異世界転移したら猫獣人の国でした〜その黒猫は僕だけの王子様〜

アベンチュリン

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ライバル

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 昼休み、外は秋雨がしとしと降っていた。
 昇降口で、今日はどこで食べようか憂悶しながら、振り返るとメスとぶつかった。

 ポンッ、ポンッ

 彼女は猫型になったと思ったら、直ぐさま人型に戻った、神業だ!

「ごめんなさい、考え事してて」
 
 イタターと肩を摩りながら僕が言う。

「ルカ、貴方に話があるの!」
「へっ⁉︎」
 
 なんで僕の名前を?
 ルカは尻尾をピンと立て驚く。
 彼女はホワイトに近い金髪に少しブラウンが入ってるストレートヘアに、猫耳が外に向いてる、たぶんアメリカンヘアー種のようだ。
 

「貴方、殿下のなんなのよ!」

 あー、とうとう来たかイジメかな、と思った僕は、すかさずシーッと指を立て、場所を変えないか提案する。

「しょうがないわね」

 彼女は眉間に皺をよせ、むくれていたが了承して、尻尾は不機嫌そうに揺れていた。
 
 人目につかない所を探して、屋上に続く階段を上がり、ドア前の踊り場で、ランチを食べながら話そうと誘った。

「それであの……どちら様でしょうか?」 
 
 ルカは恐る恐る誰何する。

「申し遅れまして、わたくしヴェセリー侯爵家が娘、シャーロット・ヴェセリーと申しますの!シャーロットとお呼び下さいな」
 
 彼女はスカートの裾を少し持ち上げながら挨拶する。同年代のご令嬢にきちんと挨拶されたの初めてかも。僕、友達少ないしなぁ。

「僕は、ルカ・マルコヴィックと申します。ご丁寧な挨拶ありがとうございます、ルカとお呼び下さい」
 
 右足を下げて胸に手を当て礼をとる。

 僕は食事をしながらお話しするようすすめる。

「私見ましたの! 昨日のランチに庭園のテラスで殿下が貴方の頬を舐めてるのを」
 
 彼女は口早に話す。

 あー、見てたのかー。

「多分、…………下僕を労って舐めたんじゃないですか?」

 我ながら、苦しい言い訳……。

「えっ! 下僕になると舐めて貰えるの?」

 何故か、彼女は瞳を輝かせて満面の笑みで聞いてくる。信じてくれた。

「それは、どうかわかりませんが……」

 ルカは、言葉尻が消え入りそうだ。

「じゃあ、恋人ではないのね?」

「恋人ではありません…………、どうしてそんなに殿下に好意を寄せてるんですか? 爵位目当てなら、王子王女合わせて22人もいるんだし、他の皇族だっているんじゃないですか?」

 ルカは疑問を投げかけたことを、このあとほんの少し後悔することになる。

「テオドール殿下じゃなきゃダメなの!」

 シャーロットは恋する乙女の表情で猫耳を瞬かせて言う。

「聞いて下さるの? それでは私達の馴れ初めからお話しして差し上げるわ!」

 彼女は立ち上がってミュージカル調に話し出す。

「あれは私が十歳を過ぎた頃、初めて帝国主催のパーティーに呼ばれた時ですわ」

 彼女は祈るような仕草で。

「眩ゆいばかりのセオドール様がいらっしゃって、私の心は撃ち抜かれましたの」

 彼女は突然悲しい表情で猫耳を伏せる。

「その眩さにびっくりして、わたくしその場で猫型になってしまいまして……、貴族の間では人型を維持出来るようになってから社交界デビューというのが鉄則ですのに」

 彼女は神妙な顔で続ける。

「周りにいた貴族達に侮蔑ぶべつされまして、猫型のまま動けずにいましたの。そんな私を殿下が抱き抱えて、控え室まで運んで下さったの……とても紳士で素敵でしたわー! その時、このお方の番になる! と心に誓いましたの」
 
 乙女ゲームのようなストーリーだな。

「私がお茶会にお誘いしても、はぐらかされてお断りされてしまいますの、ねぇ貴方協力して下さらない?」

 その時、階段をタンタンタンと上がってくる音がした、セオドールだった。

「此処で何の話しをしている」
 
 剣呑な表情のセオドールが聞いた。

「どうして此処が?」
「ゲンタに聞いた」

 ゲンタ! あれから姿を見てないけど僕の事見てたのー?
 二人の間に割って入るシャーロット。

「殿下、シャーロットでございます。お久しぶりでございますわ! 先程、ルカに殿下と仲良くなれるよう協力して貰えないかお願いしていた所ですの」

 凛として話す彼女に、直球だなーとルカは思う。

「仲良く? 我は恋人は作らぬぞ、こいつは我の番候補だ」

 ブレないセオドールもいつも通りで、こっちも直球で返したー。

「番候補? 番ではないのに、恋人は作られないのですか?」

「番候補がいるのだ、恋人は作らないだろ」

 セオドールが押しきったー。

「わかりましたわ、ではわたくし恋人候補を目指しますわ! ルカ、候補同士頑張りましょう!」

 もう訳がわからないぞ、謎の一体感。

 カーン、カーン…………その時、昼休み終了のベルが鳴った。

 僕らは慌ててランチボックスを片付けて教室に戻る。

 シャーロットは、すごく直球だけど悪い子じゃないなとルカは感じていた。
 
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