。

  フィーゲル領は甘い毒水が滴り落ちて、広がりつつある状態だと思う。それは綺麗な水にインクを落としたようで、2度と元には戻れない。地球の歴史がそれを証明しているからね。それは貴族制度に疑問を抱かせ、暴力と血を呼ぶ。もっと成熟した世界で、商人が台頭し、議会ができるという手順を踏まないと、貴族の反撃があって再度の王政の復活もありうることだ。それに未熟な人間が上に立つことで国内が荒れ、革命を望んだ庶民が王政がよかったと思うかもしれない。そのようにしてどれだけ血が流されるのだろう。

   幸いなことにフィーゲル領は閉ざされている、このまま少しずつ変えていけば時間はかかるがなんとかなるだろう。この後始末も俺の仕事になっている。他の貴族では金のなる木だとして、ろくでもないことをしそうだ。

  そして、セリーヌ、君は知っているかな、うさぎは馬鹿だとよく言われているけれど、本当は臆病で賢いんだよ。
 君はたぶん高校では勉強ができて、正義感も強かったんだろう。でも着飾ってお喋りばかりしていると君が思っているだろう貴族女性の賢さをわかってほしかった。きっと、この世界で長生きするのに必要なのはそういう賢さだったのだから。

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