ざまあ~が終ったその後で BY王子 (俺たちの戦いはこれからだ)

mizumori

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侯爵令嬢の夜会  

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 わたくしが部屋でぼーっとしているとお父様からの呼び出しがありました。
 近頃考えることが多くて、うつうつとして楽しまないのです。

  お父様の執務室に伺うと、めずらしくにこにことしたお父様からドレスメーカを呼んだから、何枚でも好きなだけドレスを注文するように言われます。そうは言われても・・・そんなわたくしに昨年のシーズン終わりに妃殿下がお召しになったあのドレスを作ったところだとお父様は教えてくださいました。

  ドレスを作っても、見てくれる人がいなければ意味はないと思って近頃はドレスを作るのも億劫になっていました。何故なら王宮の夜会以外ではアントニオ様は全くわたくしをお誘いくださらなくなったからです。いくら仲の悪い婚約者でもいるといないとでは大違いです。他所の夜会にはお父様かお兄様に連れて行っていただきますが、なんとなく億劫になったのは仕方がありません。

  そしてドレスメーカーがまいりました。やはり沢山の布をみると、心がはずみます。その後が憂鬱なだけで綺麗なものは好きです。たった3枚しか注文できないと知ってお母様はがっかりしていました。今年はあのドレスに身を包む方が徐々に増えているのです。わたくしもお母様に着て頂きたかったのでお勧めしたのですが、年頃の娘だからといわれ、3着全て、わたくしのドレスとなりました。


  そしてドレスが出来上がって直ぐの5月の王宮の夜会のエスコートにアントニオ様がまいりました。
 彼は両親の前では普通の顔をしていますが、今日はいつもより機嫌が悪そうです。もっとも、ここ2,3年はいつも機嫌が悪く、段々それが酷くなっているように感じられます。

  実はあまりに八つ当たりされるのでお父様にお聞きしたのです。最初は渋っておいででしたけれど、地雷を踏むのも不味いだろうといわれて、かの家の石鹸が売れなくなっていることを教えていただきました。

  何故とお聞きしたら新たに石鹸を売る商人が現れたそうです。その商人の石鹸の方が安く、臭いもしないということですごい勢いで売れているそうです。やはりと思いました。夜会やお茶会でささやかれていた噂は本当だったのですね。石鹸が売れ始めてから、それはそれは偉そうにいばってらして、今の侯爵家に適う者はいまいなどと言われていたのですから、いい気味です。

  わたくしだってこのくらいは思います。王宮のエスコート以外には会わなくなって、もう3年は経ちわたくしは17歳です。結婚の話さえ出てこない、誠実さの欠片もない殿方にやさしくする義理はありません。ふつふつと黒いものがこみ上げてくるわたくしに、お父様が言われました。

 「かの家はいまだ農作物の収穫が豊かだし、石鹸が売れなくともいままで溜め込んだ財がいくらになっているか。けっして理不尽を許さず、でもつかず離れずで過ごすんだよ。気をつけなさい。気を緩めて、調子に乗ってはいけないよ」

  お父様はわたくしを良くご存知です。そう石鹸の収入がなくなってもかの家が力を持っていることに違いはないのです。黒い気持ちは忽ちしぼんでいきました。でもちょっぴりいい気味だと思うことはお許しくださいませ、お父様。


  

  そして王宮でお会いした第2王子の美しいこと、うっとりしない令嬢はいないでしょう。いままで第3王子が一番美しいと思っていたのですが、そばに第2王子がいると、ただの少しばかり顔の整った青年にしか思えません。だってかの方は神がかって美しいのです。奇跡のような存在です。挨拶にまいりましたときに、あの方に笑いかけられて、わたくしは不覚にもぼーっとしてしまいましたわ。お母様もあの方にお声がけをされて、うっとりしていたので、何も言われずにすみほっといたしました。

  最初のダンスはアントニオ様と踊ったのですが、文句を言われること、言われること・・・それは令嬢だけではなく婦人方の視線を第2王子に浚われたら面白くはないでしょうが、あの奇跡のような方に文句をいってもしかたがないではありませんか。男の嫉妬は醜いですわよ。

  そして何故かそのあと、わたくしに第2王子のダンスのお相手をするようにとのお話がありました。
 卒倒しそうです。気を失わずに踊り終えられるでしょうか。
かの方の美しい、でも男らしい手がわたくしに触れます。おたおたと踊りだしたわたくしですが、リードも手馴れていらして、不安を感じさせません。と思ったらステップを大きく踏まれたのでしょうか、動きが乱暴になりました。上手く応じられないわたくしはこのままではつまずいてしまうと、あせりで頭が一杯になりました。でもすぐに、力強く手を引いてくださり、王子の胸に飛び込むような形でうまくダンスを続けることができたのです。ほっとしているわたくしにクスクスと笑う声が聞こえました。わざとだったのですね。いくら美形でも許されません。わたくしがむっとしていると、かの方はにっこりと微笑まれて、心持身体を近づけると、ごめんねとささやかれました。胸がどきどきします。そして、その後私の好きなものを聞かれて、本を読むことだとお話したら嬉しそうにされました。この方は女性が本を読んでもいやな顔はなさらないのですね。・・・本のことを少しだけお話してダンスは終りました。

  帰りの馬車でもアントニオ様は機嫌が悪く、第3王子をないがしろにしたと怒っていましたが、かの方は第2王子であらせられるし、王の直系です。この人はなにを言われているのでしょうか。傲慢が過ぎると思います。

  しかたがないので帰りはずっと下を向いていました。いつものことなのでアントニオ様は気にもしません。
ついついにやけてしまう顔を見られなくて良かったです。  
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